終話 後
世界が崩壊したあの日を最後に、藜――いや、ラスファルとは会える事は無かった。世界の姿を知り、その外で複数の勢力が争いを続けている事を知った。
数万年もの間、紅と共に数多の世界を渡り歩き、戦い続けた。
途中の数年間、休暇と言う形で学校に通っていた。
だが、それも次に起こる第三次神話戦争の準備に人脈を繋ぐ事が目的だった為、ある程度の戦いはあった。
その上、前哨戦が行われた。
この前哨戦で受けた傷を癒すには時間がかかる為、紅とは別れ一人、フラフラと彷徨う様に世界を渡り歩いた。
風が吹き、桜の花が上弦の月夜に舞い散る。
街の中でも一際高いビルの屋上に青嵐は立っていた。強く吹き付ける風に髪を遊ばせ、眼下の街並みを見る。
到着して直ぐに根源樹に接触したので、この世界の状況は手に取る様に分かる。それでも、実際に見て触れる方が記憶に残りやすい。
ビルの屋上から飛び降りる。
数多の戦いを駆け抜ける最中に覚えた飛行の魔道を使い、人気の無いビルの裏に膝を曲げる事なく着地する。
「?」
微かにくぐもった声が聞こえて来た。
(何事だ?)
声の方向に向かって歩く。複数の人の気配を感じる。建物の影から覗き見れば、数人の大人が暴れている誰かを抑え付けている。
「ふぅ」
背後からも人の気配を感じ、振り向き様に回し蹴りを放つ。
「ぐがっ」
ビルの裏で暗かったが、骨が砕ける確かな感触がクリーンヒットを告げている。湿った音を響かせて、蹴りを受けた者は盛大な音を立てて建物の壁に埋まった。
「誰だ!?」
突如響いた音に驚いたのだろう。直ぐ傍にいた数人がやって来る。青嵐は壁に埋まった――近くで見て分かった事だが――男の首根っこを掴んで引き剥がし、即席の盾代わりに進行方向に投げ捨てる。
複数の閃光が瞬き、男の身体を貫く。男にとっての幸運は気絶していた時に急所を撃ち抜かれて逝けた事だろう。
愛剣の一振りを抜く。一歩大きく踏み込んで半円を描く様に振るう。
腕ごと斬り飛ばされても、先の男の様に悲鳴こそ上げなかったが、その顔は驚愕の色で染まっていた。
更に踏み込んですれ違い様に数人斬り捨てる。
斬り捨てた者の先には、更に数人の男と、
(子供?)
手足を縛られた少女がいた。意識はある様で、縛られても尚もがいていた。
「誰だ! 公安局の人間か!?」
悲鳴に近い問いかけに、青嵐は答えがない。
(何が起きているか分からんが、そこの子供に聞くか)
問いを無視して、歩き出す。
その姿は、生きた死神にも見えただろう。
剣を二度振るい、それだけで事は済んだ。彼らが持っていた銃は引き金を引く事なく地に落ちる。
もがいている少女の戒めを解き、剣を仕舞った。
「大丈夫か?」
「ん、うん」
年齢的には十一、二歳の子供だった。何が起きているのか分からないが、場所を変えた方が良いだろう。
「喋るな。掴まっていろ」
何も考えずに首を突っ込んだので、細かい事情は知らない。
再び先ほどまでいたビルの屋上にまで舞い戻る。
さて、何から聞くべきなのだろうか。
この出会いは、私に何をもたらすのだろう。
天原です。
ついに、狭間の狭間終了となります。
ここまでお読みくださった方ありがとうございます。
一応、アフターストーリーとなる話はありますが、そちらでは狭間で出てきたキャラ(紅と藜)はサブ扱いです。
青嵐(多少丸くなった?)も一応メイン扱いですが、出番は減るでしょう。
現在進行形で書いているので、書きあがり次第投稿を考えています。
では、改めまして。
狭間の狭間、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
作者自身、素人小説が無事に投稿できて嬉しいです。
続編を投稿した際にはお読みいただけると大変嬉しいです。
またの機会にお会いしましょう。
本当にありがとうございました。




