君を諦めたくない
そして、ライブの日はやってきた。
楽屋にて、私は真宙が作ってきてくれた衣装を複雑な気持ちで見ていた。
『恋の歌』の衣装は頼んだが・・・・・・。
「何というか、アイドルの衣装なの?って感じだな」
ピンクと黒で構成されたセーラー服のような衣装・・・・・・。
◇◇◇
そんなこんなで着替えた後、秀未と真宙が入室した。
少し遅れて、欠伸をしながら空良がやってきた。
「おはようございます・・・・・・」
欠伸をしながら入室する空良に、私は質問する。
「眠そうだね・・・・・・、どうしたの?」
「少し夜出かけて来ただけですよ」
「何してきたの?」
と、私は質問するが、空良は少し笑って答えた。
「それはちょっと言えないです」
「そ、そっか」
ああ、誰にでも秘密あるし仕方ないだろう。
「じゃあ、行こう!!」
◇◇◇
『君を諦めたくない』作詞 松野心夜 歌 Rhododendron
(杉谷寿奈 黒野空良 雪空真宙 明智秀未)
始まりは 些細なキッカケだった
君と会う為に 生まれたのだと思えたんだ
雨でも嵐でも 君に会いたいんだ
君を自分のものにしたいと 心が叫ぶ
気付けば 僕は駆け出していた
諦めたくないから 走り続けるよ
君が僕を嫌いでも 僕は君が好き
きっと君が 振り向いてくれると信じてる
想いが 力になるのさ
悩むのも 些細なキッカケだった
恋をするのは 初めてで出来るのかなと
雨にも嵐にも うたれて悩んだ
どうしたら良いのか分からず 心が震える
気付けば 一人で悩んでいた
君を諦めたくない でも怖いんだ
君の気持ちが分からない でも君が好き
きっと君が 振り向いてくれると信じたい
想いを 叶えたいのさ
諦められないんだ 走り続けるよ
君の気持ちが分からなくても 僕の気持ちは
諦めたくないから 走り続けるよ
君が僕を嫌いでも 僕は君が好き
きっと君が 振り向いてくれると信じてる
想いが 力になるのさ
◇◇◇
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
最後のポーズのまま、私は荒く息を吐いていた。
久しぶりのライブだったからか、感じている疲れは凄かった。
だけど――――楽しかったって言える。
私はそのポーズから自然体に戻ってから、観客に向かって満面の笑みを向けた。
「寿奈だ・・・・・・。杉谷寿奈が帰って来た!!」
客の声の後、歓声が上がった。
「皆、私の事を覚えていたんだ・・・・・・」
私の双眸から、涙が溢れるのを感じた。
再び、楽屋。
制服に着替え直した後のこと。
「皆、お疲れ様!!」
「先輩お疲れ様ですッ!!」
私は真宙とハイタッチをし、次は秀未に話しかけようとしたが。
「・・・・・・」
「さっき歌っていた時とは別人って感じだね・・・・・・」
最後に空良。
「空良ちゃん! 良い歌と踊りだったよ!」
「ありがとうございます。それでは、私はようがありますのでこれで」
空良はそう言い残してから、荷物を持って出て行った。
「空良ちゃん・・・・・・」
彼女とは今まで部活の事以外で会ったことがない。
たまに誘っても、必ず用事があって来られないと返してくるのだが。
「でも、秘密を暴こうとしたら怒られちゃうよね・・・・・・」
「寿奈先輩! 打ち上げ行きましょうよ!!」
「あ、うん!!」
真宙に呼ばれ、私は荷物を持って楽屋をあとにした。




