秀未との交流 その一
「今日の練習は、ここまで!!」
私の合図と同時、まず真宙と空良が脱力した。
「はぁ・・・・・・。疲れたねえ・・・・・・」
「だな・・・・・・」
一方で、黒髪青目の二年生、明智秀未は全く疲れていないようだった。
「先輩、私は剣道部の練習に行かせてもらう」
秀未は私の方を振り向いて、冷静に言い放つ。
教室の隅っこにあった竹刀と荷物をとってから、秀未は教室をあとにする。
「秀未ちゃん大変そうだよね、真宙ちゃんは秀未ちゃんの事どう思う?」
「そりゃ、大変だと思いますよ。秀未ちゃんとは高校入ってすぐ仲良くなりましたけど、最初はスクールアイドルに入るかどうかの話をしても断られてばかりで。
それでも、私の為に剣道とアイドルを両立する道を選んでくれたんです」
「ほほう」
◇◇◇
私は家に帰らず、剣道部が練習している道場へと向かった。
胴着を身に着けている女子達が、部員同士で手合わせをしている。
私は眉を潜ませ、秀未を探す。
面で隠れている為、顔での判別は不可能。
身長、雰囲気、または胴着に書かれた名前を見て探すしかないのだが・・・・・・。
「どこ・・・・・・?」
うん、分からん。
人が多すぎて分からん。
いやダメだダメだ。私はこれでもアイドル部の部長。
部員のある程度の事は、把握しておく義務がある。
こんな所で諦めるわけには・・・・・・。
と、再び探し始めようとした所で。
「全員集合! 二年と三年での試合を行う!
一年はそれを見るんだ」
若干ボーイッシュな剣道部の顧問が集合を呼びかける。
それを聞いた剣道部員は、まるで軍隊のように統一された動きで顧問の前に整列した。
顧問の話のあと、部員――二、三年はこれから試合をする二人を除いて場外で正座し、一年もそれに倣って二三年の隣に座る。
まだ、秀未の出番ではないようだ。
そのまま私は、秀未の出番まで待ち続けた。
そして、最後の試合。
「では、最終試合。まず赤組――三年は織田!」
「はい!!」
織田という名の三年が立ち上がり、場内の指定された場所に自然体と呼ばれる体勢に待機する。
「そして白組――二年は明智!!」
「はい!」
アイドル部の練習の時の、冷静な声とは違う、凛々しい声が私の耳に入る。
秀未は織田と反対の場所に立つ。
すると、二人はほぼ同じ動きで彼我の距離を縮め始めた。
その時の体勢は帯刀。
得物を抜く為の準備は既に出来ている、というのを相手に示す為のものだ。
彼我の距離を縮めた後、二人は同じように座り、腰に帯刀していた竹刀を抜く。
蹲踞と抜刀だ。
そのまま互いの竹刀が交差するように立ち上がると、両者は少しだけ距離をとる。
そして、いよいよ試合が始まった。
まず織田が、秀美の頭に向かって唐竹割りを放った。
「面ッ!!」
秀未はそれを竹刀の、真剣なら刃の部分で防ぐ。
私には、秀未が防御するところは見えなかった。
そのまま、秀未は隙をついて、突きを放つ。
「胴!!」
織田はそのまま、場外へと一直線に吹き飛んだ。
秀未は収め刀した後、一礼する。
「勝者! 明智秀未!!」
私は秀未が場外に出るまで、動くことが出来なかった。
◇◇◇
結局、私は練習を最後まで覗き見てしまった。
剣道部員達が雑談をしながら道場から出てくるのを見届けた後、道場内に入ろうとするが――――。
「――あれ、寿奈さん? 『Rhododendron』の?」
しまった。これってまさか・・・・・・。
嫌な予感は的中した。
剣道部員は色紙を持ちながら。
「いつ戻って来たんです?」
「久しぶりです!」
「サイン下さい!」
「いや、私が先に見つけたんだぞ」
などと言いながらその場で、大乱闘を開始した。
「おい!! 私の為に争うな!」
と、私は喧嘩を止めようとするが・・・・・・。
「私からだ!!」
「いや私だッ!!」
付き合ってらんないわ・・・・・・。
私はそれを無視して、道場内へ。
誰もいない筈の道場には、目を閉じて心を落ち着けながら正座している秀未がいた。
そして秀未に話しかける前に――――。
「――――何用だ、寿奈先輩」
まるで背中に目が付いているかのように、私に背を向けたまま寿奈が言う。
「す、凄いね秀未ちゃん、まさか足音だけで私って分かるなんて」
「兄様が言ってたんだ。敵や近付いてくるものに気付くには目で捉えるのでは遅いって。五感全てで感じ取ることだってね」
秀未の兄さんか、会ってみたいな。
「兄様は凄い人。街で悪い人を見かけると、成敗して良い人にしてしまうんだ。
一番苦戦したのは、茶髪ロングの女性らしいけど」
その茶髪ロングの人、秀未さんの兄みたいなド〇ゴンボールキャラの芸当が出来る奴とまともに相手してたのか・・・・・・。
「私も、憧れている人がいた。
でも、その人はこの世にはいない」
「なるほど・・・・・・。寿奈先輩も精進すると良い」
「うんッ!」




