誤答
傲慢だった。
私の作戦は、成功してなどいなかった。
芽衣の父は、総理大臣。当然警察を動かす者とのコネもある。
私の罪は、日本中に知れ渡る事になってしまった。
「嘘、でしょ?」
幸いにも私の顔写真は載らなかったが、もう警察は私の罪状を知っている。
あとは探し出して、捕まえるだけだった。
学校も退学になり、ある意味卑怯な手段で逆転した芽衣にも捨てられ。
私は逃げていた。凶器である刀を手に、たまに追いついた警察を斬殺しながら。
まだ捕まれない。せめて捕まる前に、私は会いたいグループがいた。
「〇×女子高……」
あの赤髪の少女達が所属する、〇×女子高スクールアイドル部。
何故か彼女らは、殺さなきゃいけない気がした。
あのチームは弱小だが、それでも私の身を震わせる何かを放っていた。
元一位の『Rabitter Iris』やそれ以外のチームにも無い何かを。
それを潰さなければ、恐らく芽衣は負ける。
芽衣に勝つ事は出来なかったが、芽衣が一位を独占できる状況にしたい。
そうでなければ、私がこれまで苦労した意味がない。
私が挑んで負けた相手は、それだけ強い相手だと、周りに思いこませたい。
それも全ては、自分の価値を上げる為の悪あがきだった。
「……」
〇×女子高自体は休みだが、〇×女子高のアイドル部は相変わらず練習を続けていた。
彼女らの結果は、相変わらず芳しくない。
しかしゆっくりと順位を上げている。
棄権グループがいる事による繰り上げではなく、ちゃんと実力を上げて。
部室は一階。私は部室の窓を、刀で突きさした。
「!?」
先に気付いたのは、緑髪緑目のボーイッシュな少女の百道優と、黒髪ポニーテールの紫眼の少女、風魔琴実だった。
優は拳を構え、琴実も同じように拳を構える。
「格闘技の心得がある構え方だね。素人じゃないって見ただけで分かるけど……」
一瞬で、世界が変わった。
拳を構えていた二人は、私の刀によって上半身と下半身に分けられた。
芽衣の命令で修行を積んだ私は、もう一瞬にして、目の前の敵を斬殺する事さえ可能なのだ。
「君は最早……戦う意思すらないらしい」
青髪青目の眼鏡の少女――伊賀崎道女。
彼女もすぐに、私の手によって命を落とした。
彼女は拳を構えることすらせず、ただただ二人の死に混乱していただけ。
私に言わせれば……話にならない。
「最後は、君か」
私は最後の一人、赤髪赤眼の少女に目を向ける。
彼女は拳こそ握っていないが、それでも後退らない。
「面白そうだッ!」
狂った笑みを浮かべて、私は赤髪の少女の腹を捌く。
血を吐くが、少女はまだ死んでいない。
腹を押さえ、上目遣いで私を見る。
「首を差し出す気になったか……死ね」
私の刀が、彼女の首を捌く前に。
「違うわ……アンタと話がしたくて……」
彼女の唇が震える。
死に怯えるでもなく、でも抵抗するわけでもなく。
真っすぐと私の目を見て、話していた。
「アンタ、杉谷寿奈でしょ?」
「……」
「凄いわね。学生アイドルで、アクロバットが出来る人なんて少ないから驚いちゃった」
「へ?」
呆けた顔で、私は手を震わせる。
自分を殺そうとしている人でさえも、彼女は素直に褒められるのか。
「でも、こんな出会い方じゃなく出会いたかったわね。アンタがこの学校にいれば、私達は勝てたかも知れなかったし……もしアンタが私達の仲間なら、そんな風に泣かなくても良かったのかな」
そう言われて、私は目を擦る。
涙など、出ていない。
手についたのは、彼女達の返り血だ。
「ッ!」
次の瞬間、服部正子は私の刃で命を落とした。
それでも瞳は真っすぐ前を見ようとしていた。
「終わった……」
警察車両の音が聞こえる。
〇×女子高を覆うように、警察車両が止まっていた。
私を捕まえるべく、沢山の警察官が走ってきていた。
捕まるまでの間、正子が語った妄想が本当だったらどうだったかを考えた。
確かに幸せだったかも知れない。平凡な舞台でも、私は純粋な気持ちでアイドルに向き合えたかも知れない。
どこで選択を間違えたか、今となっては分からない。
ただ私は、選択を間違えた事に後悔をした。
そして、その耐え難い現実に。
「ぐっ……」
私は死を選んだ。自分の胸に、刀を突き刺し。
私は横に倒れ込んだ。意識が閉じていく。
魂が抜け落ちるのを感じる。
そのまま私は、静かにこの世界をあとにした。
――どこで間違えたのか、私には分からないよ。
激しい後悔の念に、駆られながら。
はい、久しぶりの更新です。
今日からアイドルを始めたい!寿奈敵ルート、如何だったでしょうか。
深夜テンションでいきなり書いた作品なので、色々とダメな部分があるかも知れません。
また気が向いたらこの作品のIFルートを書きたいと思います。
今日アイ敵対ルート 設定資料
杉谷寿奈
本編主人公。このルートでは『フュルスティン女学院』一年生にして、
『フュルスティンズ』副リーダー。
〇×女子高に入らず、芽衣に勝つ事だけを理由にフュルスティンに入る。
芽衣に勝つ為に、芽衣が命令した以外の不要な殺人も秘密裏に行い、
芽衣に勝とうとする。
しかし警察に知られてしまい、芽衣にも捨てられてしまう。
最終的には自分達とは対局の『Rhododendron』メンバー達も全員殺し、
正子に「アンタがこの学校にいたら、私達は違ったのかもね」の言葉を聞く。
最終的に正子との未来を想像しながら後悔し、自殺する。
今回は人を殺す為の術を磨いており、芽衣の家にある刀で戦う。
刹那芽衣
このルートではもう一人の主人公。本編の勝つ為なら何でもやる性格は健在。
最初は寿奈を優秀と判断し使い続けたが、寿奈の余計な行動に対して注意するも、
寿奈が自分以上に完璧な勝ちに拘っている事を知り、距離を置く。
父に頼み、寿奈を逮捕させるよう警察に依頼させる。
その後寿奈が警察に追われ、退学処分となってからは完全に寿奈を拒絶。
今回は、芽衣が生存するルート。
服部正子
本編ヒロイン。しかし今回は敵対人物。
一年の頃に成長し、
二年には周りが驚くくらい明るい性格になった事は変わらない。
しかし寿奈の最後の襲撃によって死に、
死ぬ前に寿奈と最悪の形で会う事になったのを残念に思う。
雪空千尋
本編ライバルの一人。最初の大会の時に、成長する可能性を見抜いた芽衣が、
寿奈を使って殺す。人目につかない所で暗殺される。
百地優
今回は敵対人物。本編と同じくスポーツ万能でクール。
風魔琴実
今回は敵対人物。寺育ちというのもあり、少しだけ格闘技が出来る設定に変更。
しかし死亡する。
このルートとは関係ないが、西遊記風異世界転移にもヒロインとして登場する。
公開したら読んでみてね。
伊賀崎道女
今回は敵対人物。