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序章

素人が書いた作品ですので誤字脱字はご容赦ください。

 遥か昔から、『妖怪』と呼ばれる物達がいた。

 だが、それを見たと言う者はいない。

 少なくともこれは『その世界』の話しである。


 並行世界―――それは、『別の結果で成り立つ別の世界』の事を指す。

 合わせ鏡の様に無限の可能性を持つ別世界。違う概念下に存在する世界。

 その別の世界では、『妖怪』は実在する。

 また、別の世界では、『人の手で創られた妖怪』が実在する。


 この世界は、『妖怪と呼ばれるものが存在しない』世界である。

 しかし、『妖怪と呼ばれるものが存在しない』その代わりに、特定の者にはある力が扱える様になった。

 それが、侵蝕の力――[冥]である。

 そして、陰陽と言う言葉がある様に、対となる力が存在した。

 それは、裁きの力――[氷]と呼ばれている。

 この力を持ち、現代にまで受け継いで来たさる二つの一族は当然の様に対立していた。

 

 今宵もまた、その二つの一族は殺し合いをしていた。


 最初は吐き気がした血の臭いにも、もう慣れてしまった。

 慣れと言う物は人間が持つ、恐ろしい環境適合能力である。

 そう、人間の血を浴び、

 命乞いの言葉を聞き、

 けなされる言葉を聞くのも、

 もう、慣れてしまった。

 

「死ねぇぇ!」

 匕首を持った体格のいい男が二振りの打ち刀を持った少女に襲い掛かる。

 しかし、少女は淀みない体捌きで避け、優雅な動きで匕首を持った男を仕留める。

 その二振りの打ち刀の動きは見惚れるほどに優雅であるが、

 見届ける事の出来ない速さの太刀捌きだった。

 しかし、小柄な少女の人形の様に端正な顔立ちだが、変わる事も無かった。

「・・・・・・」

(今ので、終わりか?)

 周りを見回すと、生きている人間が誰一人としていない。

 誰もいない事を確認してから二振りの打ち刀を鞘に収め、携帯用の竹刀袋に入れる。

 少女は血で濡れた、どこかの学校の制服のポケットから携帯電話を取り出した。

 短縮ダイヤルで、電話を掛ける。

「青嵐。秋津の奴らを返り討ちにした。死体の処理を頼む。場所は――」

 青嵐と名乗った少女は、場所を伝えると電話を切り、その場から離れた。

 空はすでに白み始めている。血まみれの服装では目立つので急いで自邸に戻らなくてはならない。


 今日は二月二十八日。

 いや、既に日付が変わっているので、三月一日である。

 日が昇る前に家に着き、学校に行く支度をしなければならない。

 学校と言っても、今日は卒業式である。

 青嵐は今、高校三年生。つまり今日で学校を卒業する。

 学校を卒業したら、今よりも沢山の人間を殺す事になる。

 それを嫌だとは思わない、

 それを悲しいとも思わない、

 これはただの作業――家業なのだ。

 世を揺るがす者を影で殺す、元暗殺家系にて、遥か昔から、天皇に仕える影の一族――それが、青桐の者として生まれた宿命なのだ。


 ある山奥の里は日が昇る前だと言うのに慌しかった。

「お館様!」

 黒いスーツを着込んだ男は、着流し格好で縁側に座り、下弦の月を眺めていた少年と呼ぶに相応しい容貌と青年以上の貫禄を持つやや色白な男に駆け寄った。

 男はうるさそうに駆け寄って来た男を一瞥し、月にまた視線を戻した。

 若造としか思えない男に一瞥を貰っただけで、男は震え上がった。

「静かに。用件は?」

 お館様と呼ばれた男は口を開いて先を促した。その声は男性としての声色は高く、顔と着流し格好で女にも見える。

「は、はい! 未明、青桐の者にこちらの手勢が――」

「返り討ちにあったのか?」

「面目なく・・・・・・」

 男はうなだ項垂れるが、男はそんな事を気にしない。

傍にいつまでもいる男に問う。

「それだけか?」

「いえ、お館様から仰せ付かった者の調査が終わりました」

 小脇に抱えていたバインダーを男に差し出す。

 女の様に細い指で掴み、バインダーに挟まれた用紙に目を通す。

 それには、あるどこかの学校の制服を着た少女の写真と、数文が書かれていた。

「よりにもよってあいつが、あのあかざ藜の生まれ変わりか」

「お館様、この娘を調べて何を?」

「使うから調べさせたんだろう」

 何を今更、と言った口調で返す。添えられている文章に目を通す。

(面白い。あの藜を嫌っている・・・・・・か)

 口の端に笑みが浮かぶ。

 それは、妖花の綻びの様であり、

 不吉な予感を抱かせる笑みだった。


『本日で諸君らはこの学校を卒業し、自らが選んだ道を歩む。この学校を諸君達が・・・・・・』

 長ったらしい校長先生の祝辞。それを聞く生徒の中に青嵐の姿があった。

(いつまで聞いていればいいんだか・・・・・・)

 正直な所、卒業書を貰い、後輩からの祝辞だけでいい。

(退屈)

 パイプ椅子の背もたれに寄り掛かり、目を閉じる。

 頭に浮かぶのは未明の事である。

 いくら敵対している一族の者が一人でうろついているから、殺そう何て軽率過ぎる。

 あそこで何をしていたのだろうか。その答えは分からない。

 遭遇しただけで、なぜあんな行動をとったのか? 理解しにくい。

(時間を掛けて考えるか)

 進学する気はないので、明日から時間は大量にある。

 そんな事を考えている内に卒業式は進み、終わった。


 ホームルームが終わり、荷物をまとめる。自分以外で荷物をまとめている者はいない。

「青桐さんもう帰るの?」

「家の用事があるから」

 女子生徒の質問にいつもの台詞で答える。

「もう十分ぐらい、待ってくれない?」

 他のクラスメートも皆、青嵐を見る。

「・・・・・・」

 今日の予定を考える。午後は自主修行だけ。

「十分程度なら構わないけど」

「本当に!」

「だったらこっち」

 別の女子生徒に手を引かれて、輪の中に入る。

「はい、ジュースを配って」「何があるのー?」「コーラだけ」「ええ――」「文句を言うなー」「コーラだけとは言っても人数分をここまで運ぶのはきつかったんだぞ」「運んでないくせに何を言っていんだよ」「か弱い乙女だもん。力仕事は男でしょ」「お前のどこがか弱いんだよ」「か弱いって言うのは青桐さんみたいな可憐な人の事を言うんだぞ」「基準が青桐さん何て高過ぎー」「あたしじゃないのー」「いーや、青桐さんだ」「そうだそうだ」

「・・・・・・」

 慌しく、流れる会話。それを眺めるのも今日で最後だ。

「青桐さんはどこの大学に行くの?」

 男子生徒の何気ない質問。これも今日で。

「家の仕事を手伝わないとだから、行かないよ」

「嘘―」「あんなに成績良いのに?」「青桐さんなら東大目指せるだろ」

 口々に驚きの声を上げるクラスメート。

 彼らを眺めるのも今日で終わり。

「私の分も楽しんでね」

 用意していた棒読み台詞を言う。それだけで足りる。

「分かったー」「任しとけ!」「馬鹿が張り切っているー」「何だとー」

 口喧嘩を始めるクラスメート達。その喧騒を眺める。

「はい、止め止め! せーの、で行くよー! せーの!」


『かんぱ~~~~い!!』


 喉が潰れるほどの大きな声を上げ、配られたペットボトルのジュースをグラスの用に、互いに合わせ合う。

 青嵐に我先にと合わせる者(ほとんど男子)と合わせた後、キャップを外してコーラを飲む。

 その間もクラスメートたちを眺める。


 最後の一時は何の変わりもなく終わった。


(今日で何もかもが終わり)

 自分は明日にでも死ぬかもしれない。そんな立場になる。

 だが、悲しいとか辛いといった感情は浮かんでこない。


 そう、これは終わりではなくこれは始まり。

 背負う運命からは逃れられず、

 立ち向かうしかない。

 その終わりは、己の死だけ。

 私は今日から、

 人を沢山殺して行くのだから――


 始めまして天原重音あまはらかざねです。素人が書いた小説をここまでお読み下さりありがとうございます。

 高校文芸部時代に可能ならば出したかった小説を全体的に書き直して投稿した作品になります。

 友人以外の方からの感想が欲しくて投稿したので、読まれた方はぜひ感想をお書きください。なお、書き終えた作品なので書き直しが終わり次第投稿して行く予定です。

 

 さて、青桐青嵐に始まり彼女で終わる物語は始まったばかりです。彼女が辿る道は誰が決めるのか。

 次回は簡単な人物説明と用語説明と第一章を続けて投稿します。 

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