一年生編最終回 今日から再びアイドルを始めたい!
長い時間が経った。
私がサッカー留学でブラジルに行ってから、今日で一年。
一年をこんなに長いと感じたのは久しぶりだ。
――――スクールアイドルだった頃は、それこそあっという間だったのに。
最初の内は、留学もそれなりに楽しんでいたが、時間が経つにつれ・・・・・・。
「なんでだろ・・・・・・。ダメなのに」
少なくとも、数年は帰れないことを覚悟していた。
日本への未練も断ち切った筈、なのに・・・・・・。
「なんで日本が、恋しいと思うんだろう」
最近、自分でも明らかに笑顔になったり騒いだりすることが少なくなったと自覚しており。
このまま機械のように、優勝することに意味はあるのかな、と思っている。
だけど・・・・・・。
「今戻っても、もう皆は・・・・・・」
確かそろそろ、先輩は全員卒業する時期。
今戻っても、意味は無い。
――――。
それに、先輩と親友を殺すことになったアイドルの世界に戻ろうなんて、二人に申し訳ない。
さて、そろそろ練習だ。行かなければ、とベッドから立ち上がったその時。
ピンポーン、とインターフォンが鳴る。
「はい、どちら様ですか?」
「優だけど、寿奈か?」
・・・・・・。
なんで、部屋に入れたんだろう。
自分でも、理解出来なかった。
だが、ここまで。ブラジルまでわざわざ私を探しに来たのには理由がある筈だ。
「先輩・・・・・・私の事、叱りに来たんですか?」
「何言ってるんだ。私はお前に頼みがあって来ただけだ。
やめたのにも、これが理由な事も知ってる」
頼み・・・・・・。
「何をですか?」
「寿奈に、戻ってきて欲しいんだ。『Rhododendron』の、未来の為に・・・・・・」
やはり、そう来たか。
「残念ですが、それは出来ません。
私には、もう舞台に立つ資格は無いんです・・・・・・」
戻りたいのは、私も同じ。
だけど・・・・・・。
「寿奈・・・・・・」
優先輩は辛そうな顔をしていた。
「私は、服部先輩と親友を守れなかった。
それを言い訳にして、スクールアイドルをやめてしまった」
「それは違うぞ、寿奈」
え、と私が言う前に優先輩は机を叩き言う。
「正子はお前に戻ってきてほしいと思っているに決まってるんだッ!!」
「――――!!」
・・・・・・。
「すみません・・・・・・。私、何を勘違いしていたんだろう・・・・・・」
「お前は悪くない。寿奈、『Rhododendron』を託したぞ」
私は、先輩に向かって。
半ば忘れかけていた笑顔で言った。
「はいッ!!」
◇◇◇
復学手続きが終わり、私はブラジルから日本へ帰って来た。
まずは色んな人に、取材と挨拶し。
三年生に向けての準備を完了させ。
始業式の日。
久しぶりの校門。久しぶりの校舎。
春の風を浴びながら、私、杉谷寿奈はそれを見ていた。
「そろそろ、行こうかな」
先輩曰く、新しい部員が待っているらしい。
部長は私、ということになっているそうだ。
さぁ、今日から再び始めよう――――。
アイドルを。
新しい日常に向かって、私は最初の一歩を踏み出した。
◇◇◇
『Re:Start!!』作詞 松野心夜 作曲 無し 歌 杉谷寿奈
さあ もう一度行こうよ あの舞台へ
新しいスタートが そこで待ってる筈さ
Re:Start!! さぁ行こう そこへ行こう
楽しさ満点の
新しい舞台で 僕は走りたい
一回で終わり そんなのは性に合わない
何度でも走りたい ゴールへと
3、2、1、Re:Start!!
さあ もう一度行こうよ あの舞台へ
新しいスタートが そこで待ってる筈さ
新しいルート目指して Re:Start!!
Re:Start!! さあ飛ぼう そこへ飛ぼう
無限大がある
未知の舞台で 僕は羽ばたきたい
一回で終わる そんなのを承知でもさ
やっぱり飛びたい 彼方へと
3、2、1、Re:Start!!
さあもう一度飛ぼうよ 頂点へ
新しい上が そこにあるからさ
飛んでいく 私は
限界なき 広大な世界を
いつか羽が消えるまで 飛ぶんだよ
さあ もう一度行こうよ あの舞台へ
新しいスタートが そこで待ってる筈さ
新しいルート目指して Re:Start!!
松野心夜です。これにて、杉谷寿奈一年生編が終了です。
次回から三年生編に入ります! 新キャラの設定が固まるまで、しばらくお待ち下さい!
それでは、またいつか!
 




