89 ジークハルト、安らぎの終着点へ……
〇 バルカ城・禁書庫
「でも、カレンさんが現実に存在しているわけだから……
魔王と聖女エレン様は結ばれているってことよね。
だとしたら、勇者様のハニートラップ作戦は、結果的に成功しちゃったってこと……?」
ミアは禁書庫の冷たい空気の中で、一人考え込んだ。
手記によれば、ジークハルトはエレンを魔王へのハニートラップに使われることから、守るためにパーティを離脱したはず。
それなのに、なぜカレンという魔王と聖女エレンの間の娘が生まれたのか。
考えれば考えるほど、パズルのピースは食い違い、答えは深い闇の中へと消えていく。
その後、ミアはわずかな望みを託して、この国で最大の規模を誇る「バルカ国立帝国中央図書館」にも足を運んだ。
しかし、そこにあるのは一般に流布された美化された英雄譚ばかり。
王宮の禁書庫以上の資料は見当たらなかった。
「はぁ…… 結局、資料を追うだけじゃ限界があるのかな……」
疲れ果てたミアは、図書館の休憩室にある椅子に座った。
ふと、テーブルの上に置かれた一冊の雑誌が目に留まる。
『楽しいバルカ旅行! ここに行きたい名所10選!』
「私も、普通に旅行でこの国に来られたら、どんなに楽しかっただろう……」
自嘲気味に呟きながら、パラパラと雑誌をめくってみる。
地方のお祭り。美しい景色。美味しそうな特産品の紹介。
その中に、ある見開きページがミアの目を釘付けにした。
バルカ東地区ならココ!
伝説の英雄ジークハルト、安らぎの終着点
【ジークハルト大墓地】
英雄ジークハルトがその生涯を終えたとされる伝説の土地です。
静かな丘に広がる墓所には、歴史の真実が眠っているかもしれません。
さらに、晩年のジークハルトが愛したとされる名湯、
『ジークハルト温泉』もすぐそば! 絶景と癒やしのひとときを!
「……温泉、行こうかな……」
王国を追放されてからずっと、戦いと逃亡の連続。
温かい湯船に浸かり、頭にタオルを乗せて「はわぁ~」と、なごんでいる自分の姿を思い浮かべてしまう。
「……いやいやいや! 温泉じゃなくて!
ジークハルト様の『最後の地』に行けば、手記の続き……
四巻に関わる何かが、石碑とかに残っているかもしれない。
そう、これは調査よ! うん!!」
ミアは自分にそう言い聞かせると、勢いよく椅子から立ち上がった。




