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小鳥が遊ぶ庭  作者: 桜光
城戸澪士編
12/33

エピローグ

六月。本格的な梅雨入りはまだ先のようで、最近は晴天が続いている。

今は七時間目の授業時間。週一度訪れるLHRロングホームルームの時間である。

何かと出張の多いこのクラスの担任は今日も不在であり、この二年六組はいつぞやのように律義に文化祭の出し物決めの会議をしていた。

と言っても、今回は一か月前程余裕はない。実は、今日の放課後が企画書の提出期限なのである。

残念ながらうちのクラスはかなり前からこれまで何度か話し合いを重ねたものの、結局決まらなかった。

案は一応出るんだが、これが良い!と全員一致で通る物が無かったのだ。

話し合いを進める高木も流石に徐々に焦り始めているように見える。このままの雰囲気だと、適当に絞って決めちゃう勢いだ。

高木はランダムに指名し始めた。

「城戸、何かある?」

最初に指名したのは澪士。

「うーん、そうだな…」

今や残念ながらBL好きってステータスが定着してしまった澪士。さて、何と答える?

「男子だけで接客する、女性向けゲームユーザーが大喜びしそうな喫茶店は――」

「ごめん、突っ込み所満載過ぎるからちょっと黙ってて。まず、うちの男子層じゃ誰にも受け入れてもらえないから」

…澪士は今後、そのキャラで通していくつもりなのだろうか。吹っ切れ過ぎてオープンになって、逆にもう手に負えないキャラになりつつある気がする。そして高木、今さらっと酷い事言ったよね。

そんなBL会長(次期)に複雑な感情を抱きつつ、話し合いは相変わらずのローテンポで進む。

「じゃ、小鳥遊。もう一度だけチャンスをあげる。何かある?」

ここで僕に訊くのかよ。お前、一か月前の話し合いで僕の案けなしまくってたじゃねぇか。いつの間にか多国籍料理店なんて僕の案は消滅してるし。

少しだけ考える。


『一真は劇とかに興味ある?』


何故かこの前の凛との会話を思い出した。

劇、か。この学校で、クラスごとの出店で劇ってのは珍しいパターンかもしれない。よし。

「劇、とかは?」

僕がそう言うと、クラスの空気が変わったように感じられた。

「…劇?あんた本気で劇に目覚める気なの?」

相変わらずの高木の毒舌をスルーしつつ、僕は自分の案を推す。

「クラスの出し物で劇って珍しいじゃん?他のクラスに劣らない出し物が出来る気がするんだ。時間もあるし」

今までにないぐらいクラスが同調し始めた。自分の意見が受け入れてもらえる感動、初めて感じたかもしれん。

「…なるほど。演劇部の公演があるだろうけど、クラスの出店としてはそれなりに面白いのができるかもしれない。反対意見ある人いる?」

教室を見回しても、高木の問いかけに手を挙げる人はいない。

「んじゃ逆に賛成の人は?」

すると全員が手を挙げた。おぉ、これは想定外だった。

「じゃ、出し物は劇って事で良い?」

『良いでーす』

というわけで、我が二年六組は文化祭で劇をする事になった。


「小鳥遊君、面白い案出してきたね」

隣の光に話しかけられる。

うむ、光みたいな美少年なら主役級を任せても良いんじゃないかな、演技力は知らんけど。

澪士もいるし、うちのクラスには男女共にまぁまぁのルックスの奴が多い。意外といけるかもしれん。さっき高木は男子の事けなした気がするが、聞かなかった事にしよう。

「はっはっは、僕の事、見直しただろう、光」

「うん、見直したよ!」

…お前、僕の事どう思ってたんだ?


「で、うちのクラスの代表委員兼責任者を決めなくちゃいけないんだけど…」

高木が次の議題に移した。そんなのも決めるのか。

「学級委員はこれ兼任できないのね。私にも仕事はそれなりに回ってくるんだけど、誰かやってくれる人いない?」

無論、そんなめんどくさそうな役職に誰も立候補などしない。

すると、そんな空気を思わぬ形で打ち破る女子がいた。

「小鳥遊君で良いんじゃない?」

…おい、今僕を推薦した奴は誰だ?ちょっと声の主が判別できなかったぞ。

「そうだよ、小鳥遊君の案じゃん」

「小鳥遊なら任せられるよ!」

「俺も小鳥遊が良いと思う!」

こんな時に限って抜群のチームワークを発揮する我がクラス。…虐めかよ。

もう完全にクラスは僕に任せる勢いだ。正直、断りたい。校内新聞の執筆は快く引き受けられても、これは遠慮したい。面倒だし、この流れで押しつけられるのが気に食わない。

「…小鳥遊、もうあんたに拒否権はないわ。任されなさい」

高木が目を細めて僕に指図する。僕の人権は、無いに等しいんだね。

「…まぁ、私も一緒に仕事する形になるんだから、仕事はそこまで多くないんじゃないかな。というわけで、良い?」

これでノーと言えば反感買うだろうなぁ。

仕方ない。覚悟を決めるか。

「…分かったよ、代表委員やるわ」

言った瞬間クラス中から大拍手。

「頑張ってね、小鳥遊君!」

隣の光が笑顔で激励してくる。なんかこの美少年に対して物凄く腹立ってきた。

はぁ、推薦人が終わったかと思えば今度は文化祭クラス代表委員か。しかも高木と一緒に仕事?前途多難だな。


でも、散々文句を浮かべつつも、引き受けた後は何故かそこまで嫌な気はしなかった。近頃の僕の心境変化、恐るべし。

よし、やるからには文化祭の出し物人気投票は必ず二年六組を一位にしてやろうじゃないか。

本編の後書き欄に書かせて頂くのはこれが初めてになります。

『小鳥が遊ぶ庭』をここまで書かせて頂きました、桜光です。正直適当に付けた名前なので読み方は『さくらひかり』でも『おうこう』でもどちらでも良い気はするんですが、一応『さくらひかり』で通しておこうと思います。

『小鳥が遊ぶ庭』を読んで頂き、ありがとうございました。非常にスローペースな更新でしたが、それなりに楽しみながら書かせて頂きました。


さて、今回で一段落して完結、という形にはなるんですが、本編自体はまだ続きます。

そもそも私が本当に書きたかった物語はこれ以降の話になります。なんとも長い前置きだった事か。

ここまでは『城戸澪士編』として、小鳥遊一真と城戸澪士の関係を描きました。

これからは『高木舞編』として、小鳥遊一真と高木舞の関係を描こうと思います。

今回のエピローグは『城戸澪士編』の締め括りと共に、『高木舞編』に繋がる役割も果たしていたのです。まぁ『城戸澪士編』に関しては第9章で終わってる気もしますが。


クラスの学級委員長であり、澪士に関するトラブルで一真と少し距離の縮まった舞。

どうやら次は恋愛小説のようになりそうです。私が恋愛小説…書いた事も無いジャンルに挑戦するのは少々気が退けますが、未知の領域に突入です。頑張ります。


自分で言うのもなんですが、澪士編よりも舞編の方が断然面白くなる予感がするので、是非ご期待頂ければな、と。

シリアスな話題中心だった澪士編ですが、舞編ではそれを減らし、コミカルでギャグ要素も多く含めた展開にして読み易くしていきたいと思います。

一話一話の文章量も分割して減らして、気軽に読めるようにもするつもりです。

星野光、栗原凛、上条聖香、城戸由愛、雪村菜々と言った澪士編で既に登場したキャラはもちろん、新キャラも数人登場します。田代光男に関しては、出ないかもしれません。

既出キャラも澪士編では影が薄かった部分をより濃くしていきたいと思います。特に菜々のように何の為に登場したのか分からないキャラも掘り下げていけたらなぁ、と。あと至る所にある伏線の回収も。

澪士編を飛ばして舞編からでも読めるように、序盤で簡単なキャラ紹介も含めながら再スタート致します。

もし気分が乗れば舞編以降も『星野光編』、『栗原凛編』なんかで続けていけたらなぁ、なんて勝手に思ってたりもします。


そんなこんなで、まだまだ頑張って書き続けます。

これからも、『小鳥が遊ぶ庭』をよろしくお願い致します。

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