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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
ファイナルライブ編 杉谷寿奈よ、永遠なれ!
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先輩達の大会 その二

ホールのエントランスにて。

 また慣れない英語で話さなきゃいけないのか、と危惧していたが、その必要は無かった。

「杉谷寿奈様のグループですね」

 受付の人間はイギリス人だったが、流暢な日本語で私に確認してきた。

 助かったと安堵してから、私はそれに日本語で答える。

「はい!」

「特別席への入口はあちらでございます。出場チームの控室は特別席入口よりも奥にございます」

 受付嬢がその方向を手で示しつつ案内する。

「分かりました!」

 そう返事してから、私は足を動かした。

 まずは『Ilis(アイリス)』の控室に向かう為に。

 特別席への入口を過ぎ、『Ilis(アイリス)様』と書かれた紙が貼られているドアを二度ノックする。

「入っていいぜ」

 優先輩の声。

 ノブを右に捻ってから、前に向かってドアを押し開けた。

「失礼します」

 その控え室は、ライブドームのものと比べて優れていた。

 様々な種類の化粧品が置いてあり、着替え用のカーテンも三枚と、人数分準備されている。

 しかも部屋の中心にあるテーブルには、イギリス産のものと思しき高級な茶葉を使った紅茶と高級そうな茶菓子がある。

 何と言うか、控え室というより応接室と言った印象を受ける。

「おう、いらっしゃい!」

 そして元気に手を振る優先輩が立っていた場所は、練習用のスペースだ。こんなスペースはライブドームの控室には用意されていない。

 踊りの練習の最中だったらしい。

「凄いですね、この控え室」

「だろ?

私も初めて見た感じだぜ。

正子にも見せてやりたかったなあ」

 と嬉しそうに呟く優先輩。

「それよりもよ、この衣装どうだ?」

「いいと思いますよ」

 今回の衣装は、三人共黒だ。

 だが全員リストバンドを巻いており、そのカラーは三人共違う。彼女達のイメージカラーとなっているものを選んでいる。

 優先輩は緑、道女先輩は青、琴実先輩は紫だ。

「さて、ここで話そうぜ、と言いたいところなんだが。

そろそろ始まる時間なんだよな・・・・・・

 そう言われて、私は時計を見た。

 確か開会式は八時半からと聞いている。

 現在時計が示す時間は、八時十五分。

 考えてみれば、時間がないというのも確かである。

「じゃあ、そろそろ行くぞ」

 優先輩が二人に呼びかける。

 そのまま控え室を退出し、舞台裏への入口へと向かおうとしていた先輩の前に、一組のチームが立ち塞がった。

「初めまして、『Ilis(アイリス)』の皆さんよね?」

 リーダーらしき、金髪青目の非の打ち所がない美人が問いかける。

 そのグループは、メンバー一人一人が、『Ilis(アイリス)』との格の違いを見せていた。

 特にリーダーは、大人の色気を放っている。

 既に二十歳であり、大人っぽい顔と体つきをしている琴実先輩も、彼女と比較すれば子供同然だった。

「優先輩、彼女達は・・・・・・?」

 驚きを隠せないまま、優先輩に問いかける。

「奴らは大学生スクールアイドル、現在一位・・・・・・。

イタリア代表『オルゴリオ』だ」

 その顔は笑っていたが、若干冷や汗を浮かべていた。

 三位(せんぱいたち)一位(イタリアだいひょう)、数字だけ見れば大して差は無いように感じるが、事実は数字とは違う。

「ええ。私達が、『Ilis(アイリス)』です」

 琴実先輩が、冷静な顔で問いに答える。

「寿奈、私が冷や汗浮かべているように見えてるだろ?」

 優先輩が小声で訊く。

「見えますけど・・・・・・」

「でも怯えているわけじゃねえ・・・・・・私、ワクワクしてるぞ」

 優先輩らしいな、と私は心で頷く。

 私の知る先輩達は、強敵たちに対してドキドキはしても、決して怖気づいたりはしない。

 冷や汗を浮かべているのは、心の中でドキドキしているという何よりの証なのだろう。

「楽しみよ。

私は貴女達のようなライバルに会えるのをずっと心待ちにしてた」

 爽やかな笑みを浮かべるイタリア代表のリーダー。

 その笑みで、私は安心出来た。

 芽衣や真友のような悪人の雰囲気は感じなかったからだ。

 彼女の心にあるのは、純粋に相手との勝負を楽しみにしている気持ちだろう。

「私もですよ。

カルラ・レイブリックさん」

 カルラ・レイブリック。

 恐らくそれが、リーダーの名前なのだろう。

「あら、私の事を知っていらしたのね。

ところで、貴女達の後ろにいる茶髪の子・・・・・・」

 とカルラは視線を私に向ける。

「貴女が、高校時代の『Ilis(アイリス)』メンバーの勝利に貢献した杉谷寿奈さん?」

「私を知っているんですか?」

 急な事で体がピクリと震えたが、何とか冷静に答える。

「ええ。『Ilis(アイリス)』に関わる事は全て調べたわ。

だから、貴女の事も知っている。

凄いアクロバットダンサーだということも、ね」

「それは光栄ですね」

 私も少し嗤う。

「いつか貴女とも、競ってみたいわね」

 それだけ言い残し、カルラは仲間と共にステージ裏へと向かった。


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