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かつて神童と呼ばれた89位聖女。ハニトラ勇者伝説の真実を暴いて見せます!  作者: けけりーな
第六章 崖っぷち聖女ですが、帝国で勇者伝承の真実に迫ります!
88/99

88 ハニトラ作戦、絶対阻止剣士

〇バルカ城・禁書庫


アンナ・ガストンの協力と皇帝の粋な計らいによって、ミアはバルカ王宮の奥深く、一般のシスターでは一生立ち入ることのできない禁書庫へと足を踏み入れた。


カビと古い紙の匂いが漂う部屋、ミアはお目当ての本を見つけた。


『ジークハルト私録・第三巻』


そこには、王国が語り継ぐ「光の勇者物語」とはかけ離れた、泥沼の敗走記録が綴られているのだった。


●月✕日

魔王との戦いから撤退する。

我ながら情けない話だが、魔王の力は圧倒的だ。

これまでの幹部たちとはレベルが違う。


●月✕日

これで撤退は何度目だろうか。

魔王はわざと我々を逃がしている……

恐怖で頭がおかしくなりそうだ。


「あの勇者様のパーティが、手も足も出なかった……?」

ミアの指が震える。教科書では「破竹の勢いで魔王城を攻略した」と書かれていた歴史が、ミアの中で音を立てて崩れていく。


●月✕日

聖女エレンに致命傷が無いのが救いだ。

彼女の回復があればどんな怪我でも治る。

それどころか、彼女は蘇生魔法すら使いこなす。


「そ、蘇生魔法ですって……!?」


ミアは思わず声を上げた。現代の女神教において、蘇生は人の域を超えた、第五神界魔法以上にあると言われる、失われた神の奇跡。

聖女エレンがそれほどまでの力を持っていたことに、驚きを隠せなかった。


●月✕日

僧侶マリアが、私に対してすがるような目を向けるようになってきた。

しかし、今は聖女エレンが気になる。

彼女こそが我がパーティの要であり、世界を照らす光なのだ。


「えっと……なんか、この人が鈍感なのも良くない気がする……」


しかし、手記の内容はここから、様相がおかしくなっていく。


●月✕日

勇者殿がおかしなことを言い出した。

魔王を倒す最高の作戦を思いついたと。

「ハニートラップ作戦」というものらしい。

勇者殿のことだから、最高の作戦を考えてくれたのだろう。


「いよいよ出てきたわ、この最低な作戦名……」


●月✕日

勇者殿の言うことはめちゃくちゃだ!

魔王が聖女エレンへの攻撃を躊躇しているから、魔王は彼女に惚れているはずだと!?

馬鹿な、彼女は最後衛だ。攻撃が当たりにくいのは当然だろう。

魔物がヒトに惚れることなどあるものか!!


●月✕日

彼女を魔王の元に送り、油断させる作戦!

そんなもの通用するわけがない。彼女を死地に送るようなものだ。

私は勇者殿に断固反対した!


●月✕日

僧侶マリアまでもが、勇者殿のハニートラップ作戦に同意し始めた。

もう、彼らを仲間とは思えん!

私は聖女エレンを最後まで守り抜く。

私は彼女を連れて、パーティを抜け出したのだ。


第四巻へ続く



「……え?」


ミアはしばらく、手記の最後のページを見つめたまま固まってしまう。


「マーサ様から聞いていた話とも少し違う……」


マーサの語る伝説では「勇者たちは力を合わせ、ハニトラ作戦の犠牲となった聖女の祈りとともに魔王を封印した……」だったはず。


しかし、この手記が真実なら、決戦を前にパーティは「勇者と僧侶」対「剣士と聖女」に分裂し、ジークハルトはエレンを連れて逃亡してしまっている。


「だとしたら、魔王はどうやって封印されたの? パーティを抜けたエレン様はどうなったの?」


ミアは必死に周囲の棚を探したが、ここには第四巻は存在しないのだった。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


よろしければ、次のお話もまたよろしくお願いいたします。

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