闘う理由
面会室をあとにした空良。
今は刑務所を離れ、秀未との待ち合わせ場所である東京のカフェに向かっている途中だった。
面会の後、自分が勝者だと感心した高笑いの後、看守が真友を面会室から連れ出した。
空良はそれを見て、絶望した。
否。絶望したフリをしてから、空良は出て行った。
相変わらずバカだ、と空良は思う。
「大人しく死刑になるかも知れない道を選べば、私を操れただろうに」
元々空良は、いきなり襲撃する予定はなかった。
襲撃しようにも、証拠が無ければ空良達の行動はただの愚行となってしまう。
そして証拠集めも、多分難しいだろう。
危険な研究や知られたくない研究は、関係者ですら、それ以外の者への口外を禁止している筈だ。ならば、どれだけ探しても資料が見つからない、という可能性が高い。
それに、下手な事をすれば空良達が犯罪者として捕らわれる事もありえなくない。
むしろ、自分達のしようとしている事は犯罪以外の何物でもない。
それを分かった上で、警察などを頼らずに空良は寿奈の仇を討ちたいと思ったのだ。
だがもう沢山の証拠を集める必要はない。
違法な研究の為に寿奈を殺し、挙句世界全体を巻き込もうとしている。
それだけ分かれば、十分だ。
そんな事をしようと、寿奈が蘇るわけではないが。
世界に訪れようとしている危機を止めることは、もしかしたら出来る。
それが、空良の戦う理由だ。




