努力と才能が死を招くとき
冬季大会が終わり、私達はいつも通り部室に来ていた。
本来なら、すぐにでも来年度の春季大会に向けての準備をするところだが・・・・・・。
生憎私達に、そんな気力は無かった。
服部先輩は芽衣に殺され、大会は最下位。
芽衣の心を変えさせる事も、出来なかった。
それぞれが、別の方向に向かって俯く中。
優先輩がニュースを見ながら、私に話しかけた。
「寿奈!!」
素っ気ない反応しか、私には出来なかったが。
「これ、滋賀の某所で女子高生が自殺って。
父は政治家の中でも有名な人・・・・・・。
これまさか・・・・・・」
――――!?
久しぶりに心臓がドクンとはねる音が聞こえた。
まさか・・・・・・。
「おい、寿奈?」
私は何も言わずに、調査が現在も続いているという現場へ急いだ。
現場には、警察や記者含め沢山の人がいた。
私はその人達を退けて、行ける所まで進む。
進入禁止のテープの先に、あったのは。
白と赤のセーラー服に身を包む、茶髪ロングの整った顔をした女子高生の死体。
言うまでも無く、芽衣の死体だ。
「芽衣!! 芽衣――――!!」
血を吐くような絶叫を、私は現場中に響かせた。
◇◇◇
「寿奈。寿奈?」
私を呼ぶ声。
だけど、その声はとっくに・・・・・・。
机から顔を上げ、その声の方を向く。
「芽衣?」
芽衣の恰好は『フュルスティン女学院』のものではなく、私が通っていた『閃光学園中学』の制服姿だった。
これは、記憶?
「テスト、勝たせてもらったわ。貴女も二位なんて凄いじゃない」
そうか。これはまだ下に落ちる恐怖と孤独を知らなかった時。
芽衣に、憧れ。親友同士だと思っていた時。
「芽衣は凄いよ。どうやったらこんなテストで全教科満点取れるの?」
芽衣は、窓越しに外を見ながらこう言った。
「私にも分からない。だけど、どんな問題が来ようと負ける気はしないんだ」
この台詞が、私は好きだった。
こんな台詞を、いつか言いたいと思っていた。
勝ち過ぎが孤独を呼ぶのは、小学生時代に気付かされていたが、芽衣がいる限りそんな事にはならないと確信していた。
そう、確信していたんだ・・・・・・。
私と芽衣が、中学三年生になり。
「私は『フュルスティン』で高みを目指す。貴女も当然行くわよね?」
「・・・・・・いや、私は親の金の事情で、県立の女子高へ行く。残念だけど、アンタとは二度と戦えない」
芽衣の顔つきが変わった。侮蔑の目へ。
「へぇ・・・・・・。貴女逃げるの?
その話も、どうせ言い訳でしょ?」
「違うッ!!」
「黙りなさい。下に落ちる者――敗者に、この世にいる資格は無いわ。貴女を、今叩き落すわ。底辺に叩き落す」
「やめてッ!!」
その日以来、クラスメートは全員、私を見下すようになった。
友人はゼロになり。小学生の時同じく。
私は自分より上の人間が増える事に恐怖し。
他人と関わらなくなった。
そして、二つの孤独を知った私は卒業し。
文字通り。今回は負けによって大きなものを失った。
こうして、芽衣と私の戦いも終わった。
両者ともに、敗北という結果で。




