表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ



 ――ここはどこだろうか。


 暗い……キツく頭に縛られた布で目隠しをされている。口にはなにか固い布が詰め込まれていて、叫ぼうにも叫べない。喉が渇いて苦しい……。

 手錠、足枷、首輪でガチガチに拘束され、身動きは全く取れない。

 監禁?いや……違う。ここは薄暗い地下なんかじゃない。もっと活気があり、沢山の人がいるみたいだ。

 耳からの情報だけで、今私が置かれている状況を把握しようとする。

 やけにうるさいところ……。

 次の瞬間、目の前が一気に明るくなった。目隠しが外されたのである。

 飛び込んできたのは、私を見つめる目、目、目……沢山の人間の目。

照らし出された私。



「「さぁ!本日の目玉商品、《伝説の天獣人》と言われる奇跡の銀毛猫です!」」



***********************



〜まだ彼女が地球にいた時の話〜



「ぐあぁっっっー!!」


 控えめに叫びながら、自転車で夜道を駆け抜ける。頬に当たる風が冷たくて気持ちいい。

 道には誰もいなくて昼とは大違いだ。……当たり前。今は深夜2時。皆寝てる。

 私は中学3年生。そして今は11月半ば。受験勉強まっしぐらな時期である。私も例外ではなく、夜遅くまで好きでもない勉強をしていた。

 では、なぜ今自転車で走っているか。


 一言で言うと、疲れてしまった。何に。この世界に。だってそうでしょ。

 学生のうちは勉強。大人になったら仕事。当たり前の日常。変わらない世界。


『立派な大人になれないよ』?


 なんかもういいっつーの。もう聞き飽きた。常に未来は決められている。大人になったって、特に変わらないんだ。何も。こんな世の中つまらない。


 そんな思いが爆発した午前2時。私は夜の世界に飛び出した。

 ――解放

 解放、されたい。そんな思い。今のところ目的地はないけど。

 眠気覚ましに飲んでいたインスタントコーヒーが切れてしまったので、なんて親をごまかす言い訳を頭の隅で考えながら、私は自転車をこぐ。



「はふぅ……」


 2キロメートルぐらい走っただろうか。私は汗を拭いながら自転車を止めた。

 少し考えて、疲れてきたから気分転換代わりに24時間営業のコンビニへ行こうと思い、くるりと方向転換した。



「いらっしゃいませー!!」


 深夜だというのにやたら元気がいい定員が私を見て挨拶する。ご苦労様だ。


(……なに買おー)


 来てしまったからには何か買わなければならない、と思ったのだがよく考えたら私はお金を持ってきてなかった。手ぶらである。勢いだけで家を飛び出したんだから仕方ない。

 適当に店内を見渡して、挙動不審にならないよう注意する。新製品は?無し。

 よく考えたらこんな時間に女の子が一人コンビニに行くってかなり危険だよなー、とか今更ながら思う。店員になんか言われないかな。

 雑誌コーナーの前に立った私はおもむろに某週間漫画を読みはじめた。



 ――約1時間半。店内に設置してある時計で分かる。私が漫画を読んでいた時間だ。

 何時に帰ろうかなー、とぼんやり思う。

 言うと、夜に家を抜け出したのは今日が初めてではない。今日のように煮詰まった時など、親が寝たことを確認してから愛車(自転車)で気分転換に夜の道を走っていた。

 どっちにせよ、親が起きる前に家に戻らなければいけない。気づかれないように。もし親が感づいたら、それは恐ろしい目に遭うだろう。

 スパルタ。私の親はそれに当て嵌まる。1に勉強、2に勉強。本当に厳し過ぎる。中3になってからは余計酷くなった。塾が週5日、家庭教師が週2日。休み?ねーよ。

 15歳、反抗期だからか、少し怒りも覚える。しかし、私はチキンなのだ。怖いという感情の方が大きい。なので、何事も無かったように戻るだけだ。

 ちっぽけな私の反抗はこれだけで終了の合図。


(あーあ……どっか他の世界にいけたらなー)


 漫画の読みすぎテレビの見すぎ。分かっている。だけど思わずにはいられない。つまるところ、現実逃避。

 眠たげな目を擦りながら、ゆっくり雑誌のページをめくっていく。


チカッ


(……?)


 今、コンビニの窓越しに何か光る物が見えた。見間違いか?いや、違う。

 その光は段々とこちらに近づいてきている。


(車だ……)


 え?車?車のヘッドライト……。

 頭ではそう理解したのだが、どうしたらいいか分からず体が固まる。そしてその後を考える暇も無かった。


(…………!!)



 次の瞬間、彼女はコンビニに突っ込んできた飲酒運転の車に轢かれ、無残な姿へと変わってしまった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ