嘆き その二
「!」
珍しく、自分の心音がバクバクと異常な程聞こえた。
恐ろしい夢を、見たからだろう。
移動する飛行機の中で、空良は目を覚ました。
飛行機の駆動する音が聞こえる。現在時刻は、日本時間で二時。
朝乗った日本行きの出発時間がイギリス時間で午前八時――つまり日本時刻で午後四時だから、あと一時間半で到着だ。
右隣の真宙と秀未は眠っている。
左隣は、空席。
そう、寿奈は来なかった。
出発前、携帯を機内モードにする前に、寿奈からLINEが来た。
『先輩達とやり残した事をやるから、ロンドンに残る。
先に三人で練習を始めていてほしい』と。
空良はそれを見た時、嫌な予感を感じていた。
第一の理由として、寿奈の操る口調と異なるということ。
第二の理由として、寿奈の性格上急にこんな事を言わない筈。
だが、口には出さなかった。
空良の挙げた違和感は、寿奈に何かが起こっている事を示す証拠としては不十分過ぎる。
故にそのまま帰ったのだが・・・・・・。
不安しかない状態だ。
もし先の夢が、この先の未来を表しているとしたら?
寿奈が死に、そして自分まで死んでしまうということか。
事実それが行われているのならば、今すぐにでも止めたい。
だがたかが胸騒ぎだけで、今そんな事を言ってもバカにされるだけだ。
もどかしく、そして何より怖い。
久しぶりに抱いた感情だ。
無力な自分を、悔いるしかなかった。
――夢は刻一刻と、現実になりつつある事実を知らないまま。




