調査 その一
夜十時。
真宙を寝かしつけた後、部室近くの多目的スペースに正座し、秀未が開口一番言う。
「では、あいつらが何者なのか、について少し話し合おう」
「まず言えるのは、関わっている人間の全て――とは言えないけど、ほとんどは白衣姿だった。何かの研究をしている人、と考えるのが妥当かも知れない、というのが一つ。
そして、その研究の為には寿奈姉さんが邪魔だった、というのが二つ。
そう考えると、短絡的に考えるなら、音楽関係の研究しているか、スクールアイドル関連の人でしょうね」
空良には思い当たるものがある。
日本を発つ数日前に見たニュース――『皆が納得する音楽』。
あの白衣姿の人達が何らかの研究をしている人達で、その音楽の研究をしているのだとすれば、寿奈が殺された理由にも少し納得がいく。
だがその仮説だけでは、まだ寿奈が殺された理由としては不十分過ぎる。
勿論、空良がそう思うのは、その仮説が自分の頭にあるから、というだけではない。
『Rhododendron感謝祭』のスケジュールが、最近届いており、そこにはこう書かれていた。
自分達の歌の中間に、その音楽を発表する、というスペシャルイベントがある事が明記されている。
それならば、その研究と自分達は無関係とは言えない。
他にもある。
もしその音楽が、洗脳音楽だとすると――。
「だとすると、見誤ったな。犯人達は」
もし空良がここまで考えた事が全て正しければ、空良の言う通り犯人は重大なミスを犯したと言える。
犯人の目的は、恐らくこの計画に気付きそうな者を殺す事。
だとするならば、空良か秀未を殺すべきだった。
それをしなかった時点で、犯人の計画には穴があるのだ。
「とはいえ、ここまではただの仮説です。
一旦私が考えた事について情報を集めない限りは、動きようがありません。
暫くは、この部室で調査を行いましょう」
秀未はこくりと頷いた。
それから、調査が始まった。
ニュースやネットなどのメディアを元に、それに関する情報を集めていく。
幸い公開されている研究故、沢山の情報を手に入れる事が可能だった。
まとめられた情報を整理すると、こんな感じだ。
研究の責任者の名前は、灰原北子。
研究内容は、『皆が納得する音楽』。それ以上の細かい内容は、どこのメディアにも表示されていない故、それが何らかの洗脳音楽である可能性は否定出来ないと言える。
研究所があるのは大阪府。自分達が住む滋賀からは割と近い。細かい住所まで明記されている。
だがこの情報を見た時、空良は目を丸くした。
資金援助者の一覧に、『星夜真友』の文字があることに。




