大晦日
十二月三十一日。
今年もそろそろ終わる。今日は他の部活と同じく、休みになったのだが、先日コミケに行くという用事を済ませた故、やることが無く。
学校に来てしまった。
「ま、まあ誰も来てないよね・・・・・・」
そのまま部室に向かい、扉に近付くと。
明かりが点いているのが見えた。
その部室から、歌声。
もしかしたら、という予感が体を動かし、ドアを開ける。
「お、寿奈。来たんだ」
「服部先輩、こそどうしたんです?」
「次の年は、ここで迎えたいなって思って」
私は自分の席に座る。
思えば、今年は色んな事があった。
「何と言うか、一年ってあっという間ですね。
特に今年なんて、今までの人生で一番楽しかったです」
「そうだね、私もだよ」
四月は、入学式。
サッカー部に入ろうとした私を、先輩は勧誘してきた。
そして、部員全員の歌と踊りを見て思ったのだ。
面白そうだ、と。
小学生の時、初めてサッカーをやっている所を見た時と同じ感覚だった。
「先輩、あの時は誘ってくれてありがとうございます」
「いや、こちらこそ。入ってくれて、ありがとう。
今まで楽しめたのは、寿奈のおかげだよ」
五月は、六月の準備。
六月は春季大会。
七月は――――
思い出せば、色んな事があった。
「先輩」
「ん?」
私は笑顔でこう言った。
「また来年も、楽しくやりましょう!」
「だね!」
◇◇◇
次にやってきたのは、琴美先輩。
「こんにちは、寿奈さん、服部さん」
「琴ちゃん!」
この部では唯一の二年生で、しっかり者のリーダーだった先輩。
「琴美先輩、あと三か月でいなくなっちゃうなんて寂しいです」
「まだ卒業式じゃないんですし、別れを惜しむのは後にしましょうよ」
と苦笑して、琴美先輩は答えた。
確か大学の入試には合格し、内定はとれたらしい。
あとは卒業までの時間を楽しむことに専念する、と言っていた。
「服部さん、あと三か月の間は私も頑張りますから、貴女もしっかりして下さいね」
「任せてよ!」
服部先輩はガッツポーズをしながら言う。
◇◇◇
次いで、優先輩。
「おう、何か近く走ってたら部室が光ってんの見えたから来たぜ」
「優先輩!」
スポーツ万能で、いつも私の相手をしてくれた。
「また来年も、私と勝負してくださいね!」
「おい! 負けないぜ!」
と整った八重歯を見せた。
◇◇◇
最後に、道女先輩。
「テレビ、見てたけど来たよ・・・・・・」
「道女先輩まで!」
頭が良く、物知りで、私に勉強やおススメの本を教えてくれていた。
「道女先輩、私に勉強教えてくれてありがとうごさいます!」
「寿奈さん・・・・・・ありがとう」
と照れながら言った。
◇◇◇
「じゃあ、カウントダウンするわよッ!」
服部先輩がそう言い、全員でクラッカーを準備した。
全員で三十秒前の宣言をし。
二十九。
二十八。
二十七。
二十六。
「二十五秒前!」
二十四。
二十三。
二十二。
二十一。
「二十秒前ですッ!!」
十九。
十八。
十七。
十六。
「十五秒前だぜッ!!」
十四。
十三。
十二。
十一。
「十秒前・・・・・・」
九.
八.
七.
六.
五.
四.
三.
二.
一.
「ゼロッ!!」
私の叫びと同時に、除夜の鐘と。
クラッカーが鳴った。
 




