表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
一年生編最終章 それぞれの想い、それぞれの道・・・・・・!
43/168

努力と才能が死を招くとき

冬季大会が終わり、私達はいつも通り部室に来ていた。

 本来なら、すぐにでも来年度の春季大会に向けての準備をするところだが・・・・・・。

 生憎私達に、そんな気力は無かった。

 服部先輩は芽衣に殺され、大会は最下位。

 芽衣の心を変えさせる事も、出来なかった。

 それぞれが、別の方向に向かって俯く中。

 優先輩がニュースを見ながら、私に話しかけた。

「寿奈!!」

 素っ気ない反応しか、私には出来なかったが。

「これ、滋賀の某所で女子高生が自殺って。

父は政治家の中でも有名な人・・・・・・。

これまさか・・・・・・」

 ――――!?

 久しぶりに心臓がドクンとはねる音が聞こえた。

 まさか・・・・・・。

「おい、寿奈?」

 私は何も言わずに、調査が現在も続いているという現場へ急いだ。

 

 現場には、警察や記者含め沢山の人がいた。

 私はその人達を退けて、行ける所まで進む。

 進入禁止のテープの先に、あったのは。

 白と赤のセーラー服に身を包む、茶髪ロングの整った顔をした女子高生の死体。

 言うまでも無く、芽衣の死体だ。

「芽衣!! 芽衣――――!!」

 血を吐くような絶叫を、私は現場中に響かせた。

 

◇◇◇

 

「寿奈。寿奈?」

 私を呼ぶ声。

 だけど、その声はとっくに・・・・・・。

 机から顔を上げ、その声の方を向く。

「芽衣?」

 芽衣の恰好は『フュルスティン女学院』のものではなく、私が通っていた『閃光学園中学』の制服姿だった。

 これは、記憶?

「テスト、勝たせてもらったわ。貴女も二位なんて凄いじゃない」

 そうか。これはまだ下に落ちる恐怖と孤独を知らなかった時。

 芽衣に、憧れ。親友同士だと思っていた時。

「芽衣は凄いよ。どうやったらこんなテストで全教科満点取れるの?」

 芽衣は、窓越しに外を見ながらこう言った。

「私にも分からない。だけど、どんな問題が来ようと負ける気はしないんだ」

 この台詞が、私は好きだった。

 こんな台詞を、いつか言いたいと思っていた。

 勝ち過ぎが孤独を呼ぶのは、小学生時代に気付かされていたが、芽衣がいる限りそんな事にはならないと確信していた。

 

 そう、確信していたんだ・・・・・・。

 

 私と芽衣が、中学三年生になり。

「私は『フュルスティン』で高みを目指す。貴女も当然行くわよね?」

 

「・・・・・・いや、私は親の金の事情で、県立の女子高へ行く。残念だけど、アンタとは二度と戦えない」

 

 芽衣の顔つきが変わった。侮蔑の目へ。

「へぇ・・・・・・。貴女逃げるの?

その話も、どうせ言い訳でしょ?」

 

「違うッ!!」

「黙りなさい。下に落ちる者――敗者に、この世にいる資格は無いわ。貴女を、今叩き落すわ。底辺に叩き落す」

「やめてッ!!」

 

 その日以来、クラスメートは全員、私を見下すようになった。

 友人はゼロになり。小学生の時同じく。

 私は自分より上の人間が増える事に恐怖し。

 他人と関わらなくなった。

 

 そして、二つの孤独を知った私は卒業し。

 文字通り。今回は負けによって大きなものを失った。

 

 こうして、芽衣と私の戦いも終わった。

 両者ともに、敗北という結果で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n1678eb/ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ