98 アンナの意地
〇宿場町・教会裏
「ベアトリーチェ様!そのクロスをお借りできますか!?」
ミアの切迫した頼みに、ベアトリーチェは迷わず銀のクロスを託した。
「お借りします!」
クロスを核としてミアが展開した防御結界は、聖なる輝きを増幅させ、夜の闇を黄金色に塗り替えた。
「む!この結界は……」
そのあまりの神々しさに、魔族ゼニアも一歩後退し、表情を険しくする。
しかし、結界の内側では深刻な事態が続いている。
ミアは、ベアトリーチェにしがみついて離れないアンナを強引に引き剥がすと、
その両肩を強く掴んで、顔を至近距離まで寄せる。
「アンナちゃん! いつまで泣いているつもりですか!!
あなたの魔法が頼りなんです!しっかりしてください!!」
「うっ、うう……だって、足が……」
鼻水を垂らし、恐怖でガチガチと歯の根も合わないアンナ。
ミアは、生まれてこの方、初めて人を煽るという行為を決断する。
「いつもの、どこから湧いてくるかわからない根拠のない謎の自信はどうしたんです!?
8位の実力はその程度ですか!?私は昔、毎回1位でした!最後数年はダメでしたが……
ですが、アンナちゃんよりずっと格上です!!」
……生まれてこの方、他人を煽るような行為など、一度もやったことのないミアである。
煽っているのか、なんなのかよくわからない状況に……
しかし、その「下手くそな煽り」が、逆にアンナのプライドを逆撫でした。
アンナの瞳に、恐怖を焼き払うような怒りの火が灯る。
「な、なんであんたに、そんなこと言われなきゃいけないのよ!!
あんたなんか、100位以下まで落ちぶれて、毎日泣いてただけの落ちこぼれでしょうが!!」
「わ、私、毎日泣いてました!?」
「あと!人を煽るなんてあんたには無理なんだからやめなさい!
煽りってのはね、こうやるのよ!!」
アンナはミアからクロスを奪い取ると、バリアの外へ踏み出した。
「ちょっと!そこの魔族!!あんた達の弱点は、私たち人間を下に見過ぎていることよ!
私が今から唱える魔法、堂々と受ける度胸はあるかしら!?」
ゼニアはニヤニヤと笑い、手のひらに魔力を溜めます。
「それが煽りのつもり? 残念、唱え終わる前に今すぐ殺しちゃうわね」
「うぇ!?ちょ、ちょっと待って!
あんた、私にビビってるの!?人間風情の魔法を食らうのが怖いから、先に潰そうってわけ!?魔族のくせに!!
巫女姫様に会うことがあったら、『あいつは腰抜けだった』ってチクってやるんだから!!」
その言葉に、ゼニアの手から魔力の光がふっと消えた。
「……うるさい小娘だこと。
しかし、捕らえて連れて行く命令ではあるし……
万が一、こいつらと巫女姫様が会ってしまっても厄介ね……」
ゼニアはクイクイを手招きした。
「その挑発、乗ってあげましょう。あなたの女神魔法、受けてあげるわ。
……ただし、その魔法が終わった時が、あなたたちの最期よ」
「よーし、それでこそバカな魔族ね!」
さっきまでの涙はどこへやら、アンナは不敵にニヤリと笑った。
ゼニアは結界の中に留まるミアに視線を向ける。
「そっちのお嬢さんは、その子に任せちゃっていいの?
あなたの方がまだマシなようだけど。
……あの子の魔法が終わったら、アナタも一緒にやっちゃうわよ?」
「私は、アンナさんを信じていますから!」
ミアの瞳に迷いは無い。
「上等!!」
アンナが深く息を吸い込み、第三神界女神魔法の詠唱を開始した。
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