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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第十二章 五月&六月編 春季大会!
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大会前日 ~嬉しいと想う気持ち~

「いよいよ明日か・・・・・・」

 土曜日。定期テストは終わったので、今日は明日の練習を思い切りやった。

 現在時刻は午後六時。

 既に帰宅した私は、家で休もうとしていたのだが、動きたくなって、近くの公園にサッカーボールを持って出かけていた。

 古い中学時代のユニフォームを纏い、ボールの上に右足を乗せ、ゴールを正面に見据えている。

 スクールアイドルでのことなど、悩みが出来たときには、いつもここに来ている。

 ゴールを目指して走り、得意技たるアクロバットな動きからのシュートを決めた時には、悩んでいた時の自分なんてすっかり消えているのだ。

 だが、今の悩みはそう簡単に消えるか分からなかった。

「恋の歌なんて初めての試みだけど、これで得票数稼げるのかな・・・・・・」

 恋の歌は、初めての試みだ。

 今までの自分達に無かったジャンル。

 故に、練習は私が一年だった時以上に過酷なものとなっていた。

 そして、明日に迫っている春季大会、そして夏季大会と秋季大会で、冬季大会――即ち決勝戦に進めるかどうかが決まる。

 もし春季大会での得票数が少なすぎるという事態が起きれば、夏季大会や秋季大会での得票も少なくなると考えた方が良い。

 だから、勝たなければ・・・・・・。

「でも、こんな気持ちでやるのは違うよね?」

 私は服部先輩から教えてもらった。

 楽しんで勝つことが大事だと。

 不安でも、楽しむ方法を見つけなくてはならない。

 あと数時間で。

「・・・・・・ッ!!」

 私は声を出さずにドリブルを開始した。

 頭の中で、敵のフォワードとミッドフィールダーが自分を阻むところを想像し、想像の敵の眼前にて、ボールを空へ蹴り上げる。

 間を置かず自分も跳躍し、足でボールを受け取り、ミッドフィールダーの背後に着地。

 そのまま、ディフェンダーの前でも、ボールを蹴り上げる。

 今度はくるりと回転してから跳躍し、空中でオーバーヘッドキックを放つ。

 ボールはそのまま一直線に落下し、ゴールネットへと突き刺さった。

 着地も完璧にこなし、ゴールから転がって来たボールを拾う。

「これの動きの練習、何度やったのかな・・・・・・?」

 この技を極めて以来、私はサッカーで負け知らずだった。

 最初の内は、この危険な技の特訓で、何度も骨折しては入院していた。

 中一の春季大会以前にこの技を完成させたときは、物凄くうれしかったのを、今でも思い出せる。

「ん・・・・・・? これだ。この気持ち・・・・・・」

 何かを成し遂げて嬉しかった。

 今まで出来なかったことや、試みたことが無かったことが出来て、嬉しかった。 

 それが、サッカーでもスクールアイドルでも私を強くしてくれた。

 公園内にある一本の木。

 だがただの木ではなく、まだ赤い血痕が残る木を見て、私は呟いた。

「貴女も、私達の為に命を懸けて皆を勝たせようとしてくれましたよね。

貴女が死ぬ時に、どんな気持ちだったかは分からないけど。

きっとしたことないことを、そこまで出来て嬉しかったんですよね?

先輩」


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