97 砕かれる防御壁魔法! 魔族ゼニア!
〇宿場町・教会裏
「あははは!こんな面白い防御魔法を使える人間がいるなんてね!王国の連中よりよっぽど頑丈じゃない!」
ミアがカレンと共に戦った、あの時に敵の魔族から感じた死のニオイ…
それと、全く同じものを感じるミア。
「私の名前は、ゼニア。黙って言うことを聞いてくれたら、痛めつけないであげるわ」
「…………」
ミアはその誘いを無視して、防御壁の中からゼニアと名乗る魔族をにらみつける。
その態度を見たゼニアは、にんまりと生の無い笑いを見せる。
「いいねぇ…… なら、痛めつけて連れて行くしかないというわけだ!」
その顔をみて、アンナが震えあがる。
ゼニアは、ミアとアンナの方に飛びかかってきて、嬉々としてミアの防御壁を連続で殴りつける。
一撃ごとに大気が震え、衝撃波が二人の髪を激しくなびかせた。
「アンナちゃん!何やってるんですか!早く麻痺魔法を!」
必死に壁を維持するミアが叫ぶが、アンナの反応は芳しくない。
「わ、わか……わかってるん……だけ、ど……足が……震えて……呪文も……うまく唱えられない……」
ミアはこれまで、王子の裏切りや追放、魔族との戦いなど、数々の苦難を乗り越え、精神を研ぎ澄ませてきた。
しかし、アンナはあくまで平和な学園の中で勉強だけしてきたエリート。
本物の魔族が放つ、臓物を掴まれるような殺気を前にして、心が折れかけてしまっていた。
「大丈夫です!!アンナさんの攻撃なら、あの魔族の動きを封じることができます!
それまで私の魔法で守りますから、早く……!」
ミアが言いかけたその時、ピシッ! という不吉な音が響いた。
絶対防御を誇ったミアの光の壁も、魔族の熾烈な連続攻撃に、ついに亀裂が入ってしまったのだ。
「きゃあああ!」
恐怖が限界を超え、アンナはその場にへたり込み、泣き出してしまった。
(まずい!防御壁魔法のかけなおしは、間に合わない!!)
ミアも打つ手がない。
このままでは、魔族の餌食になるのも時間の問題である
「さあ!観念しな!」
ゼニアが勝ち誇り、最後の一撃を振りかぶる。
「そこまでです!」
その声と共に現れたのは、ベアトリーチェだった。
「なに?おばさんは女神魔法も使えないみたいだし用はないわ。今お取込み中なの」
ゼニアはベアトリーチェを一瞥だにせず、ミアのバリアを粉砕しようと拳を突き出す。
「そうはさせません!」
ベアトリーチェが、手にしていた銀のクロスをゼニアへ向け、一喝する。
瞬間、深夜の裏庭が昼間のような白光に包まれた。
「ぐあああああ!!?」
ただの光ではない。
それは魔族にとって毒にも等しい、純粋な聖気の放出。
ゼニアはその輝きに焼かれ、のたうち回っている。
「邪なるものよ!ここから立ち去りなさい!!」
ベアトリーチェがクロスを掲げると、光の勢いはさらに増し、聖気の衝撃がゼニアを直撃した。
「ば、バカなぁーーーー!!」
ゼニアの体が、まるで紙屑のように後方へと吹き飛ばされた。
ミアは即座に防御魔法を解き、腰を抜かしているアンナの手を引いてベアトリーチェの元へ駆け寄った。
「ベアトリーチェ様!」
「うわああああん!!」
アンナはベアトリーチェの修道服にしがみつき、子供のように声を上げて泣きじゃくった。
「二人とも、無事でよかったわ。
このクロスの力があれば、そうそうの敵にはやられないわ……」
ベアトリーチェは二人を安心させるように言ったが、その視線は吹き飛んだゼニアから外れていない。
「そう簡単にはやられない、だと?」
土煙の向こうから、低く、愉悦に満ちた声が響く。
フラリ、とゼニアが起き上がってくる。
肌の数箇所が焼けて煤けているが、その瞳の輝きは先ほどよりも増していた。
「……並の魔族なら消滅させる力があるのだけれど。この魔族は相当な力を持っているようね……」
ベアトリーチェの額に冷や汗が伝う。
ゼニアは首の骨をボキボキとならすと、余裕の笑みを浮かべて一歩ずつ近づいてきました。
「痛かったわよ、おばさん。
簡単にやられないなら、じっくり料理してあげようかしら」
そう言って、嬉しそうに笑うゼニア。
絶体絶命。
三人の前に、容赦することを知らない、強力な魔族が立ち塞がった。
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