表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
ファイナルライブ編 杉谷寿奈よ、永遠なれ!
154/168

新しき時代へ その一

長い夢から覚め、瞼を上へと持ち上げる。

 それに対する寂しさとか、時が戻らないもどかしさ、そして帰ってこないあの人に対して、涙を流しそうになる。

 上体を起こして、大きく伸びをする。

 充電していた携帯端末を手に取り、黒野空良はそのままベッドから降りた。

 それから近くの棚の上に置かれた額縁の写真を見る。

 つい数日前までの写真。

 寿奈も空良も、他の皆も。笑顔で写真に写っている。

 何故かまだ数日しか経っていないのに、不思議と数年前の出来事のように感じる。

 やはり、寿奈がいなくなったからだろうか。

 

 ――寿奈は予定通り、日本を出て行った。

 行き先も予告通りサッカーの本場ブラジル。

 今はそこで、プロのサッカー選手になる為の特訓を始めている所だろう。

「部長・・・・・・」

 寿奈は去り際に、部長を指名した。

 真宙か秀未、そのどちらかだと思ったのだが、寿奈は空良を選んだ。

 その理由は分からなかった。

 だが寿奈は言っていた。空良なら、部を任せられると。

 これから空良がやらなければならない事。

 それは部員勧誘。

 空良は昨日、始業式を迎えて二年生になった。

 よく考えれば、あの援助交際で稼いだ金によるアパート暮らしから、寿奈の家で暮らす切っ掛けがアイドルだったのは驚きである。

 空良はここから、上に行けるのだろうか。

 寿奈無きアイドル部を、勝たせることは出来るのか。

 空良には、寿奈のようなアクロバットは出来ない。

 だが、相手の心理を突くのを誰よりも得意とする。

 だから、客の心理を理解した踊りと歌で勝ち上がりたい。

 それが、死んだ奴らに見せてやりたい光景だ。

 途中まで馬鹿にはしていたが、空良はここまで真友が自殺した光景を忘れたことなど無かった。

 北子に関しては、感謝祭の直後に裁判が開かれ、死刑が決まり。

 どこかに隠れている仲間に脱走を手助けされないよう、その二日後に刑が執行された。

 聞いた話によると、死の直前の北子はとても穏やかだったらしい。

 だが涙を流し、首が締まって暫くも止まらなかったという。

 きっと、それは作戦の失敗という理由だけではないのだろう。

 仲間の死にも、きっと涙を流していたのだろう。

「・・・・・・」

 学校が始まる。

 今日も私は、バッグを背負って一階に降りた。

 

「義母さん、おはようございます」

「あ、空良。おはよ」

 まだ寂しさが抜けきっていないのだろうか。

 寿奈の母の声は、昨日と同じく少し暗かった。

 この前の話では、五年くらいは帰ってこないみたいな事を言っていたのだから、そろそろ慣れてくれないと空良も調子がくるってしまう。

「今日から部員勧誘の日だね。

どういう子を探すの?」

「行ってみなきゃわかりませんよ。

やる気のある人は勿論ですが、隠された情熱を秘めている者とか。

私はそんな人を探します」

 朝飯のパンを咥え、空良は駆け出す。

 そして、学校へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n1678eb/ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ