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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第七章 十月編 秋季大会に向けて!
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過去との遭遇 寿奈に託された想い その二

練習が終わり、私は一人で帰宅路を歩いていた。

 同学年の友人などいない為一人。琴美先輩と一緒に帰ろうと思ったが、先輩はまだ自主練習を続けるらしい。

 既に日が暮れた道を歩くと、その途中大きめの校舎が建っているのが見えた。

 中等部、高等部の校舎が設けられたその学校。

 私の母校たる『閃光学園』。学園高校では、かつての私の友人達の多くが勉学に励んでいるだろう。

 ただ、元親友を除いて。

 彼女は私と違い、お金持ちで、閃光学園よりレベルが高い『私立フュルスティン女学院高校』へと転入してしまったのだ。

「寿奈!」

 噂をすれば何とやら。聞き覚えのある声と共に、私の背中に向かって投げられたバスケットボールを足で受け止め、一度リフティングをしてから、足で受け止める。

 ボールが飛んできた方向に振り返ると、白と赤で構成された『私立フュルスティン女学院高校』のセーラー服に身を包んだ茶髪ロングの少女が見えた。

「久しぶりね、寿奈」

()()・・・・・・」

 刹那(せつな)芽衣。

 私の元親友にして、元憧れの人。

「まだやめてなかったんだ、バスケ」

「やめるわけないじゃない。エースなんだし。

貴女はサッカーをやめてしまったようだけど」

「やめたわけじゃないよ。趣味では続けてる」

 この少女、芽衣はとても頭が良い。

 口喧嘩で勝てる自信など、微塵もない。

「テレビ見たわよ寿奈。貴女スクールアイドルを始めたらしいじゃない」

「見てたんだ。あんたらしくないわね。

私を見下しているんじゃなかったっけ?」

 この瞬間、私は自分が動揺しているのを感じた。

 ダメだダメだ。冷静になれ。

「見下しているからこそ、それを見て笑っているという可能性を考えないんだね?

軽業女王アクロバット・クイーン

 それは紛れもなく、私自身の仇名だ。

 かつて、閃光学園中学女子サッカー部を優勝させたのは、私の強烈なシュートと、フィールド全てを活かしたプレーに他ならないのだから。

 それが、私。

 軽業女王アクロバット・クイーン、杉谷寿奈。

 だが。

「それ、私が一番嫌いな仇名なんだけど」

「変わってないね。寿奈。

一つ言うわよ。スクールアイドルを始めたとしても、上級学校に行った私には勝てないわよ」

「もとよりアンタを倒すことを目指してないわよ」

 私が言い返すと同時に、芽衣は長髪を翻しながら背を向けて歩き出す。

「それからもう一つ。君はその内、地獄を見ることになると思うわ」

 その言葉の意味は分からなかったが。

 嫌な予感がするのだけは、確かだった。

 

 いつからだろう。

 芽衣と私がここまで仲が悪くなったのは。

 

 私は頭を素早く振って、無心になる為両頬を掌で叩く。

 思い出したくない思い出に、蓋をする為に。

 芽衣とは逆方向に歩き出し、少しだけ俯いた。


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