合宿 その三
夕食時。
今回は琴美先輩が夕食を作るらしく、私は先輩と一緒に外に出て調理の手伝いをしていた。
メニューはカレー。
ご飯を炊く係を頼まれた私は、タイマーを見ながら炊けるのを待っていた。
キャンプなどに行った経験が皆無故、こういう風にご飯を炊くのは初めての経験。
火が強すぎても、時間が長すぎても焦げてしまう。
「今日は、楽しかったですね」
琴美先輩がカレーを煮込みながら言う。
「ま、まあ色々災難はありましたけど・・・・・・」
苦笑しながら返答し、私からも質問した。
「服部先輩を見て、琴美先輩はどう思うんですか?」
「そうですね・・・・・・、私は二年生の時に、服部さんに誘われてスクールアイドル部に入り、部長になりましたけど・・・・・・。ふざけているように見えて、服部さんが一番部の中で輝いているように見えました。
後輩を導き、慕われるように努力するのが先輩の務めですが、あの子には、先輩後輩なんて関係ないんです。仲間が困っていたら、いつでも相談に乗ってくれた、いつでも励ましてくれた。それが、服部正子さんなんです」
「私も、先輩には何だかんだ言って助けてもらってますよ。出来るなら、あんなカリスマ性がある人になってみたい」
琴美先輩が、少し寂しそうに返答する。
「服部さんみたいに、ですか・・・・・・。そうなった杉谷さん、見てみたいですね・・・・・・。
ですが、叶いそうもありません。私は今年で卒業して、もう皆さんとは今年でお別れなんです・・・・・・」
卒業・・・・・・。ついこの間まで中学三年生だった私には最近の出来事であり、この後迎えるであろう卒業はまだ私には遠い話。
二年後、同じことがあったら私は何を思うんだろう、と少し考えた。
まだ遠い話だからか、私には何も思いつかない。
「これはやっぱり、三年生にならないとわかりませんよ。私もスクールアイドルを始める前から、同じことを思いましたが、答えは出ませんでした。
ですが今ならはっきりと言えます。卒業なんてしたくない、ここの皆で、いつまでも踊っていたい、いつまでも歌っていたい、いつまでも思い出を作って、いつまでも笑っていたい。
それが、私の本心です」
私は空を見上げ、どこか悲しそうな顔をしている琴美先輩を見ていた。
パチ、パチという音に気付かず。
「あれ、焦げ臭くありませんか?」
え?
私はあわてて火を止め、鍋の蓋を取る。
「うわァァァァァッ!」
ご飯は、少々焦げてしまっていた。
「寿奈、琴ちゃん! ご飯まだ~?」
「もうすぐですよ!」
「あ、はい・・・・・・。もうすぐです」
失敗したぁ・・・・・・。




