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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
IFルート 世界崩壊ルート
164/168

否定

※寿奈が復学を選ばなかったルート

長い時間が経った。

 私がサッカー留学でブラジルに行ってから、今日で一年。

 一年をこんなに長いと感じたのは久しぶりだ。

 ――――スクールアイドルだった頃は、それこそあっという間だったのに。

 最初の内は、留学もそれなりに楽しんでいたが、時間が経つにつれ・・・・・・。

「なんでだろ・・・・・・。ダメなのに」

 少なくとも、数年は帰れないことを覚悟していた。

 日本への未練も断ち切った筈、なのに・・・・・・。

「なんで日本が、恋しいと思うんだろう」

 最近、自分でも明らかに笑顔になったり騒いだりすることが少なくなったと自覚しており。

 このまま機械のように、優勝することに意味はあるのかな、と思っている。

 だけど・・・・・・。


「今戻っても、もう皆は・・・・・・」


 確かそろそろ、先輩は全員卒業する時期。


 今戻っても、意味は無い。

 ――――。

 それに、先輩と親友を殺すことになったアイドルの世界に戻ろうなんて、二人に申し訳ない。

 さて、そろそろ練習だ。行かなければ、とベッドから立ち上がったその時。

 ピンポーン、とインターフォンが鳴る。

「はい、どちら様ですか?」

「優だけど、寿奈か?」

 ・・・・・・。

 

 なんで、部屋に入れたんだろう。

 

 自分でも、理解出来なかった。

 

 だが、ここまで。ブラジルまでわざわざ私を探しに来たのには理由がある筈だ。

「先輩・・・・・・私の事、叱りに来たんですか?」

「何言ってるんだ。私はお前に頼みがあって来ただけだ。やめたのにも、これが理由な事も知ってる」

 頼み・・・・・・。

「何をですか?」

「寿奈に、戻ってきて欲しいんだ。『Rhododendron』の、未来の為に・・・・・・」

 やはり、そう来たか。

「残念ですが、それは出来ません。私には、もう舞台に立つ資格は無いんです・・・・・・」

 戻りたいのは、私も同じ。

 だけど・・・・・・。

「寿奈・・・・・・」

 優先輩は辛そうな顔をしていた。

「私は、服部先輩と親友を守れなかった。それを言い訳にして、スクールアイドルをやめてしまった」

「それは違うぞ、寿奈」

 え、と私が言う前に優先輩は机を叩き言う。

「正子はお前に戻ってきてほしいと思っているに決まってるんだッ!!」

 ・・・・・・。嘘に決まってる。

 服部先輩や芽衣を殺したのは他でもない自分自身。その先輩が、私に戻ってきて欲しいと思っている?

 彼女は親友の筈なのに。

 私が戻る事に、意味なんてないんだ。

 私は出来る限りオブラートに包んで、思っている事を告げた。

「死人は、生きている人に考えを伝える事なんて出来ません。優先輩の言っている事を信じるのは、難しいです」

「正子は、そんなお前が思っているような奴じゃな

「なら証明出来るんですか!!」

 反射的に自分の口から出た声に、優先輩は驚きの顔を浮かべる。

 反論は出来ない、そんな顔だった。

「先輩が本当にそう思っていると、優先輩は証明出来るんですか? 私の言っている事は思いこみかも知れない。でも、死人の想いが分からない私は、こうしてアイドルの世界から離れる事で償わなきゃいけないんです。先輩の思い込みなんかで、私の償いの邪魔をしないで下さいよ……」

「寿奈……」

 私の吐き捨てるような言葉の後、優先輩は失望の表情を露わにした。

 きっと信じていたのだろう。私が戻る可能性を。

 戻らせる為に、優先輩は服部先輩を使って私が戻る理由を作ろうとした。

「それに先輩は、私の事嫌いですよね?」

「な、なんで……」

「服部先輩を守れなかった私なんて、嫌いですよね?」

「……」

 きっとそれ以外にも理由がある。

 私に話しかける時はそんな風には見えなかったが、彼女は恐らく自分を殺していた。

 前から少し気付いていたが、優先輩はこう見えて依存心が強い。

 私が服部先輩と話している時でさえ、彼女は嫌な顔をこちらに向けていた。

 本当は戻ってきてほしいと思ってなくて、服部先輩にチームが勝つ所を見せたくて、私を誘っただけ。

 私が大切だなんて、彼女は思っていない筈だ。

 だから。

「帰って下さい。もう、二度と話しかけないで下さい」

 重い声で、私は優先輩にそう告げた。


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