合宿 その四
少々焦げてしまったカレーライスを食べ(だがカレー自体は絶品だった)、近くの銭湯で温まってから、再び部室にて。
私達は就寝準備をしていた。
「さてと、誰がどこの隣に寝るんだ?」
優先輩は道女先輩にひしと抱き付きながら言う。
多分これは確定だろう。
「琴美も来いよ」
「ですね。では、杉谷さんは服部さんと一緒ですかね」
「うん。寿奈、一緒に寝よ!」
「はい!」
◇◇◇
布団を敷き終わり、電気を消す。
そのまま、目を閉じた。
「おやすみなさい・・・・・・」
「ねえ寿奈、起きてる?」
服部先輩の声。眠れないのだろうか?
「・・・・・・はい」
「ちゃんと寝た方がいいですよ? 明日も厳しい練習が待っていますから、寿奈さんも服部さんも早く寝てください」
琴美先輩に言われ、「はーい」と返事し目を閉じる。
今度こそ眠ろう、としたが。
「ぐおおおおおおおおおー。ぐおおおおおおおおおおー」
誰だ鼾うるさい奴は。
それは服部先輩と琴美先輩も思ったようで、全員がそいつを凝視した。
優先輩だ。
「うるさいわ!」
服部先輩がそれに向かって、枕を投げつける。
「チーザスッ!」と意味不明な叫び声をあげながら、優先輩が起きる。
「んだよォ・・・・・・」
「鼾うるさいよ優! 大体毎回全員で寝る時眠れないの優が鼾うるさいからだからね!」
優先輩は話を聞かず枕を持つ、振りかぶって服部先輩に投げる。
「あんたねーッ! 仕返しィ!」
二人で枕投げを開始する先輩。
何故かわからないが次に、私の頬にも枕が激突した。
「ぐほぁッ! 琴美先輩ですね?」
私はまず枕を宙に蹴り上げてから、自分の力でオーバーヘッドキックで、枕を蹴り飛ばす。
琴美先輩の顔面に激突する。
「流石元サッカー選手・・・・・・見事ですね!」
先輩が投げ返してきた枕を、足で受け取り呟く。
「元じゃなく、今もやってますよ!」
枕は柔らかすぎてドリブルは出来ないが、シュートとパスは出来る。
「優先輩!」
優先輩にパスを出す。先輩も足で受け取ってから、服部先輩にシュート。
そして枕投げ合戦が始まり、テンションが上がっていたその時だ。
「あの~、皆~?」
今まで寝ていた筈の、道女先輩の声。だが彼女の声の響きは、少々怖い。
虫けらを駆逐する怪人のような形相で、こちらを向かず下を向き、ダラーンと近づく道女先輩。
「まさか・・・・・・全軍、道女を枕で撃退せよ!」
服部先輩も怯えながら言う。
言われた通り、私は得意のオーバーヘッドキックで枕を道女先輩にシュートする。
他の先輩もそれに続きシュートするが、道女先輩はそれをすべてキャッチした。
「な、何ッ!」
そして全員の前に立ち、枕を置いてから道女先輩は一瞬で私達に近づき。
「ねえ皆さん? お仕置きしてほしい?
寝る前に、ふざけちゃダメでしょ?」
その態度に、私を含めた全員が凍りつく。それは三年生の琴美先輩も例外ではない。
「「「「は、はい・・・・・・」」」」




