百地優・伊賀崎道女編『私達は、またきっと会える』
放課後。
大学の授業を終え、百地優と伊賀崎道女はある場所に向かっていた。
今日はアイドルサークルの活動もない。
飲み物と花を買い、優と道女は飲み物を飲みながら目的地へと向かう。
「道女」
「どうしたの、優ちゃん」
隣で歩く優は、少し上を向いていた。
今日行く目的地の事で、辛い思い出が蘇ったのか、顔も引き攣らせている。
「やっぱり、行くのやめたいの?」
道女が問う。
すると優が慌てて顔をこちらに向けた。
「いやいや、親友の墓参りくらい行けなくてどうするんだ!」
優と道女の共通の目的。それは正子の墓参りだ。
ここ最近は騒動で忙しくて行っていなかった。
進級したという報告もしたいという事で、始業式の服のままで、墓参りに行くことになった。
墓へは、早く到着した。
服部家の墓に花を供え、二人は両手を合わせる。
「正子、眠れていると良いな」
「うん・・・・・・」
優があの時のようにナイフを取り出さないかと心配になる。
だけど今日は、そんな様子も無さそうだ。
「・・・・・・お前に、渡したいものがあるんだ」
優はここにいない正子に話しかける。
優はやはり、ポケットからナイフを取り出した。
「ゆ、優ちゃん!」
「落ち着け」
そっとナイフを、花の近くに置く。
「お前のナイフだ。
だけど、私達があの世に来るまで絶対に使うなよ・・・・・・」
優はそう言い残し、道女と共にその場をあとにした。
正子が実際あの場にいたら、何て答えるのか。
その答えが気になるが、それ以上は考えないことにした。
「私達は、遠い未来にきっとまた会える。
それが例え人間じゃなくても、例え地球が滅びていても」
三人で交わした約束を、道女は歩きながら口ずさんだ。