合宿
八月一日。
私は今、校庭を走っている。
陸上部でも無いのに、こうして校庭を走る理由。
それは合宿中だからである。
午前の練習は体力づくり。
校庭三週を走るという特訓。
私は現在二週目、まだ皆は一週目だ。
「寿奈先輩速過ぎですよー!!」
息を荒くしながら、真宙が叫ぶ。
「まだまだ余裕だよッ!!」
私は去年の留学でスタミナが上昇し、今年のスポーツテストでは学年一位になった経験がある。
それもその筈だ。
私は去年の留学で一度、ブラジル最速と言われていた少女に勝ったことがあるのだ。
あまり体力は変化せずに、そろそろ二週目に入りそうなところまで来た私。
後ろを見ながら、私は皆に言った。
「どうしたの皆! もっとスピード上げるよッ!!」
「体力の化け物なんですか先輩ッ!!」
あらら、言われてしまった。
◇◇◇
最後尾で、一週目にして既にバテながら走っていたのは空良だ。
普段外に出る事があまり無い空良にとって、長距離走は地獄でしかない。
適度に止まる時間を作りながら走っていると、あっという間に前との距離が開いてしまう。
故に、授業とかだと変な注目を浴びやすい。
「空良ちゃん、大丈夫?」
「先輩・・・・・・」
既に二週目に入っていた寿奈が私に近付きながら言う。
「私が一緒に走ってあげようか?」
「良いんですか? 私はまだ一週目ですよ?」
「大丈夫! あと五周は軽くいけそうだよ!」
――――アンタは人間なのか!?
とツッコミそうなのを、空良は何とか止めた。
「五周ですか。では、お願いします」
寿奈は笑って、空良の隣で走り続けた。




