二人の後輩
いつまで睨めっこを繰り返しているんだ私は。
いくら部室が久しぶりとは言え、十五分もドアの前で立ち尽くしてしまうのはただの不審者だ。
だが今は、私の知っている人物が部室にいない状態。
故に、躊躇してしまう。
いきなり入ってきて、嫌な雰囲気にならないか、とか。
「1357911131719・・・・・・」
何故かドア前で自分が言える限りの素数を呟いた後、私はドアを開けた。
「こんにちは・・・・・・」
中に入ると、指定席らしき場所に座る二人の少女が私を見た。
アッシュブラウンの髪と、同色の瞳を持つ童顔の少女と。
黒髪青瞳の、クールな美少女。
前者は私を見るなり、驚いた顔をして口を開く。
「え、もしかして貴女は・・・・・・」
あー、スポーツアニメのシリーズものじゃよくある展開。
先輩とか伝説の選手が自分の監督や部長とかになってやってくるって奴?
じゃあ私も、それらしい雰囲気で行こう。
一旦目を閉じてから、再び開き。
彼女らに言う。
「初めまして。今日からこの部の部長になる、杉谷寿奈だよッ!」
◇◇◇
「寿奈先輩ッ! おかえりなさいッ!」
アッシュブラウンの少女が涙を流しながら言う。
「優先輩に頼まれたんだ。琴美先輩や道女先輩、そして服部先輩が大事にしていたこのスクールアイドル『Rhododendron』を守ってくれって」
「先輩ッ! よろしくお願いしますッ!」
取り敢えず最初は、自己紹介から始めることにした。
「じゃあ、キミ」
アッシュブラウンの少女を指名する。
少女は照れながら立ち上がり、スカートに手を添えて言う。
「わ、私は雪空真宙と言います。二年生です。
姉を超えるアイドルになる為に、ここに入りました」
「なるほど、真宙ちゃんか・・・・・・ってえ?」
雪空?
「ちょっと待って。雪空ってまさか・・・・・・」
「んーと、雪空千尋なら私の姉ですけど」
ええええええええええええええッ!!
驚き桃ノ木だよッ!
え、というか雪空さんどうしてんの?
私は真宙に問う。
「あの、千尋さんはどうしてる?」
「お姉ちゃんは、正子さんの死と寿奈さんの留学に衝撃を受けて、あれ以来アイドルをやめちゃったんです。
だから決めました。『Rhododendron』に入って、スクールアイドルのトップを目指して、お姉ちゃんに元気を出してもらおうって」
千尋さん、いい妹を持ってるな。
「そっか。これからがんばろ!」
「はいッ!」
「じゃあ次は、キミ」
残った一人、黒髪青目の少女に言う。
「明智秀未、以上」
淡々と名乗る秀美。
うーん、難しいタイプだ。
「じゃあ、これから頑張ってこう!」
こうして、再びスクールアイドルを始めることになった。
松野心夜です! 今日からアイドルを始めたい!三年生編!
いよいよスタートですッ!




