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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第十三章 七月編 新たなるライバルと夏季大会!
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九位のアイドル

「おおおおおおおおおおおおッ!」

 私は真宙のアイデアに驚かされた。

 なんせ私の中では、他のアイドルと交流しようという考えは微塵も無かったのだから。

 しかし真宙のアイデアに驚かされるのもつかの間、秀未が反論した。

「だが真宙、会いに行くと言っても難しいぞ。

まず訊くが、どのグループに会うつもりなんだ?」

 真宙は少し考え込む。

「あ、でもありますよ。候補が」

「本当か?」

「あるよ秀未ちゃん! 私、これでもアイドルの知り合いは多いからね」

 へー、そっかぁと心で感心しながら私は訊いた。

「真宙ちゃん、例えば十位以内で知り合いいる?」

「十位以内なら、第九位のアイドル『ハイロガールズ』とかですね。

あのチームは先輩が一年の頃に、お姉ちゃんがライバル視していたチームの一つで、去年の決勝戦では三位だったんですよ」

「ほほう・・・・・・」

 因みに真宙のお姉ちゃんとは、一年の時に一位を何度か争った千尋さんの事だ。

 服部先輩の死後アイドルをやめ、今は平凡な大学生として生きているらしい。

「夏季大会の二週間前に会いに行きましょうよッ!

学校の場所は、確か群馬です」

 

◇◇◇

 

 夜行バスに乗って八時間程度。

 現在地は、群馬県太田市のバスターミナル。

 ここから数分歩き、『私立九重学園高校』行きのバスに乗るという予定だ。

 東京や滋賀と違い、群馬はそこまで人がいない。

 今日が土曜日で、まだ午前八時ということを考えても、人が少ないのだ。

 それでも私は、こういう所も悪くないなと感じている。

 静かな雰囲気も好きだし、休むのが目的の旅行にはむしろ最適だ。

「うーん・・・・・・空気がおいしい」

 どこか宿をとってゆっくり休んでから帰りたいな、という誘惑に脳内を支配されそうになるが、ブンブンと頭を振って本来の目的を思い出す。

「さて、バス乗り場に行かないと」

 現在私達がいるのは、高速バスの乗り降り場の四番。

 県内ローカルの乗降口は一、二番だ。

 九重学園行きは二番。出発時間は十時半。

 十時半より前のバスが七時半しかないのを見ると、ここはバスの乗り降りが大変だという印象を受ける。

「二時間半か・・・・・・」

 バスターミナルの周囲には、暇を潰せる場所もないし、どうしたものか・・・・・・。

「あれ、寿奈さんですか?」

「ん?」

 ふと掛けられた声に振り向くと、そこには探し人がいた。

 真宙が言っていた通りの人物。

 炎のような明るい朱色の髪に、同色の瞳の活発そうな顔。

 まるで炎そのものである。

「えっと、君が――――――?」

「はい! 九重学園スクールアイドル『ハイロガールズ』のリーダー・暑井火奈乃(あついひなの)です」

 

◇◇◇

 

 火奈乃の教師の車に乗せてもらい、私達は九重学園に到着していた。

 私立の学校にしてはかなり小さい気もしたが、向かう途中、教師がこんなことを言っていた。

『この学校には寺があり、毎日一時間、生徒は瞑想をする』と。

 それもあってか、部活や勉強のレベルは、全国的に見ても高く、『フュルスティン』や『閃光』にも引けを取らないそうなのだ。

 私達は今、その寺を見学している。

 現在いるのは本堂。部屋の奥には、私には分からない何かの仏様の像がある。

 本堂はそれなりに広く、瞑想の時間の為か、三百人程度は収容出来る広さだ。

 体育館もあるが、体育以外で使うことは少なく、全校集会などでもこの本堂を使用するらしい。

「お気に召されましたか?」

 いつの間にか後ろに立っていた火奈乃の仲間と思しき生徒が、盆に茶を満たした湯飲みを乗せて問う。

「ええ、まあ」

「それは大変光栄です♪」

 微笑みながら、少女は茶を予め準備された卓袱台に置き、一礼して退出する。

 湯飲みに満たされた茶を、座った後一口含み、ゆっくり喉に運んだ。

 

 数分後、私は火奈乃と対面した。

 お互い正座で、私は足が痛くなっていたが、火奈乃は平然としている。

「改めまして、私は『ハイロガールズ』のリーダー・暑井火奈乃です!」

「ど、どうも。『Rhododendron(ロードデンドロン)』の杉谷寿奈です」

 他の三人も続く。

「雪空真宙ですッ!!」

「明智秀未だ」

「黒野空良だよ」

 全員の自己紹介が終わってから、火奈乃が最初に口を開く。

「ところで皆さん。

今日は私達『ハイロガールズ』を見学しにきたということで、間違いありませんか?」

「あ、はい」

 私の返答に対して爽やかな顔で、火奈乃が言う。

「まず質問なのですが、正直私達のライブを見て、どう思いましたか?」

 私は前に見せてもらったライブを思い出しながら答えた。

「正直言って、私達とは迫力が違いました。

何と言うか、気合も違いましたし、でもその熱さの中にも、冷静さが垣間見えました。

はっきり言って、今の私達では貴女方には勝てないと思っています」

「なるほど。そう言っていただけると、練習の励みになります。

ですが寿奈さん。寿奈さん達のチームも中々でしたよ。

これからの特訓次第では、すぐに私達が追い抜かされてしまいそうです」

「そ、そうですか」

 やっぱり、上のチームに褒めてもらえると嬉しいね。

「次は夏季大会で勝負しましょう!」

「望むところですッ!!」

 私は火奈乃と、固く握手をした。


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