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小鳥が遊ぶ庭  作者: 桜光
高木舞編
14/33

第1章 放課後のお誘い

「…やっべーやっちまった…」

思わず溜息が零れる。

化学の中間テストの結果が返って来た。点数欄を見て絶望する。


三十九点。

小鳥遊一真、初の赤点を取る。


よりにもよって一点足りないとはなぁ…。うちの学校の赤点ラインは四十点未満。つまり、欠点者の中で僕は一位だって事だ!全然嬉しくねぇよ。

しかも化学教師が欠点者は追試だとかほざきおった。六割取れなかったら取るまで何度でも追試やるらしい。例え夏休みに入っても。

「小鳥遊君…落ち込む気持ちも分かるけど、今は次に向けて頑張る事が大事じゃないのかな?」

休み時間、隣の席の星野ほしのこうから励まされる。四月に転校してきた童顔な美少年。なんだかんだでもう親友と呼べる間柄だ。未だに謎が多いけど。

励まされたけど、何か逆に追い打ち喰らった気分である。

やっと中間テスト終わったと思ったら追試かよ…。

他の教科も赤点は回避したものの微妙なのばっかだったしなぁ。何故か英語だけ突出して良かった気がするが、他は全部平均レベルだった。順位が大きく落ちるのは目に見えてる。

これも、テスト期間中に百合ゲームに熱中したのが原因か。

一か月程前、とある事をきっかけに僕は百合というジャンルを気に入ってしまった。

ついつい全年齢対象版百合ゲームを二本購入してしまい、テスト期間中に打ち込んでしまった。コンプリートしたが得られた物は百合に対する想いが上昇しただけ。ま、対価としては十分か。

とは言っても流石に赤点だと後悔する。テスト終わってから新たにプレイする百合ゲーを絞ってた所だったのに。計画がぶち壊しだ。

「…小鳥遊、俺も協力するから、次頑張れば良い」

親友でテライケメンな城戸きど澪士れいじも、わざわざ僕の席までやってきて激励の言葉を述べる。うん、励まされると逆に重い事もあるって身に染みたわ。

このイケメン、実はBL大好きで(ただし澪士自身がホモではないのが重要)次期生徒会長という面白いステータスが最近加わった。一か月前は澪士の騒動のせいで大変な思いをした。あれ、あの騒ぎがなければ赤点取る事なかったんじゃね?

澪士のBL好きを理解しようとしたが僕は男同士の絡みに耐えかねて即断念し、代わりに百合に目覚めてしまった。

…言い訳にするつもりはないが、これがなければ空いた時間を化学の勉強に少しぐらい回せたんじゃないのかな。

でも過ぎた事はしょうがない。もう受け入れて次の目標に移るか。化学なら、全体的に成績の良い澪士や光もよく理解してるだろう。少なくとも僕よりは。

「じゃあ、澪士、光。早速今日の放課後、化学の勉強に付き合ってくれないか?」

「あぁ、悪い。俺は生徒会の引き継ぎ関係の仕事あるから今日は無理だ」

「ごめん、僕も新聞部の活動忙しいんだ」

…親友二人は予想に反して非情であった。


そうなったら仕方ない。僕は部活に所属していない暇人だし、さっさと家に帰って一人で勉強しよう。

なんだかんだ言って、僕は勉強に打ち込む事は苦手ではない。やる気になれば大丈夫さ。

放課後、掃除当番を終わらせてさっさと帰ろうと支度をしていると、とある人物に話しかけられた。

「小鳥遊、ちょっと良い?」

高木舞。このクラスの学級委員長である。ちょっと、っていうかかなり毒舌な所もあるが根はそれなりに良い奴である。ちなみに髪の長さは肩にかかる程度で目は大きく、かなりの美少女である。

「今からでも、文化祭の話をちょっとしたいんだけど良い?」

…厄介な仕事が入ってきてしまった。

今回、文化祭の代表委員に選ばれてしまった僕は学級委員である高木と一緒にクラスをまとめる事になった。恐らくその最初の打ち合わせだろう。

「悪い、高木。今僕は勉強したくてうずうずしてるんだ」

「は?あんたが勉強?そんな適当な言い訳が通用するとでも思ってるの?」

予想通りキツイ言葉を浴びせられる。まぁ、高木じゃなくても、僕がそんな事言っても信じてもらえないのは明白か。人望の無さに悲しくなる。

「いや、マジだよ。化学で赤点取ったから今日から勉強に打ち込みたいんだ」

そして、百合ゲーに打ち込みたいんだ。

「化学で赤点?あの程度の問題で?それこそ信じられないんだけど」

…この女、化学がどれだけできるか知らないが、僕の事見下し過ぎじゃないかな?

「…そういうお前は化学何点だったんだよ?」

「九十三点」

この差は何だろう。僕と比べると、十の位の数字と一の位の数字が逆になってるんだぜ。マジでそろそろ泣きたくなってきた。

「…とにかく、やる気のあるうちにやっちゃいたいんだ。マジで今日じゃないと駄目?」

「明日の放課後には第一回実行委員会の打ち合わせがあるの。あんたと私で確認しておきたい事がいくつかあるの。だから今日が良い」

だったらもう少し早めに言っておけよ。

「その実行委員の打ち合わせには僕も出るの?」

「当たり前でしょ。有志で集められた実行委員の他に、学級委員と代表委員も全員出席。あんたに関わらなかったら呼び止める訳ないでしょ」

何と言う事だ。近頃本当に面倒な事に巻き込まれるな、僕。明日も居残りって事かよ。

「…じゃあ、分かった。話し合いが終わったら、あんたの化学の勉強に付き合ってあげる。それでどう?」

「え、マジで?」

それは予想外だった。高木が僕に勉強を教えてくれる?そんなキャラじゃないだろう、お前。そこまでして打ち合わせしたいの?とか思ったがあまり言い過ぎて怒らせたくないので封じ込めておく。

「あんたに嘘言ってどうするの。ただし、打ち合わせが先だからね」

「構わないです。よろしくお願いします」

僕が三十九点だったテストで九十三点だった高木とやるなら、教え方に問題が無ければの話にもなるが、かなり効率の良い勉強になるじゃないか。

というわけで、僕は高木の誘いに乗り、まずは教室で打ち合わせをする事にした。

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