反省会と夏季大会準備
いよいよだ。
目の前にあるパソコンのモニターを凝視しながら、私は心臓をバクバクさせて待機していた。
画面上のカーソルは、更新ボタンの上でブルブルと震えている。
無論、私の手がマウスと共にブルブルしているのだ。
結果発表まで、あと三十秒。
あまりじらさないでくれ・・・・・・ッ!!
そして、私が設定していた着メロのアラームの音楽が鳴り出す。
「今ッ!!」
私はマウスを左クリックした。
二秒の読み込みの末、画面に自分のチームの順位が表示される。
――――!?
「ひゃ、百チーム中――――百位――得票数――0―――――」
ガタッ、という音と共に、私は後ろに倒れ込み始めた。
頭が、そのまま床に激突する――――――
――――――という夢を見たのだ。
眼が覚めると、夢での時間より10分前の時間だった。
私は半目でパジャマを脱ぎ始めた。
◇◇◇
さて。気を取り直して、本当の順位を確認した。
「百チーム中三十二位、得票数二千二百票か・・・・・・」
ミドルゾーンより上だが、まだ上に三十一チームいる。
油断は出来ない。
因みに一位のチームの得票数は四千八百票。私達のチームより倍である。
「問題は、どう決勝戦に進むかだね」
夏季大会は七月と、すぐそこに迫っている。
その夏季大会と、その次の秋季大会で十位以内に入れなければ、敗北が決まってしまう。
「・・・・・・。次を考えないと」
◇◇◇
そして放課後。
「こんにちは~」
「あ、寿奈先輩!! こんにちはです!!」
真宙の元気な挨拶を聞きながら部室に入り、机に荷物を置く。
「先輩、今日の朝出た結果見ました?」
「見たよ、まあまあ良い結果だと思う」
「何ていうか、疲れてます?」
「まあ・・・・・・うん」
そりゃあ、夢でもあんなものを見せられたら疲れるよ。
因みにあの時の状況を詳しく説明すると、頭が床に激突したのはリアルだった。
ベッドから落ちて頭を打った私は悶絶し、結果発表の十分前に着替えた後、パソコンを開いたという感じである。
「アレが正夢じゃなくて良かったな・・・・・・」
「どうしたんです?」
「いや、何でも無いよ」
その内、空良と秀未もやってきた。
「・・・・・・」
「先輩こんちわ~」
二人はそれぞれ挨拶をしながら椅子に座る。
「さて、今日は春季大会の反省と、すぐそこに迫っている夏季大会をどうするかについて話し合いましょう」
私の声で、ほぼ皆が真剣な目に変わった。
「まず、今回の順位と得票数は百チーム中三十二位、二千二百票と中々素晴らしいものだと感じています。
しかし、大事なのはここから。
夏季と秋季の二回で、どうやって十位以内に入るか。
その為に、まず一人一人に春季大会の感想と改善点について、答えてもらいます。
それでは、真宙ちゃんからどうぞ」
「はいッ!!」
真宙が少し慌てながら、立ち上がる。
「私は皆が全力で頑張れて、楽しかったと思います。
しかし、後で自分達を動画で見返していると、いくつか改善しなければならない点がある思いました」
「なるほど、そのいくつかについては、後で練習する内に確認していこう」
「はいッ!!」
「次に、秀未ちゃんかな」
何も言わずにたちあがる秀未。
「私には一人一人に改善点があると感じたので、順に言おう。
まず私は、ポーズにミスがあったかも知れない。すまなかった」
おお、自分に対しても言うのね。
「当たり前だ。自分を甘やかしていては、高みへ行くなど出来ない」
感心するな・・・・・・。
「次に、寿奈先輩。
他の奴より、テンポが速すぎるところがあると思う。
改善するように」
「久しぶりにやってしまった・・・・・・」
リズム感の無さについては、服部先輩や他の先輩達に度々指摘されていた。
一年生の終わりくらいには改善していたつもりだったが、どうやら一年のブランクの影響で、すっかり元に戻ってしまったらしい。
「次に真宙は、声が小さい部分があった。他の奴に負けてしまっている」
「あ、うん。気を付けるよ秀未ちゃん」
真宙にのみ優しい顔で言った後、目つきを変えて空良の方を向いた。
「最後に空良。問題点が多すぎる。
練習に来ない日も少なからずあったからな。次からはきちんと来てもらう」
「は、はい・・・・・・」
空良は落ち込みながらそう言った。
「ま、まあまあ。じゃあ空良ちゃんは?」
「私ですか? 私は良かったと思いますよ。
改善点は、あまり見つからなかったです」
「な、なるほど。皆の意見は訊けたかな。
では、次が一番重要。夏季大会までにしたいことを皆に訊こうかな。
これは思いついた人からで」
皆がそれぞれ考え始まった。
そして一番早く手を挙げたのは、やはり。
「あ、意見ありますよ!」
真宙だ。
「これは出来るかどうか分からないですけど、他のアイドルに会いに行く、というのはどうでしょう!!」




