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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
ファイナルライブ編 杉谷寿奈よ、永遠なれ!
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空良と火奈乃 その五

久しぶりの部室。

 時刻は七時前。この時間帯は寿奈しか来ないことは、空良がよく知っている。

 真友から告げられた作戦、それは爆破予告について伝える事だ。

 彼女曰く、本当に爆破する気はあまりないらしい。

 爆弾はあくまで予備の作戦。

 本当の狙いは、正体不明の爆破予告を選手たちにのみ公表しつつ、運営に気付かれないようにし、選手たちの出場を阻害すること。

 既に冬季大会――決勝戦に出場するグループには情報を伝え終えている。

 最後は、空良が所属していたチーム『Rhododendron(ロードデンドロン)』だ。

 寿奈達への伝達は、空良が自分から伝えたいと志願した。

 勿論真友の監視はあるが、音は聞こえない距離だ。

 作戦時は必ず付ける盗聴器も、外した方が良い理由を伝え、外してもらった。

 あとは、あの日に書いた手紙を見えないように渡せば、チェック。

 まだまだ油断は許されない状況ではあるが、不思議と空良は笑っていた。

「おはよう!」

 寿奈の声。表情も明るかったが、空良の表情を見た途端冷静になる。

「おはようございます、杉谷寿奈先輩」

 大事な事に気付かせない。

 空良がゲームをやっている時も、よく使う手だ。

 何らかの方法で、自分自身に注意を向け、重要な事に気付かせない。

 この状況ならば、空良に注意を向けさせ、監視がある事に気付かせない。

 それは真友達の作戦の為だけではない。空良が単独であの日から開始した作戦の為でもある。

 この作戦でいけば、自分達の救いたいものを救い、潰したいものを潰すことが可能なのだ。

「何の用?」

 素っ気ない声で、寿奈は空良に問う。

「少し話をしにきただけですよ」

「悪いけど、君と話すことなんてない。

すぐに出て行

 

「これでも何か言えますか?」

 

 寿奈の言葉を遮りながら、空良は寿奈との距離を詰めた。

 首にナイフを当て、少しだけ出血させた。

 一瞬で。多分、途中目を閉じていた寿奈には動きが見えなかっただろう。

 空良は、音も気配も殺していたのだから。

 寿奈の目が大きく開いていた。

 だが恐怖ではない、ただの驚愕だった。

 もしかしたら本当に死ぬかも知れない状況でも、恐怖に支配されない寿奈に、空良は感心する。

 

 救うべき、価値がある。

 

 自然な笑顔で、救うべき人に言う。

「良いから、大人しく私の話を聞いて下さい。

死にたくなかったら、ね」

 やむを得ない、と判断したのか、寿奈はこくりと頷く。

 確認した空良は、口を開いた。

「良いですか。これが貴女方の為に言う最後の言葉です。

冬季大会の会場――日本ライブドームは現在、爆弾が設置されています。

それは冬季大会当日に爆破させるという知らせをある人物から聞きました。

これがどういうことか、もうおわかりでしょう?」

 子供に何かを教え、それを理解出来たかどうかを問うように空良は訊く。

「それを聞いて、私が信じるとでも思ってるの?」

 寿奈は強い眼差しで、そう答える。

 正確には、爆弾はまだ設置されていない。

 どこにどう置くかの検討はついているが。

「信じないならそれでも良いです。

先輩達が死ぬだけです。私には関係ありませんし」

 空良の挑発に乗りかけ、少し怒りを見せていたが、状況を理解し、寿奈は嫌々頷いた。

「わ、分かった」

「それから先輩、少し失礼します」

 え、と驚きの声を漏らす寿奈に抱き付き、左ポケットに手紙を忍ばせる。

「これは冬季大会が終わるまで、絶対誰にも口外せず、見せず、そして読まないで下さい。

私にこれをやらせることを指示した“奴ら”にバレたら一大事です」

 空良は寿奈を押し倒す。

 そのまま窓を開けてから退出し、一瞬だけ寿奈を見た。


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