作戦開始
大阪府のとあるホテルの一室で、空良と秀未の二人は調査の準備を始めていた。
空良は目立たない服装への着替え、秀未は生まれて初めて真剣の手入れをしている。
「というか、よくそれをここまで持ってきましたね・・・・・・」
空良が秀未に対して呆けた顔でそう言う。
秀未の行為は、明らかな銃刀法違反である。
刀を所有している事自体は、家で飾っているものだとすれば、別に責められることではないが、それを外に持ち出した時点で、秀未の行動は犯罪だ。
「何を言っておる。国から認められている研究所を襲撃しようとしている時点で、私達は咎を背負ったようなものではないか。
今更刀一本の事を気にする阿呆がどこにおる」
正論に正論を重ねた秀未の発言。
今回ばかりは、空良にも反論は出来なかった。
「そういうお前こそ、火薬を調合しておるではないか」
「侵入に爆弾は必要不可欠ですよ」
厳密には爆弾ではない。
流石に爆弾の製造方法は、一応一般の高校生である空良は知らない為、火薬を調合するのがやっとだった。
あとはマッチで点火すれば、強力な爆弾と同等の威力で周囲のものを破壊する。
「と言っても、時限式ではないですから、上手くやらないと私達の身体が吹き飛びますけどね」
それこそ、遠くにある火薬を入れた瓶の中を、ピンポイントで狙うくらいの事が出来なければ、点火は出来ない。
モタモタしていれば、その間にあの剣使いを含めた奴らに襲われる可能性もある。
だが成功させる自信が十分あった。
「安心して下さいよ秀未先輩。
私に掛かれば、こんなの余裕です」
空良が得意なゲームは、チェスだけじゃない。
射的のような、撃つ位置を考えてやるようなゲームも得意だ。
これはゲームではないが、空良は何度も経験している。
ゲームで得た知識や技術は、必ず何かの役に立つし、今まで何度もその方法で、様々な困難を解決してきた。
「姉さん・・・・・・、敵討ちもライブも、全部成功させるからな」
そう決意して、杉谷空良は窓を開けた。
隣に立った秀未と手を繋ぎ、同じタイミングでベランダから飛び降りる。
わざわざ階層の低い部屋にチェックインしたのも、この作戦の為だ。
何とか無事に着地し、空良達はそのまま目的地に向かって駆け出した。




