第二部 業
妖怪がいなくとも、妄念を抱いて死んだ者はゴロゴロいる。
悪霊もまた然り。
青桐は秋津と出会えば殺し合う一族である。
しかし、現在の生業は一族に伝わる力――[氷]を操り悪霊を成仏させる事である。
かつて天皇に使えた影の一族は暗殺家業を捨て、政府を通じて怪奇現象の起こる所へ向かい、そこにいる悪霊を成仏させる仕事を請け負う様になっていた。だが、青桐は表に出ようとしない。
代々陰で生業を行うのが青桐。
どれほどの年月が過ぎようとも変わる事はない。
それは、今も。
日も暮れた山の中。青嵐は仕事用の服――と言っても私服として使用している高校の制服のスカートにブラウスだけだが――を身にまとい狭霧と一葉と共に山の中を歩いていた。
「朝までに終わらせろとの事だ」
仕事の内容を話し終えた狭霧はそれだけ付け加えた。
「今回の数は?」
敵の数で、掛かる時間は変わる。雑魚だけならの話しである。
「ざっと三十」
「だったら一人で終わるな」
この山は一応観光地でもある。秋の夜には山の樹――紅葉で色づいた木々がライトアップされるなどと、県も力を入れている。
その山の閉山はどんなに長くても一晩。短くて数時間。
その間に三十の悪霊を全て成仏させろ。
酷い時には、一時間で百の悪霊と戦った事もある。
それに比べれば、時間的には余裕がある。
しかし、余裕を持って速めに終わらせた方がよい。
「もうそろそろだ」
狭霧の案内で目的地に近付く。青嵐は二振りの愛刀の鞘を払う。
光が集まる所が見えて来た。
右手に持った一振りは順手に、
左手に持った一振りは逆手に、
二振りで十字を作る。
深く息を吐く様に呪文を詠唱すると、共に二振りの打ち刀が淡く光る。
青嵐の光の中へ躍り出た、一葉と狭霧も続く。
近付きながら光を切り捨てる青嵐の姿を見とめると、光は一箇所に集まり出した。
(一つになるか。ありがたい!)
向かう途中、更に幾つかの光を切り捨て、その中心に向かう。
その前に光が壁の様に立ちはだかった。
「邪魔だ!」
両手に[氷]の力を集中させる。二振りの打ち刀の光が強くなり、
「せやぁっ」
気合いと共に二つの白刃が壁を壊し、光は霧の様に消える。
その先――光の固まりは、人の姿を作っていた。
(何だ!?)
後数メートル。青嵐なら一息で詰められる間合いである。
だが、詰める前に光は消え、代わりにある者が出来上がった。
豪華な鎧を身にまとい抜き身の太刀が一振り握られていた。
( 武士 か!)
武士――戦場に立って戦った武士の事を指すがここでは、かつてそうであった者を中心にその形を取っているだけだ。
名高き者であれば、それ相応の強さを持つ。名も無き者でも、気を抜いていい相手ではない。
武士は先手必勝とばかりに切り掛かって来た。身体を右に開いて避ける。返しの刃は速く、逆手に持った左手の打ち刀で受ける。
順手に持った右手で切り上げる。武士は後ろに跳んで避け、再び切り掛かって来る。
「青嵐!」
「来なくていい!」
一葉の援護を断り、防戦だった青嵐はそこで始めて踏み込んだ。
右左と切り掛かり、受け止められた所で、蹴りを放つ。
ブーツの爪先で蹴ったからか、鈍い音が響き、武士は踏鞴を踏んだ。
そこを逃さず、一息で斬り捨てる。
武士は声を上げずに消え去った。
「大丈夫か?」
「見れば分かるだろう」
鞘に収める。
仕事は終わった。
(昼までゆっくりと寝よう)
その場から去る。
その三人を見送る者がいた。
だが、三人の近くで見送ったのではない。『千里鏡』と呼ばれる、見たい所を映し出す鏡で見送った。
「この娘。ちとやるのう」
見送ったのは、齢八十はとうに過ぎている老婆。
老婆は脇に控えている男に、しゃがれた声で言う。
「この娘も気を付けよ、と下の者に伝えよ」
「はっ」
男は一礼して下がる。
「緑紗 様」
男と入れ違いで、若い女が緑紗と呼ばれた老婆に近寄る。
「秋津で不穏な動きが見られました」
「秋津でじゃと?」
緑紗は鸚鵡返しに聞き返した。
「はい」
女は直に返して、手に持っていた紙に書かれた文を読み上げる。
「会話の盗聴は出来ませんでしたが、秋津の若当主が青桐の者と接触しました。接触した者ですが、先の娘です」
「ほう」
緑紗は少しだけ驚き、
(秋津の若当主も中々良い所に目を付ける)
心の中で秋津の若当主を賞賛した。
「娘の方ですが、身元の調査を現在しております」
「それはいい」
「緑紗様。今何と?」
女はいつもする復唱を忘れ、聞き返した。
「聞こえなかったのかい?」
「い、いえ。復唱します。調査は直ちに終了」
「よろしい。下がりなさい」
「はい」
音もなく女は下がる。
緑紗は再び『千里鏡』である所を見る。これまでの結果からか、慢心に似た余裕の笑みを零す。
「ふふふふ。何を考えているか知らぬが、どの道貴様等は滅ぶのだからな」
映し出されたのは、秋津の里のある所。
紅が映っていた。その紅は緑紗に気付いたのか、彼女に向かって挑発的に笑っていた。
里に戻ると、昼過ぎまで寝て、遅い昼食を食べ、日課の素振りと体力作りをし、気が向いたので団子を作りおやつに食べ、早めの夕食を食べ、現在――外を散歩している。
青嵐は外を歩いている。愛刀の携帯は忘れない。
日は落ち、三日月が薄っすらと辺りを照らす。月の光に劣る星は転々と輝いている。
歩いていると、半月前――紅と半振りに会った湖の辺に着いた。
寝転がり、濃い藍色の空を見上げる。やや紫みを帯びた夜空はいつかの夜の様だった。思考を止めると、半月前の事を思い出してしまう。
『聡明な君なら分かると思うけど。乗ってくれるかい?』
紅は確かにそうはっきりと言った。
正直、紅と手を組むのに抵抗は感じない。一時休戦で共通の敵を倒すのもまた一手。
翠石――並行世界を渡り歩く力を持った一族。それ以外に能力はない。だが、いかなる手段を行使したのかどの世界でも青桐と秋津は翠石に滅ぼされている。
その事を考えれば、手を組むのが一番よい方法だと思える。
(でも、誰もそれを認めない。そして、青桐の誇りに懸けて単体で倒す、って前に言っていた)
青桐には一時休戦と言う単語その物がない。
麻佐はそれを治そうとしているが、耳を貸す者はいない。
(それにあんな頭の固い奴らには何を言っても意味がない)
まさに馬鹿だな、と思う。
溜息も出て来ない連中の事を考える必要はない。どれほどの実力があろうが、負ける時は負けるのだ。
少し冷えて来たので、部屋に戻ろうと起き上がった。
――どれほど気を抜いていても、異変を察知してしまうのは最早呪いなのか。
「!」
青嵐は直感でその場から飛び退いた。
数秒前まで青嵐がいた所に鉄の塊が落ちる。転がると同時に、それは爆発した。爆風に煽られながらも地面を転がり、移動する。
近くの樹を背に立ち、周囲を警戒する。だが、
「・・・・・・」
――まだどこかにいるぞ。
と、青嵐が今までに培って来た直感がそう告げている。
感覚的にも数人どこかに潜んでいる。
周囲を見るが誰も、何も来ない。
「・・・・・・!」
微かにだが、どこからともなく、悲鳴が響いた。
衣切れの音の様に僅かであるその音源に向かう。
また、悲鳴が上がる。
白刃が翻り、確実に、人を仕留める。
闇に紛れて舞うそれは、さながら死に神の鎌の様である。
闇から再び白刃が姿を現す。それを確認する間などない。
気付けば自分が切られ、自分を斬った相手が誰なのかが分かる。
悲鳴を上げられる者は、おびえた者だけ。
悲鳴を上げられぬ者は、冷冷静に事実を捉え様とする者だけ。
これに差など存在しない。
少なくともこの男の前では。
「バッ――」
最後の一人。悲鳴ではなく、言葉を紡ごうとして、
「――バケモッ――」
喉を断ち切られた。
「――っ!!」
声なき悲鳴を上げ、絶命した。
青嵐がその場に着いた時にはその舞いは終わっていた。
血の海の中、自分がよく知った男が一人佇んでいた。
血振りをしていない太刀を持って。
「・・・・・・」
どんな言葉をかければ言いのかが分からない。いつもの自分の姿であろうその状態に、頭が動かない。
黙ってその男――紅を見る。しばらくして紅は振り返った。
「いたんだ・・・・・・」
振り返った紅の第一声である。
「何をしに来た?」
見慣れている惨状――その筈だった。
目の前の惨状は青嵐が今まで見て来た物よりも酷かった。
先ず、胴体が一つの物がない。手足はおろか、胴体も四つ五つに分かれている。
次に、首のない者が多い。あってもそれは百八十度逆の方に向いている。
見慣れている物を前に、ほんの一瞬、捨てた感情が出て来た。それが何か理解出来ない。
白い布で太刀の刀身を拭い、紅はにっこりと笑みを浮かべて、
「聞きたい事があってね」
近付いて来た。
紅の血まみれの姿は、いつもの自分の姿と重ならない。
「聞きたい事?」
「君の――両親の名前」
青嵐は眉を顰めた。
なぜ紅は両親――八年前に死んだ――の事を聞こうとするのか。
(何を企んでいる?)
警戒心を隠さない。
「答える必要がない」
「そう言うと思ったよ。ただの確認だ」
「かく、にん?」
紅は頷いてから続きを言う。
「青桐 雨月と青桐 夕月。これが君の両親の名かい?」
「・・・・・・」
青嵐は目を見開いて固まった。
「何で」
「?」
今度は紅が首を傾げた。
「何で、父さんと母さんの名を知っている?」
青嵐の両親は、ある事に巻き込まれて、殺された。そして、それは揉み消されて、事故死扱いとなっている。
「君の両親が死んだ青桐の内乱だけど、秋津にも知られている。あれ、内乱じゃなくて、とある人に秋津を憎ませるのが目的で行われた隠し儀式だよ。簡単に言えば人柱」
「人柱って」
昔、災害は神が怒り狂っているから起こるのだと信じられていた。神を鎮めるには、捧げ物をしなければならない。
そこで、供物として生きた物を奉げた。
人柱もその供物の一つ。
生きたままの人をそのまま水底、土中に埋める。
だが、埴輪が作られてからは人が奉げられる事は無くなった。
自分の理解力がこの時ばかりは恨めしかった。
青嵐の両親が人柱として殺された。
とある者に秋津への憎しみを抱かせる為に。
そのとある者が誰なのかは見当が付く。
否――即理解しなければならない。
今の青嵐がここまで生きていられたのだから。
そして、藜からあの時語られたあれは何を示すのか。
「嘘、なのか」
たった今、頭に浮かんだ事を捨てる。捨てなければこの八年間は何だったのか。
頭で否定しても、現実は答えを肯定し、その事実を青嵐に付きつける。
「違う」
「どうかな」
頭を振って追い払う様に否定するが、紅が言外に肯定する。どこか哀れむ様に。
現実が頭から離れない。紅は何を思ったのか、
「聞けばいいじゃないか」
「誰にだ?」
「嘘を吐いている人に」
「・・・・・・」
嘘を吐いている者。そんな者は一人しかいない。
だが、仮にもそれが真実だとすれば、
『・・・・・・何か』
この八年間の意味は、何なのか。
『・・・・・・何か――』
ただ、青嵐を生かす為の物となる。
『――死んじゃえばいいんだ!!』
あの時、そう言って切り捨てた。あいつを。
大切な物を奪われたから。
直接言われたから。
だから。
(違う違う違う違う違う違う……違う!)
否定する。それしか出来ない。
「それが仮にも」
だと言うのに、
「本当だったらどうする?」
真実を知る目の前の男は感情の欠片も無い声で続ける。
その狙いに青嵐は気付けなかった。
ほぼ無意識に、青嵐は紅の胸倉を掴んだ。紅を見ずにただ、紡がれる。
紅からすれば、想像通りの言葉だった。
「何で」
俯き、声が震え、力もない。
「どうして、言う?」
今度は紅が黙った。かける言葉が無いから黙ったのではない。必要が無いからだ。可能な限りの手間を省く事が必要なのだ。
初めて見る筈だった青嵐の姿に念の為、確かめる事にした。
(気取られる訳にもいかない。自然に言うには)
俯いていて顔は見えない。だが、声の震え方から泣いているのだろう。
背中に手を回す。
紅はやっぱり、と思った。温かい物が服を濡らして行く。
学校内の青桐青嵐しか知らない紅は青嵐の事を『感情が欠落した者』と見ていた。
威風凛々と言う言葉を体現していた完璧超人。
それが学校内での青嵐である。
それは学校外でも変わらない。
その筈である。
今の姿は、『泣く』と言う感情を出さぬ様必死になっている。
青嵐は『感情が欠落した者』ではない。
『感情を捨てなければならない』環境にいたのだ。
その環境を作ったのは――言うまでもない。
青嵐はただ『泣』いていた。
どれほど経った後か。
青嵐と紅は分かれた。
何も言わずに。
フラフラ、と薄暗い道を歩く。
何度か躓いて転びそうになった。
でも、転ばなかった。
帰る間際に湖に寄った。
水面に映った自分の顔は泣いていた。
湖の水で顔を洗い、離れに続く道を歩く。
離れに着くと、一葉とあいつが駈け寄って来た。
「青嵐!?」
あいつもいる。無視して部屋に向かおうとするが、腕を掴まれた。
「待て、その血はどうした!」
「――あ」
理解するのに数秒掛かった。いつ付いたのか血が服に着いていた。
「青嵐?」
一葉は青嵐の顔を覗き込む。血圧が低い事を入れても顔色が悪い。
「・・・・・・平気」
掴まれた腕を振り払う。
頼りない足取りで、部屋に向かう。
空は明るくなっていた。
それ以降何もなかった。
麻佐に呼び出され、外出禁止令を受けた。
それだけでなく、一ヶ月の謹慎令も出た。
一ヶ月仕事が来ないのはいいが、あの惨状を見ると、愛刀すら手に取る気が出ない。
スランプとはこう言う物なのだろうと、日課も疎かになる。
何に対してもやる気が沸かない。
日々を『ただ』過ごす。
藜はそんな青嵐を、毎日見ていた。
ただ、嘘がばれない様にと。
ばれたらどうなるか。そんな事は火を見るよりも明らかである。
(耐えられる者が耐えればいい)
藜はいつも麻佐に打ち明けようと、持ち掛けられるとそう言って断る。
せめて、青嵐が一人でいられるまで。
知らなければいい事もある。
だが、時は無情。そんなささやかな願いは打ち砕かれる。
青嵐は藜が八年前の事で嘘を吐いていると感付き始めた。
もともと頭もよく、明快だった青嵐にどこまで隠し通せるかが、この嘘の期限だった。
その期限が目の前に迫っている。
(今はまだ駄目だ)
何かを察してか、青嵐は藜を前にも増して避けている。
それはこの上なくありがたい事だが、周りに誰もいない時に聞いて来るかも知れない。
(麻佐にも言って置く必要があるな)
そう思えば善は急げ。麻佐の部屋に向かった。
「・・・・・・?」
夜更けであるにも拘らず誰かが麻佐の部屋にいる。その声を聞いて内心うめく。
(青嵐じゃねえか)
近付いて、麻佐と何を話しているのかを聞く。
「お前の両親の事か」
(げ)
青嵐は藜ではなく麻佐に話を聞こうとしたのだ。
「いつ話すか考えていたがこうも速いとはな」
(感心している場合かよ!)
心中で麻佐に突っ込みを入れる。
「両親は内乱に巻き込まれて、死んだ。でも、どうして藜は私に『助けられなかった自分が殺った様な物だ』と言ったのか」
(まずい。それ以上は)
ここで割って入るか。考える間に話しは続く。
「藜様との約束であったが――」
(言うな、言うな!)
声は届かない。
障子に手を掛け、気付けば入っていた。部屋には、寝巻き姿の麻佐と仕事着の青嵐がいた。
「話しがあるんだが」
出来るだけ自然に話す。
「藜様。もう、無理では?」
その台詞で、青嵐は真実が分かったのだろう。やっぱりと小さく呟く。
「青嵐」
麻佐は、最後の一声を掛ける。
「な、お、おい!」
「黙っていて下さい!」
「っ」
何も出来ない。それ以上先を言ったら、青嵐は――!
水の奔流が止められない様に、もう、嘘の効力はなくなってしまった。
「お前が今思っている事は正しい」
「・・・・・・」
「あの時、前当主は秋津を滅亡させる事だけを考えていた。そこで目を付けられたのが、お前だ。止め様としたが、出来なかった。お前の両親を惨殺したのは前当主。藜様は、そこを割って入り、仇を討ってくれたのだ」
「でもあの時、直接」
「両親を急に亡くし、お前は覚えていない――いや、忘れさせたのか。あの時お前は薬を飲まされ、自我のほとんどを失っていた。そこに両親の死が入り、お前は『生きる』と言う事を放棄し始めていた。桐の診断によれば、薬はどうにかなる。だが、放棄した事は理由もなしに取り消せない。藜様はその理由を作ってくれたのだ。楽しい事があるでは駄目。ならば正反対の感情でのお前を怒らせる理由が必要となる。そう、藜様を恨むと言う。どうやってそこに持って行かせるか。そんな物は簡単だった。幻術を使い、お前にその像を刷り込ませ、藜様が直接言う。それだけでよかった。藜様・・・・・・。本当にありがとうございました」
青嵐を見る、泣いていた。あの青嵐が。この八年間、感情が欠落し、笑う事すらなくなった青嵐が。
「つまり・・・・・・」
涙を拭こうともせずに、青嵐は藜を見上げた。
「嘘・・・・・・吐いていたんだ」
藜は顔を背け、麻佐は肩の荷が下りたかの様に深く息を吐く。
「・・・・・・青嵐」
掛ける言葉もなく、そこで止まる。
「っ!」
その動きは今までの中で一番速かった。開いたままの入り口にいる藜を押し退け、そのまま全力で走る。
「青嵐!」
「藜様」
追い駆けようとする藜を麻佐は止める。
「今度こそ――」
「分かっている」
終わりに着く前に藜は返す。青嵐はどこに行ったのだろうか。
(行きそうな所を当たってみるか)
先ずは部屋と、当たりを付け、走り出す。
青嵐の部屋に張っておいた札を同じ物を取り出す。淡く光っていた。それは、青嵐が部屋に寄ったことを示している。
(繰り返さない)
繰り返してはならない、あの時の過ちを。
あの時のツケを、運よく拾ったこの機会に精算する為に。
「!」
一瞬であるが感じた違和感。
「若」
紅は老人に簡単に返し指示を出す。
「位置は?」
「少々お待ちを」
背後で術が発動する。
老人は手刀で印を切り、目を閉じる。数秒後に返答があった。
「・・・・・・分かりました」
気配だけで続きを促す。
「青桐の里の方です」
「青桐・・・・・・」
紅は青桐の里の方を見る。
(あれからまだ十日しか経っていないのに)
もしやと思った紅は、
「侵入者の元に行く数人集めろ」
「は」
老人は直に下がり、人を集めに行く。
紅も直に動きやすい服に着替える。
「ふぅ」
溜息が漏れた。仰げば子望月が辺りを照らしている。
「まったく。何をどうしたらこうなる」
口では文句を言っているが、
これは望んでいた事でもある。
(とは言え、予想よりも速い長めの猶予期間だな)
縁側に出る。老人が数人を連れて来た。
「若、準備は整いました」
「先行は任せる」
「は」
老人を先行に紅は数人を引き連れ、侵入者の元に向かった。
結果は上々。
残るは仕掛けるだけだ。
ここまで読みいただきありがとうございます。作者の天原です。
本当は昨日投稿をと思っていたのですが、風呂上りに爆睡→目が覚めると午前二時過ぎ、と言う状態でした。
あまり時間はかからないと思っていたら全体的に書き直しをしているので予想よりも時間がかかってしまいました。
土日にどこまで投稿できるかが勝負です。
よろしければ次回もお読みください。




