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ガンルダーガーオークション1



「「当館、ガンルダーガーオークションは皆様も知っての通り、高級で貴重な商品を取り揃えております。どうか皆様、周りの目を気にすることなく奮ってご参加下さい。

 なお、皆様がこの会場から持って帰れますのは、競り落とした商品と頭の中の記憶のみです。この会場の内の出来事を形にして残しておくことは不可能でございます。

 商品の撮影は勿論、ここでの会話などを録音するのは禁止させて頂きます。

 万が一いかがわしい行動を見つけた場合は問答無用で取り押さえさせて頂きますので、ご容赦下さい。

 また、当館は安心して競りに集中して頂きますよう、また形に残るものなので監視獣なども取り付けておりません。故に皆様と当館の関係は信頼で成り立っております。どうかトラブルの無いよう、お願い申し上げます……」」


※監視獣・地球で言う監視カメラのようなもの。高度な魔法で作られた生物であり、その目に写したものを録画、再生出来る。主に防犯用として使われる。


 そんな、部屋に反響し響き渡るアナウンスを聞いた。

 始まってしまった。次は私が連れていかれるかもしれない。押さえ付けていた恐怖がそろそろはち切れる。呼吸が段々と乱れていく。


(うー……全然良い案浮かばない……)


 ここから逃げ出す方法。もしかして無いかも知れないという、漠然とした不安が私を襲った。


(やっぱり……このまま売られるのかなぁ)


 普通、異世界って……剣と魔法の自由な世界じゃねぇの?なんなの?奴隷とかいう一生不幸コースまっしぐらなんだけど。

 私、地球でも異世界でも不幸だなぁ。なんかもう笑えてくる。あは。あはは。


(はぁ〜……私どうなっちゃうのかなー……)


 またも、アナウンスの声が部屋に響き渡る。


「「それでは早速、今回最初の品をお見せ致しましょう!!」」


 オオオオオ、という大きな歓声が聞こえた。どうやら客はかなりの数っぽい。 

 ひーふーみー…………もっともっと、もっと沢山。

 私は耳を使い、ドアの向こうに何人いるか確かめた。……確かめたが、多過ぎて数え切れない。


(一体何人いるんだよ……変態共め……)


 そして、オークショニアがゆっくりとした口調で坦々と喋りはじめた。


「「では、最初の品を紹介させて頂きます!一品目、《アルガスト族の奴隷》でございます。アルガスト族は非常に戦闘能力に長けており、ボディーガードとして使うも良いでしょう。また、アルガスト族は上等な生物兵器です。アルガスト族の成人男性の蹴りは、一撃で大木を倒すほど。残念ながら今回の商品は子供なのですが、それでも十分使えます。

 ただ、少しばかり気が強いのでご注意を。しっかり躾ることをお勧めします。

 では、7000万ベルからスタート!!」」


(ホントに始まってる……。つーか、私、神様に会うとかお決まりな展開すっ飛ばしてるな……あ〜現実逃避したい。いや、現実逃避した結果がこれかぁ……)


 はぁ、ここで救世主とか来てくんないかな。ピンチに駆け付ける王子様でも、この際助けてくれるなら、もうただの一般人でもいいしさぁ……。

 異世界買い被ってたわー……。

 今私は、薄暗い部屋でただ待つことしか出来ない。何を、かは分からないが。


「「55番7500万、98番9000万!!」」


「「……1億出ました!他に、これ以上出せるという方はいませんか?いなければーああっーと、68番1億5000万!!」」


「「98番1億6000万!」」


「68番2億!!」


「「……他にいらっしゃらないようなので、68番リンガス氏、見事《アルガストの奴隷》落札です!!」」


 軽快なリズムで流れていくアナウンスを聞いていると、また一人連れ行かれた。


「ウッ……うぐっ……ヒック……」


 その人は泣いていた。私と同じように、きっと口が塞がれているだろうから、声が詰まって聞くに堪えない。

 なのに、有無を言わさず連れていく奴ら。


 怒り、不安、恐怖、疑問、悲しみ、諦め。様々な感情が脳を駆け巡る。

 どうして、どうしてこんな酷いことが出来るの……?

 こいつらの神経を本気で疑う。


「「続いての品、《リグライトの巫女》でございます!!」」


 人を品物ってなんで言えるの?この世界じゃ当たり前のことなの?


「「こちらの商品は捕獲する際に右腕を負傷したため、そこを考慮してお値段をつけて頂きたいと思います」」


 人の値打ちって、そんな簡単につけちゃえるもの?


「「1億2000万ベルで落札です!おめでとうございます!」」


 人の値段……?そんなの……



 オークションが始まって、1時間ほどたった時。


「おい、運ぶぞ」


 急に体が宙に浮いた。 ……ついに私か。逃げる方法、ついに浮かばなかった。

 全身に悪寒が走る。恐怖を感じているのだ。

 あとはもう、せめて良い人に買われることを祈るしか無いね……。……諦め。

 今は、だけど。


「はは、無抵抗か?それとも怖いのか?」


(怖いよ!?怖いけど、あんたなんて拘束されてなかったらケチョンケチョンだからね!?なんで上から目線なんだよっ)


 と、強気でつっこんでみたけど(心の中でね!)私は確実に、確実にバットエンドへと向かっているのだった……。




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