表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小鳥が遊ぶ庭  作者: 桜光
高木舞編
18/33

第5章 委員会の罠

話し合いはテンポ良く進み、大体の方向性が決まった。

いつもの話し合いとは違って多種多様な意見が出て、様々な話し合いを経た結果。

なんと我がクラスの劇は純愛物をやる事になった。

と言ってもあまりにベタな物や万人受けしそうにない物を避ける為、名作『ロミオとジュリエット』のようなイメージで、感動を誘いつつも部分的にシリアスな面を加え、あまりに直球過ぎる内容は避けつつと言った感じでオリジナル脚本作成に入る事になった。

脚本を担当する事になったのは愛川あいかわさん。読書が趣味でいろいろな恋愛小説を読んでいる為、知識が豊富ということで推薦され、快く引き受けてくれた。大雑把ではあるものの大まかな方向性は固まっているので、夏休み前に完成出来そうとの事だった。

主演男優は澪士。単純に顔が良いという事で、即決だった。本人は受付係でもやりたかったようだが、澪士はそこらのアイドルよりイケメンだ。当日は澪士目当てでたくさんの女子生徒が集まる事だろう。…でも腐男子ステータスが露呈してるからなぁ。

主演女優は新田にったさん。クラスのとある女子グループのリーダー的存在で、容姿もなかなか。性格はほどほどに良い。凛程ではないにしろ、それなりに活発な子なので、この劇では上手くやってくれるだろう。

後は他の役を担当する人を数名決め、とりあえず話し合いは終了。他は脚本が完成しないとどうしようもない。光は一応役者の中に含まれたが、どんな役になるかは不明だ。役者という名目だけ決まった人については愛川さんが役を割り振って脚本を進めてくれる。後は不足したら追加で出せば良い。

クラスの半分以上がまだ仕事も決まっていない状況だが、ひとまず僕と高木は遊撃と言う事になった。他にやらなくちゃいけない仕事が多数回ってくるようなので、クラス内で特定の役職には就かない。ただし、手の足りない仕事なんかに率先して手を貸す、そんな役目だ。恐らく衣装作りや設営なんかをやらされるだろう。


というわけで放課後。代表委員会に出席する。場所は大講義室。

各クラスの代表二名と、有志の実行委員が大勢。それから文化祭当日に出店する部活動もそれぞれ代表者が一名もしくは二名。更に次期生徒会役員も揃って、この場には約七十人も集まっている。大講義室が広くて良かったね。

夏を目前にしてこの人数だが、冷房が入っているので居心地は悪くない。まだ六月だけど、冷房が入ってなかったら死ぬわ。

隣に座っている高木は、恐らくこう言った会議には慣れてるだろう。去年から学級委員だったみたいだし。

「皆さん、お静かにお願いします。これから文化祭代表委員会を開始致します」

場を仕切ったのは次期生徒会副会長の田代たしろ光男みつお。最近あまり話してないが、選挙の際にはそれなりに親しくなった奴である。だがメールアドレスはお互い知らない、その程度の仲だ。

「まず、最初に配布した資料をご覧ください、これからの予定の説明をします」

で、その後は田代が延々と今後の進め方について語った。

僕はその話を聞いてなかった。


委員会は四十五分程で終了した。

寝たりはしなかったものの、昨日勉強した化学の内容を脳内で復習したり、今後の百合ゲープランを立てていたり。後は文化祭の劇の事をちょっと考えたり。澪士と光にどれだけ演技力が備わってるのかな、とか。

田代は真面目な所があるからこういう話は面白くないんだよなぁ。傍にいた澪士は次期会長なのに何もしてなかったし、聞かなくて良いかなって思った。高木が聞いてるだろうし。

委員会終了後、澪士が僕の所にやって来た。

「…お前、話聞いてなかっただろ?」

「流石親友。お見通しだな」

「お前は話聞いてない時、いつも目線が上の方を彷徨うからな。一年以上一緒にいればそれぐらい分かる」

そう言えば、何回か澪士の話聞き流した事あったっけ。それで澪士は僕の癖を掴んだのか。

「…小鳥遊、あんた話聞いてなくて大丈夫だったの?」

軽蔑するような視線を送ってくる高木。

「あぁ、いざとなったらお前が教えてくれるだろうから」

「悪いけど、あんたに教える気は無いから」

そう言って席を立つ高木。あれ、思った以上に反応が冷たい。

やばい、ちょっとやり過ぎたか。ここで怒らせると非常にまずい気がする。

「ま、待つんだ高木!確かに僕が悪かった!澪士に聞いておきます!」

「おい小鳥遊。俺に聞くのは構わないがそれで高木の怒りが収まるとは思えんぞ」

「…別に私は怒ってないよ。ただ呆れただけ。それじゃ、お疲れ」

そのまま目を合わせようとすらせずに大講義室から出て行く高木。

あいつ、真面目にやらない奴は嫌いなんだな…。もう少し早めに気付いておくんだった。今後一緒に仕事していくのに、このままじゃちょっとなぁ。

「小鳥遊、ちゃんと謝っておけよ?高木は根に持つようなタイプじゃ無さそうだし、誠意見せれば許してもらえると思うぞ」

「あぁ、それだけは欠かさずにやんないとやばそうだな。というわけで委員会の内容教えてくれ」

先の事が心配であったが、とにかく今は出来る事からやらないと。まずは委員会の内容を知る事だ。


翌日。実はもう放課後なのだが、結局今日は高木と一度も会話できなかった。まず目を合わせようかと思ったのだが、高木は僕の事が見えてないんじゃないかというぐらいのスルーっぷりで結局話せずに終わってしまった。

放課後、一人教室に残る。澪士も光も生徒会や部活が忙しく、今日も一人で帰る事になりそうだった。

昨日の一件のせいで今日一日もやもやしたままだったから、気疲れした。

…帰るか。これ以上一人で残っていてもどうしようもない。鞄を持って席を立った。すると、教室の扉が開かれた。

「おぉ、小鳥遊。ちょうど良い所に」

担任だった。しまった、面倒事に巻き込まれる予感しかしない。

「…どうしました?」

「ちょっとさぁ、届けてほしい物があるんだよね」

「届け物?誰に?」

「高木」

…この人狙ったのか?よりにもよってこんな時に高木に届け物だと?

「…高木、もう帰ったみたいですよ。明日でも良いんじゃ?」

「いやいや、どうしても今日までに渡したい資料なんだよ。実は二週間前から持ってたんだけど渡すの忘れてた」

何であんたの尻拭いを僕がしないといけないんだよ。ってかそんな前から持ってたなら何で今日まで渡さなかったんだよ。

「…高木に渡すって言っても、どうすれば?」

「あぁ、大丈夫。住所教える。そんな遠くないから」

そんな簡単に個人情報教えちゃうのかよ。この人教師として何か欠けてるんじゃないのかな。

担任から資料が入ってるという大きめの封筒と、高木の住所が書かれたメモをもらう。メモ用意してたって事はこの人、誰かに行かせる気満々だったんだな。自分で行けよ。

「じゃ、よろしくー」

そう言って消え去る担任。あぁ、もう本当に面倒事に巻き込まれたな。

でも高木の家に行くって事は、謝るチャンスをもらえたって考え方もできるか。ってかそう思わないとやってられん。

僕は学校を出て高木の家に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ