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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第十二章 五月&六月編 春季大会!
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新曲作り 空良の心

春季大会に向けての、基本の練習の一日目が終わり、寿奈と空良のみが部室に残った。

 基本的に今は、寿奈と空良が歌の歌詞を考え、真宙が作曲、秀未が衣装を作るというスタイルだ。

 振付は、完成した歌を聞きながら皆で考えるという感じである。

 

 空良は部活終了後、とある場所でまた援交だ。

 三時からの約束故、一時間で集合場所に行くとしたら二時には出なければならない。

 現在時刻は一時半、大会まで時間が無い為今日中に仕上げることになった歌詞を見て、寿奈はもがいていた。

「久しぶりの作詞かぁ、なんというか何書けば良いか分かんないよぉ・・・・・・」

 杉谷寿奈。

 空良にきちんと興味を持って接してくれている珍しいタイプの先輩だ。

 基本、空良に寄って来るのはいじめっ子か、体目当ての男がほとんどだ。

 そして空良にとっては、自分を傷付けようとしているのがバレバレのいじめっ子はまだ可愛い方なのだ。いざとなれば、逃げれば済む場合もある。

 だが寿奈はただ只管に純粋で、表面上も心が綺麗で熱い人に見える。

 自分のような人にも積極的で、とにかく仲間想いの先輩に表面上は見える。

 入部前のチェス勝負の後、暇なとき何度か寿奈とチェス勝負をしていて分かったことがあった。

 彼女の行動は演技ではなく、全て心に従って行動しているのだと。

 つまり彼女は、嘘をつけない。

 吐くとしても、バレる嘘しか吐けない。

 

 だが、そういう人が一番空良にとっては信用出来ない。

 担任の教師とかと同じだ。

 裏切るときには裏切るのだ。

 どれだけ心が綺麗な人でも、人を見捨てる時はある。

 だから空良は思っている。

 最初優しくされて、あとで捨てられるくらいなら、最初から冷たくされた方がマシだと。

 

「空良ちゃんはどんな感じの歌詞が良いと思う?」

「歌詞ですか?」

 寿奈の唐突な質問に戸惑いながらも、作った笑顔で答えた。

「やっぱり私は、皆が笑顔になれる歌詞が良いと思いますよ」

 そう、笑顔だ。

 心が綺麗な人に対しては、ただひたすら笑顔を向ける。

 そうすれば、相手は自分に対して不快な気持ちにならず、裏切ることはない。

 相手は嘘を吐くのが下手な相手。

 なら、反対に嘘を見破るのも下手な筈だ。

 空良が寿奈を信頼していないという事実を暴くことも無理な筈だ。

「皆が笑顔になれる歌詞ねぇ・・・・・・。

もうちょっと具体的な案が欲しかったけど、でもやっぱり究極はそこだよねッ!」

 この発言からも分かる。

 彼女は自分の思っていることを隠せていない。

「具体的ですか・・・・・・、例えば今まで挑戦したことのないジャンルとかどうですかね?

私が調べたところによると、『Rhododendron(ロードデンドロン)』はアイドルものでは王道の『恋の歌』ってないですから、それを歌うとか」

「恋の歌かぁ・・・・・・。恋愛経験ゼロの私に書けるかなあ」

 まあ如何にも子供っぽいしな、寿奈先輩。

「空良ちゃんは恋愛したことないの?」

「したことないですね」

「えー!?」

 何故か驚かれてしまった。

 いやでも、援交以外で男性との交流ないんだけど。

「何と言うか空良ちゃん、私より大人っぽいし色っぽいからあるのかなって思って」

「よく言われますけど、私は処女ですよ」

 嘘だけど。

 援交のことは絶対バレたらいけないと、空良は思っている。

「なるほどねぇ・・・・・・。

でも恋愛ソングか、ちょっと考えてみる」

「お、頑張ってください」

「空良ちゃんは先に帰って大丈夫だけど、残る?」

「いえ、私はこれから用事があるのでそれでは」

 空良は荷物をまとめてから、そう言って部室をあとにした。

 嘘を突き通すのも疲れるなと心で呟きながら、空良は昇降口に向かう。


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