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小鳥が遊ぶ庭  作者: 桜光
高木舞編
15/33

第2章 イオン化傾向の語呂合わせ

高木との打ち合わせはすぐに終わった。何ていうか本当に軽い物で、確認程度で済んだ。

大体の方向性は決まったがまだ役割分担等が不十分で、役者や脚本家ぐらいは固めておきたいという方向ぐらいで、他には特に何も無し。

結果、放課後は僕の勉強がメインになってしまう形となった。

「別に私があんたの勉強に付き合うのは良いんだけど、何教えれば良いの?」

全部、って言ったら殺されるだろうなぁ。ぶっちゃけ今回点数取った所は勘とか、まぐればっか。分からない所だらけだったんだよね。

「とにかく、まずは基礎的な所を固めておきたいかな」

無難な回答をして、教科書を開く。高木は僕の前の席に座っていた所を、僕の隣の光の座席に移る。

…放課後、教室で、隣に座り合って勉強会?一見勝ち組のようだが、相手が高木だしなぁ。美少女とは言え、恋愛感情とかそういうのは何もないし。別にドキドキしたりはしない。だが、妙に緊張する。

「じゃ、まずは酸化還元反応を頼もうか」

「そんな簡単な所からで良いの?もっと大事な所あるんじゃない?」

高木は見下すというよりかは、それが当然であるかのように無表情で淡々と語る。…いや、僕はここも全然分からないんだが。

「ほら、基本的な所をもう一度確認だよ。ちゃんと段階踏んでいかないと」

「…あんたは私にどこまで協力させる気なの?」

教えてもらえるなら一から十まで教わりたいわ。でも、時間も限られてるし少し絞っていくしかないかなぁ。

「ま、とにかくまずはイオン化傾向について教えてくださると嬉しいです」

「…うーん、そこは教えるまでもない気がするんだけど、良いか」

というわけで高木先生の授業が始まった。


「うちの化学教師、確かに教え方は上手じゃないんだよね。イオン化傾向なんかは語呂合わせで覚えると簡単なのに」

確かに去年まではよく語呂合わせとか聞いてた気がする。今年の化学の先生はあまり語呂合わせで教えてくれない。今回の点数下落はそれが原因の一つかもしれない。

何か良い覚え方は無いものか、と思考しても自分だけだと結局浮かばずに終わってしまう。

「例えば、このページで挙げられてる金属の単体があるでしょ。これらはただそれだけを覚えようとすると面倒だから、簡単に語呂合わせを作ると覚え易いんじゃないかな」

「これ、自分で作ろうと思ったら作れる気がしなくて断念したんだけど」

「ネットで調べればいくらでも出てくるよ?強引なのばっかだけど。そもそも語呂合わせで無理に綺麗な文章作ろうとする時点で負けだから」

高木の自論に過ぎないような気もしたが、的を射ている気がしなくもない。確かに僕は無駄にまとまった文章を作ろうとして失敗していた。

「じゃ小鳥遊、ここに載ってる分だけで良いから、試しにイオン化傾向の語呂合わせ、大きい順で良いから作ってみてよ」

…そんな事しなくてもお前が教えてくれれば済む話じゃね?でも余計な事は言わないでおこう。

ここに載ってる金属は、と。大きい順に挙げてみよう。

リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、鉛、水素、銅、水銀、銀、白金、金。

水素は金属では無いが、陽イオンになる事からイオン化傾向に含まれる事が一般的らしい。これは僕でも分かる常識だ。

さて、どうした物か。

まず最初は…Li、K、Ca、Na。

「…りかちゃんかわいいな」

「……誰?」

高木の突っ込みは無視して次へ行こう。最初の四つクリア。

次は…Mg、Al、Znで作ってみるか。

「まじありえん」

「…りかちゃんの可愛さが?」

『りかちゃん』を引っ張る高木を無視して次へ行こう。ここまで完璧だから。

次…Fe、Ni、Sn、Pb

「てつにすんな」

「鉄にするの?りかちゃんどんな状況?」

未だに『りかちゃん』を引きずってる高木。別にりかちゃんを鉄にするとかそんな話じゃないだろう。とにかくここまでパーフェクト。

そろそろ厳しくなってきたな。次は水素の後にCu、Hg、Agと続く。

「すいどうはぐあぐ」

「…苦しくなってきたね」

そうそう、自分で作ろうとすると終盤だれるんだよ、これ。はぐあぐ。ちょっとレベル下がったな。

最後。Pt、Au。

「PTA」

「…その発想はなかったわ」

とにかく、無事完成した。


り(Li)かちゃん(K)かわいい(Ca)な(Na)まじ(Mg)あり(Al)えん(Zn)てつ(Fe)に(Ni)すん(Sn)な(Pb)すい(水素)どう(Cu)はぐ(Hg)あぐ(Ag)PT(Pt)A(Au)


「どう?」

「…笑える要素も無いし微妙で面白くないね」

高木には受け入れてもらえなかったようだ。僕もイマイチだと思う。うーむ、食い付きは良かったと思ったんだけど。

「じゃ高木、お前はなんて覚えてるの?」

「え、私イオン化傾向は語呂合わせで覚えてないよ。これこのまんまで復習重ねてたら覚えたから」

「ここに来てそんな事言うの!?イオン化傾向は語呂合わせだと覚え易いって言ってたじゃん!」

「それは一般論でしょ。私はこれ語呂合わせで覚えてるなんて一言も言ってない」

…確かにそうだった。そうだけど何か腑に落ちない。

うん、今更だけど、高木と一緒に勉強しても自分の為にならないんじゃないかぁ。

でも、なんかこんな勉強の進め方も悪くは無いかなって、そんな気もした。

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