秋季大会 その一
日本ライブドームの入口前に立つ私。
十月は入院した故に練習時間はそこまで取れなかったが、服部先輩に付き合ってもらい、何とか間に合わせた。
まだ入院の前からの悩みは解決出来ていないが、ライブが始まれば、忘れなければならない。
集中するんだ。
集中。
集、中・・・・・・。
「おりゃあッ!」
服部先輩の声と同時に、胸部の辺りに不思議な感覚が現れる。
視線を下に動かしてみると、先輩の手が私の胸部の膨らみを掴んでいるのが見えた。
「何やってるんですか?」
「悩んでるみたいだったから、現実に戻してあげようかと」
「いやもっといい方法があるでしょうがァァァァァァッ!!」
◇◇◇
まだ自分には、私には理解出来なかった。
何故、自分は幼い頃から勝つことに拘っていたのか。
何故、自分はアイドルを始めてから勝つことへの拘りを一時期なくしたのか。
何故、自分は再び迷っているのか。
唯一分かっているのは、私が臆病だからということだ。
注目されず、独りになっていくのが怖かったから。
だが、自分のみで勝ち取った勝利は逆に孤独を呼んだ。
勝ちすぎても、負けすぎても孤独を呼ぶ。
だけど、スクールアイドルを始めてからはそれが無くなった。
彼女達なら、先輩達なら、決して私を独りにはしない。
置いて行ったりしない、と。
そんな確信があったから、勝利出来ない事に悔しさは感じても、怖さは感じなかった。
でも、芽衣を見て怖くなった。
芽衣は、親友は、敗北したことによって私を見下すようになった。
美里も、上の舞台から消えた私に一位を取る資格など無いと言い放った。
今日は、そんな二人を見返してやりたい。
故に、戦う。




