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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第八章 十一月編 杉谷寿奈VS刹那芽衣!
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芽衣との戦い

ライブドームに着いた私達。

 今日は負けられない。あの二人を見返す為に。

 私はドームに向かって最初の一歩を踏み出したが。

 入口近くで、私は見た。

 百合の花のように白い、如何にも大会参加者の服装と思われるドレス。

 長い茶髪に、女狐のような、異性を引き付ける色気を持った紫のツリ眼の整った顔。

「寿奈?」

 服部先輩の声すら気にせず、そいつにゆっくりと歩み寄り。

 口を開く。

「なんでアンタが大会に?」

「貴女を潰す以外の理由が必要かしら?」

 こいつ・・・・・・。

 先輩達が本気で愛しているモノを、私を倒す為の道具にしようとしている・・・・・・ッ。

「させないわ・・・・・・。先輩達の為にも、勝負を人を貶める道具としか見ていない人に負けるわけにはいかないッ!!」

「貴女が一番知っている筈。勝負は自分の存在価値を示す道具に他ならないということを。

勝者こそ価値があり、敗者には一切の価値が無い。

貴方は思い知ることになるんだ。貴女に価値なんてないってことを」

「く・・・・・・」

 長い茶色の髪を払ってから、私に背を向け、芽衣はドームへと向かう。

 それをただ、私は見ていることしか出来なかった。

 

◇◇◇

 

 控え室。

 先輩達には言っていないが、確実な事が一つある。

 詰んだ、と。

 敵は天才。スポーツ、学業、容姿、芸術、エトセトラ。

 あらゆる分野において負けは無く、閃光学園中学から、あの『フュルスティン女学院高校』へ入学した少女。

 彼女は今大会が初めて故、前座としての参加となるが、彼女は私の得意なスポーツであるサッカーでも私以上の実力があるくらいだ。

 きっと、観客は芽衣のチームに投票する人が多数と考えた方が良い。

 私は本当に成り下がるのだ。勝者以上に孤独な敗者に。

 

 俯いて考えていたその時。

 コンコン、とドアが叩かれる音。

 道女先輩がドアを開けると、そこには見覚えのある顔があった。

 芽衣では無い。前大会準優勝者『Rabbitear(ラビッター) Iris(イリス)』のリーダー。雪空千尋だ。

「雪空さん・・・・・・」

「何の用?」

 服部先輩が、警戒心を剥き出しにしながらそう聞く。

 雪空は笑ってから言う。

「寿奈さんに用があるの」

 

◇◇◇

 

 私と雪空は、控え室の近くにある休憩室に行った。

 ココアを奢ってもらい、一口啜り、単刀直入に質問する。

「私に何の用ですか? 勝つ為の策ですかね?」

 雪空はコーラを一口飲んでから、口を開く。

「貴女、送っているわね。いつもの貴女なら、負ける事を恐れたりしない。私はその迷いを壊しに来たの。

私が勝つ為に何かすると言うなら、貴女をそのままにしていたわ」

 じゃあ、と私は俯きながら訊く。

「貴女は私達に負けて悔しくないんですか?

今まで一位だったのに、それを私達に阻まれたんですよ?

なのにどうして私達が憎くないんですか?」

「その答えは貴女が一番知っている筈よ」

「え?」

「最初のライブから、貴女を見ていた。

あの時のライブの結果を思い出して」

 六月の春季大会。私の初めての大会。

「十三位、です・・・・・・」

「その時の貴女。最下位から脱するという目的を果たして、メンバーで一番うれしそうだったわ」

 だから、と雪空は指を指し、

「大事なのは、貴女が全力で戦うこと。勝利に執着するあまり、大事な事を見失った人に勝利は無いわ。

寿奈さん。全力で来なさい。

私は負けない。貴女にも、貴女が恐れているモノにも。

言ったでしょ。私がスクールアイドルをしているのは、やっている時が一番私らしいからよ」

 そう言い残し、雪空は休憩室を去った。

 それと同時に、休憩室にあるモニターで、芽衣達のチームが踊っているのが見えた。

 流石は芽衣のチーム。一人一人の動きが完璧で。

 それが相乗効果を生んでいた。

「寿奈の元友人さん、厄介な相手みたいね。アンタの考察通り」

 後ろから聞こえた声は、服部先輩のもの。

 その台詞から察するに、全て知ってたみたいだ。

「完璧をそのまま人にしたような奴を初めて見た。

私達一人の実力じゃ、あいつら一人一人の実力には勝てない。

だから、全員で完璧を目指すしかない」

 いつものように、先輩は笑みを浮かべて宣言した。

 

 人は他人以上になろうと願う生き物だ。

 自分が優位に立ちたいから。

 他人に認められたいから。

 だけど勝ち過ぎは、負け過ぎと同じく孤独を呼ぶ。

 かつての私が、両方を味わったように。

 今は違う。確信した。

 この世界に勝ちも負けも無い。

完璧(あいつ)に結果で勝つのは無理かも知れない。

でも、スクールアイドルにとっての勝敗は、私達がベストを尽くせたか、だよ。

アンタの友人に見せようよ。欠陥品(わたしたち)の実力を」

 王座(いちい)など、所詮は形だけのモノに過ぎない。

 楽しくない勝利も、手加減して手に入れた勝利も、敗北と同じ。

 中途半端を嫌い、全力で楽しみながら王者の座を手に入れようと頑張ってきた私が、ここで負けを認めるなど有り得ないッ!!

「もう負けなんて怖くありません。行きましょう、皆でゴールへ」

「「おー!!」」

 さあ、楽しもうッ!


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