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龍の幻覚

そこらのオタク作「女子高生が異世界転生したらドラゴンになれた」

なろう https://ncode.syosetu.com/n1370fa/

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054887024851

に百地優がゲスト出演。

彼女が異世界転移する経緯です。時系列としては、

正子死亡・寿奈離脱からの空白の一年中の出来事です。

正子が死に、寿奈がブラジルに行ってから二か月が経過した。

人は大体それくらいの期間が経てば落ち着くものだが、百地優は例外だった。

仮リーダーとして、『Rhododendron』を率いる日々は決して嫌ではない。

しかし不満を言おうと思えば、いくらでも言える状況だった。

一つは正子との仲が改善出来なかった事。優は正子に絶交を言い渡されている。

寿奈がいる前ではそれまでの関係を何とか演じていたが、彼女のいない所では極力関わらないようにしていた。

修学旅行の時も、同じ班だったのに優や道女と関わろうとしなかった。

そしてその苦しさを、自傷行為で発散させる日々だった。

恐らく自傷している事は、優以外の誰も知らなかった。今でも親は知らないままだ。

唯一知っているのは、道女だけだった。

二つは、寿奈ときちんと話せなかった事。

正子がずっと一人でいる人を放っておけない性格である事は、昔からの付き合いである自分が一番良く分かっていた。

だから正子は、自分達でなく寿奈を選んだ。

一番正子の事を分かっている筈の自分が、正子に拒絶されるわけがない。優はそう思っていた。

それがこの惨状を生んだ。例えそれに気付いたとて、辛い運命は変わらなかっただろうが。

そして何より一番辛いのは、正子が芽衣に殺された事だ。

優にとって、正子と道女は自分の生きる理由の全部だった。永遠の友情を誓い、同じ年に死ぬ事を決めた筈の仲だった筈だ。

だから、優は道女の前で死のうとした。だが道女に止められ、自傷に使っていたナイフを没収され、結局死ねないまま生き残ってしまった。

「なんで、こんな事になっちまうんだよ……」

自分の部屋の電灯に腕を伸ばして、そう呟く。

友情に永遠などなく、死が訪れる時は不平等で、人同士が交わした約束に意味などありはしない。

それが、優が二年生の時に気付いた事だった。

ひょっとしたら、死ぬときも正子は自分の事など微塵も考えていなかったかも知れない。

寿奈に送られたメールには『皆で勝ってほしい』と書いてあったが、きっと寿奈の為だけに書いたに違いない。

「……簡単だったな。そうだ……」

忘れる。忘れてしまえば良いんだ。

もう正子の事も、寿奈の事も忘れてしまえば良いんだ。

どうせもう昔の誓いに、意味は無いのだから。

なら、優が忘れた所で誰も後ろ指など指されない。

寝よう。明日には多分、良い気分で目覚められる筈――だった。


「!!」

目覚めた時、そこはもう自分の部屋では無かった。

木々が生い茂る――森だった。

夢、だろうか? だがここまで鮮明な夢など、普通は見ない。

頬を抓る。痛い。

「……どこ、なんだ……?」

夢遊病だとしても、こんな所には来ないだろう。こんな景色は自分の住んでいる所では見ない。

誰かに、誰かに気付いてもらわなければ。

今日は練習日。道女や、後輩達と会わなければならない。

だからここにいる暇など、自分にはないはずだ。

「誰か! 誰かいねえか!?」

「ここにいるぞ」

優の声に返答した者は、背後にいた。しかしその正体は、人ではなかった。

虎。それもただの虎ではない。

二足歩行し、人間の言葉を繰る虎だった。

「お、お前は……」

「見ない顔だな。亜人族か?」

「な、何を言って……」

「とにかく腹が減ってるんだ。お前の肉を食わせろ……」

虎人間が地を蹴って駆け出し、口を大きく開けた。

優は何とかそれを回避し、腹に回し蹴りを喰らわせる。だが、ダメージはない。

「亜人族にしては大した身のこなしだ。だが、俺を倒すには弱い……」

「うるッせえな……。大事な用があんだよ!」

先の攻撃でダメージを受けたのは虎人間ではなく、優の方だった。

足にヒビが入ったのか、上手く立てない。

「ここで死ぬわけには、いかねえんだ!」

それでも優は抗う。

例え骨にヒビが入ろうが、優には大事な人がいる。

まずはこいつを倒し、自分の居場所へ帰らなくてはいけない。

「その友情は素晴らしい。だけど……お前の力は、その志を実現するには足りなかったようだ」

虎人間が、すれ違う。

いや、それだけではない。

虎人間の口元には、血が付いていた。それはさっきまで彼の口にはついていなかったもの。

紛れもなく、優の血だった。

右肩から、血が噴水のように噴き出す。痛みも遅れて、優の身体を支配し始めた。

「ぁぁぁああああッ!」

痛い。痛い。

動かなきゃ。死ぬ。痛い。死ぬ。

「もう終わりにする。ここでお前は、食料になるんだ」

ああ、そうか。ここで終わるのか。

寿奈を止められず、正子が殺されそうになっていた事にも気付かず。

本当にどうしようもない人生を送っていた。

だからそんな自分は、この虎人間に喰われて死ぬのだ。

「……いただくぜ」

虎人間の歯が、まず優の肩を嚙もうとしたその時。

「ぐっ……」

虎人間が、何かの力で吹き飛ばされていた。

それが何なのかという自分の疑問に蹴りをつける前に、優は意識を手放した。

はい。そんなわけで、優さんが異世界へ行くことになりました。

この後優が、どのようにして再びこの物語へ復帰するのか。

そこらのオタク氏作「女子高生が異世界転生したらドラゴンになれた」にて、その経緯をお楽しみください!

なろう https://ncode.syosetu.com/n1370fa/

カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054887024851

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