嘆き その三
空良が寿奈の家に戻ってから、二日が経過した。
寿奈がいない事情を説明した途端、寿奈の母は不安な顔をしたのが、今でも頭に焼き付いている。
やはり、不安なのは自分も母親も同じなのだろう。
空良には、そんな経験はない。
自分の両親は、生まれてすぐに死んだらしいのだから。
それを恨んだことはあまりない。
施設に預けられてからが、地獄ではあったが。
そして今は、義姉もいる、義母もいる。
二人共嫌な顔一つせず、自分を本当の家族のように扱ってくれている。
イギリスに行く前、夕食を作ってくれた時は喜んで食べてくれた。
だから、空良にとって本当の家族などどうでも良い存在・・・・・・。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
今は仕事で寿奈の母はいない。空良が代わりに、扉を開けた。
「はい」
『警察の者ですが』
空良は首を傾げる。
この家に、警察の世話になるような人物など一人もいない。
あの時の事件なら、空良は無実という事で、拘留で済んだ筈なのに。
そのまま扉を開ける。
男性警官が苦痛な表情で、開口一番――
「ご愁傷様です・・・・・・」
と暗い声で言った。
空良は眉を潜める。
男性が持つ箱には、イギリス警察のマークが描かれている。
そして届いたのは寿奈の家。
ご愁傷様という言葉。
これが何を意味しているか、分からない筈が無かった。
「その箱の中身は・・・・・・」
恐る恐る問う空良。
怒りと悲しみを秘めた声で。
「杉谷寿奈さんの遺品――その一部です」
「うわああああああああああああああああああああああッ!!」
夢なら覚めて欲しい。
その一心で叫び、そして倒れた。




