答え
感謝祭は予定通り三十一日に決行されることになり、私達は重症から回復した秀未を加えて練習を続けていた。
計五曲の練習。
それは大変だけど、でも私達は自分達に出来ることを精一杯やったんだ。
そして、大会前日の夜。
練習を終え、私達は前日の夜を学校で過ごすことになった。
私は少しだけ抜けると言って、ある場所に来ていた。
服部先輩の、眠る墓に・・・・・・。
「お久しぶりです、先輩」
私はあの葬式の日、出棺の儀が終わると同時に芽衣を止めようと走り出し、埋葬まではいなかった。
あれ以来、私は一度もここに来たことはない。
だから、服部先輩の墓を見たのは今日が初めてだ。
そして、一人で墓参りに行ったのも今日が初めて。
「・・・・・・先輩。
あの時の約束、やっと果たせましたよ。
答え、見つけてきました」
一年生の頃、先輩は私にどんなアイドルになりたいのかを問い、私はそれに答えられないまま先輩はこの世を去った。
そして今、私にとっての引退試合とも言える感謝祭が再び開かれる。
私はその前に、どうしても答えを出したかった。
漠然として、子供じみたものだが、これが一番自分らしい。
「先輩、私は誰かを守れるアイドルになりたいです。
悲しみも辛さも、全て受け止めて。
皆が笑顔になれる、そんなアイドルに・・・・・・。
でも、明日一日だけなんです。私がアイドルでいられるのは。
遅かったと思いますか?
私が答えを出すのは、遅かったですか?」
服部先輩の墓に添えられた花に、滴が落ちる。
それが紛れもなく自分の涙であることは、もう勘で分かっていた。
やはり、死人は答えてくれないでは無いか。
私は何をしにここに来たんだ。
『それが、アンタの答えね・・・・・・』
声。
私の頭に響くように、それは聞こえた。
そして。
『それが、アンタの答えね。
・・・・・・はははは。ははははははッ!
面白いよ寿奈。その答えを、私は待ってた。
やっぱりあの時アンタを勧誘して正解だったよ!
私は、期待している。
例えアイドルじゃなくなっても。さあ、歌うのよ。
寿奈、行きなさい・・・・・・』
私は小さく笑った。




