大会 その二
夜十一時となり、先輩達はとっくに就寝していたが。
私は眠ることが出来ずに、ベランダで夜空を眺めていた。
東京に行くことは初めてではないが、日帰りが多く、こうしてまともに東京の夜空を見たのは初めてだ。
東京の空は、私が毎晩見ている滋賀の空とは全然違う。
特に、星の色が。
こんな凄い街で、アイドルの大会に出場する――。二ヶ月前の、サッカー一筋だった私なら考えられなかったことだ。
しかも私は、部の、グループの希望として服部先輩に選ばれた。
それを意識すると、まだまだ不安だらけだ。
――本当に、私に出来るのかな?
「眠れないの?」
不意に、後ろから声が聞こえた。服部先輩の声だ。
その声の方向に振り向いて、私は言う。
「はい・・・・・・。こんな大会に出るなんて、前の私じゃ考えられませんでしたし。
初めての経験なので」
先輩は少し歩いてから、両肘を鉄柵に乗せる。
「私もそうだったよ。スクールアイドル部やりたいって言い出したのは私なのに、そんな私が一番緊張してて・・・・・・。
でも、緊張しているのは私だけじゃない。皆そうなんだって思ったら、いつの間にかそんな気持ちはどっかに消えてた。
だから、大丈夫だよ」
「先輩・・・・・・。ありがとうございます!」
服部先輩は、いつもどこか抜けている所があって、先輩としてダメな部分も数多く持っているけど・・・・・・。
でも、どこか安心出来る。
「いつか後輩がやってきて、同じ境遇になっていたら、今度は寿奈がその子に言ってあげてね」
「はい!」
私の返事と同時に。
夜空が明るくなり始め、お日様が昇った。
「さーて、まだ四時くらいだし、ちょっとだけ休もう?」
「そうですね!」
ベランダから部屋に戻り、少し横になった。




