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馬車の中で

更新は毎日を目標にしていますが、あくまでも目標なので、温かい目でお願いします(´・A・)



ガタガタガタガタ


「…………」


「よぉ、お嬢ちゃん。目覚めたか」


 揺れている体。目の前には、意地の悪そうな男。お世辞にも容姿が良いとは言えないその男は、ニンマリと笑いながらこちらを見下している。


「おかしいなぁ。お前に刺した毒は、普通3日は動けなくなる麻酔銃なんだぞ?なのにお前ときたら、たった3時間で目覚めやがった……。間違いねぇな!ハッハ!」


 調子が良さそうに笑う男の顔は、どうにもぼやけていて余計面白く見える。どうやらまだ薬が少し効いてるようだ。頭もぼっーとする。


「この奴隷馬車が市に着くまではまだ5日ほどかかる。それまでにせいぜい逃げ出す方法でも考えときな。ま、その手枷と檻が有る限り無理だけどな」


 そう吐き捨てると、男は薄暗い部屋を出ていった。


(……奴隷、馬車……縄?……お、檻?)


 ハッと我に返る。手元を見ると、重い手枷が付いている。そして、お尻が何やら冷たい。理由はすぐに分かった。鉄製の檻の中に私が座っていたからである。

 ……完全に拘束されている。


(や、ヤバくね?これ……)


 ガタガタと揺れているとこからみると、馬車に乗っているようだ。そして、これはさっき男が言っていたようにただの馬車ではないことは明らかであった。

 私は何故か一人で檻の中にいるが、周りにも数人誰かが座っている。

 しかし、みんな虚ろな目をしているのだった。 青い顔で震えている者もいれば、多分5〜6歳ぐらいでグズクズ泣いている子もいた。

 彼らの手足には鎖のように編まれた縄が縛られており、ただ大人しくしている。


(……私だけ縄じゃなくて手枷&檻って!……じゃなくて……)


 ――奴隷馬車。ここにいる人達は皆奴隷なのか。私も含めて。


 ……ヤバいヤバいヤバい。ちょっ、なにこれ?なにこの状況!!このままだと私、売られるの!?

 現状を理解してしまった。


(拉致、誘拐、監禁、拷問、拘束、奴隷!?)


 急にダラダラと冷や汗が吹き出す。

 このままでは、楽しい異世界ライフを送るどころか、死ぬより最悪な目に遭ってしまう。異世界でも地球でも、現実はいつも酷い。

 というか、まだにわかには信じられないよ、まだ。ここが異世界なんて。

 頭では確信したけど、心が追いつかない。


(……5日後に市に着くっつ言ってたよね、アイツ。じゃあ、それまでに逃げなきゃじゃん!!)


 どうしようもない目の前の出来事に頭がパニックに陥る。

 が、とにかく異世界云々よりも目の前の問題を解決しなければ。緊急事態を優先だ!!

 どうするどうする……。うん、とりあえずこの手枷を外さなきゃ!!何か、良い方法あるかな……。


(とりあえず、力入れてみるか)


 私の力、しかも体が縮んでしまった今では絶対に壊れそうもない重く固い手枷だが、やるに越したことはない。


ガシャッ


(……え)


 呆気ない。呆気な過ぎる。少し手に力を入れたら、手枷は粉々に砕けてしまった。


(……変なの)


 私が不思議がっていると、さっき泣いていた女の子が近づいてきた。


「お、お姉ちゃん。凄いね……」


「え……と、力少し入れたら勝手に壊れちゃったの」


 自分の声ではないことは明らかであった。高く鈴の鳴るような声。


「え…………?ねぇ、その耳……お姉ちゃんってやっぱり……なの?」


「え?」


 赤毛を二つ結びにしたその子は、怖ず怖ずと聞いてくる。私の耳がどうかしたんだろうか。


「どういうこと?」


「え……その、お姉ちゃんの銀色の猫耳……」


 ギンイロノネコミミ?はは、私にそんなのが付いてるわけないじゃん。付いてるわけ……わけ……。


「あ……あったあぁぁ!!」


「お、お姉ちゃん!!シッー!」


 私の頭にフサフサしたネコミミがついてる!!なにこれ!!

 もしかしたら今の叫び声で誰かくるかも知れないという不安より、驚くのが先だ。


「……ね、ねぇ!えっと……」


「セ、セーラです」


「セーラ!!なんで私にネコミミがついてるの!?」


「え、え?それは……お姉ちゃんが獣人だから……だよ?

 でも銀色の毛を持つ獣人は《天獣人》って呼ばれてて……凄い力を持ってるってお母さんに聞いたの」


「そ、その《天獣人》っていうの、もっと詳しく教えてくれない?」


 興奮が収まらず質問する私を、セーラは変な目で見てる気がした。


「え、えと……?

 《天獣人》はね、1000年に一度この世界に現れるんだって。お姉ちゃんは、銀色の耳を持ってるから……銀毛猫だよね?

 伝説によると、銀毛猫は治癒の神様の加護があって、大抵のケガなら一瞬で直せちゃうらしいよ。自分のも他人のも」


「へ、へぇ……」


「あ、あたしも、お母さんから絵本を読んでもらった時に知ったことで……本当に銀毛の獣人がいるなんて信じられない……」


 もしかして……私、凄いチートな能力が……?


「そんなに凄いの?」


「で、伝説になってるぐらいだよ。ねぇ、お姉ちゃんの名前は?」


「私?私は、らら」


「ララお姉ちゃんかぁ……ララお姉ちゃんはどうして……捕まったの?」


「麻酔銃で……」


「ふぅん……私はね……村が最近奴隷狩りにあってて……私の番が来ちゃったんだ」


「奴隷狩り?」


「知らないの?さっきお姉ちゃんが話してた男、奴隷商人だよ。何の罪もない人たちを、いきなりこんな風に連れていくの……」


「ていうことは……このままじゃ私達、奴隷一直線だよね?」


「そうだよ……でも逃げるなんて」


「おらぁっ!!てめぇら、さっきから何言ってるか知らねぇがさっきからゴチャゴチャとうっせぇぞ!!」


「はうっ……」


 さっきの男達だ。汚く下品な声で怒鳴る。

 またセーラはシクシク泣き出してしまった。

 でも、ここは異世界だ。もしかしてだけど……勝算がある。


「……ねぇセーラ、大丈夫だから泣かないで。もしかしたら、ここから逃げれるかも!」


「ひくっ……」


「……魔法って使える?」


「ま、魔法?あたしは……む、無理だよ……魔法学最高学院……《マホガク》にも通ってないし……」


(よしっ!この世界には魔法がある!)


「わ、私もしかしたら使えるかも!」


「え!?お、お姉ちゃん、魔法使えるの!?」


「使ったことはない……けど、やってみなきゃ私達このまま奴隷だよ!」


「う、うん……お姉ちゃん、頑張って」


 何だか地球にいたころとは違う……。体からみなぎるエネルギー。

 さっきも、あんな重そうな手枷をいとも簡単に壊すことが出来た。それもこの力が関係してるんであろう。


 しかし魔法を発動させるやり方はよく分からないので、私が今まで読んできたラノベか何かの真似をしてみる。


「…………」


 目を閉じて、火を頭に思い浮かべる。火が燃え立つイメージ……。

 火……火……火……火……!!


ボゥッ


「で、出来た……」


 マッチほどの火が手の先に灯る。


「え……?無詠唱で、初めてで……え……な、なんで……?」


 セーラはやけにびっくりしている。

 ……そんなに驚くことなの?自分でもビックリするぐらい、簡単に出来たよ?


「これで、セーラの縄を焼き切れば……ってあれ!?」


ボオオォォ


 炎はたちまち大きくなり、今にも馬車に燃え移りそうだった。


「あ……あ……《天獣人》は……魔力量がやっぱり普通じゃないよね…………お姉ちゃん、コントロール出来ないの……?」


「あ、あは……無理っぽい……」


「てめぇら、何してやがる!?」


「あ、あは……」


 鴨居らら、絶対絶命です。





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