明智秀未・雪空真宙編『未熟』
「これより、明智三栄と明智秀未による試合を行う。
両者、構え」
雪空真宙は、二人の試合を見に来ていた。
片や剣道界のナンバー一、片や剣道界のナンバー二――そして真宙の友達。
秀未はあの事件で、真剣で人と戦ったらしいが――果たして。
「始め!」の一言が聞こえた後、二人の姿が消えた。
そして現れては、人間の頭で知覚出来ない速度で剣を振るっている。
なるほど、あれだけ早ければ寿奈のようにアクロバットを使う者がいても勝てないわけだ。
明智家の道場では、試合に特化した見せる剣術とは違う。
戦国時代などで、敵を倒すことに特化した、殺し合いの為の剣術なのだ。
それ故に、彼らにとっては試合もお互いの命を賭ける場。
そう思えているからこそ、あれだけ早く動けるのだろう。
だが、三栄は足下を狂わせた。
そしてその隙に秀未の攻撃が、風を纏って頭に入る。
「面!」
カァン、と大きな音が響く。
秀未の勝ちだ。
「勝者、明智秀未!」
秀未は面をとり、真宙に微笑む。
兄・三栄も悔しい顔をしていたが、妹の成長を喜んでいるようだった。
「真宙、この調子で今年のアイドル大会も勝とう」
「うん!」
諦めなければ、自分が勝てないと思っている者にも勝てる。
それを教えてくれた、試合だった。