86 バルカの覇王
〇バルカ城・謁見の間
「なぜ、こんなことに……」
バルカ帝国の壮麗な王の間。磨き上げられた大理石の床に、ミアは冷や汗を流しながら片膝をついている。
左右には、ガストン軍団長と、どこか神妙な面持ちのアンナが同じく膝をつき控えている。
城下町に着いたらアンナとお別れして、一人でゆっくり手記の続きを探すはずだった。
しかし、ガストン軍団長の「陛下への報告義務」という強引な誘いと、
アンナの「いいじゃない、タダで王宮に入れるんだし!」という能天気な押しに負け、
気づけば皇帝の御前まで連行(?)されてしまっていたミア。
押しに弱いのは、リリィに無理やり聖女にされたあの頃から全く変わっていない。
「シスター・ミィよ、面を上げられい。
この度のそなたの活躍、誠に見事。このバルカ、心から礼を言う」
玉座に座るのは、精悍な顔立ちと、いざとなれば自ら剣を取って戦場に立ちそうな屈強な体躯を持つ男。柔和だった王国の国王とは対照的な、まさに「覇王」という言葉が相応しい人物だった。
「もったいないお言葉にございます。私はシスターとして、当然の振る舞いをしたまででございます」
「まさに、無償の慈悲というわけか…… 流石は、大陸に響く女神教のシスターであるな。
だが、そなたがシスターの矜持で、我々の宝である兵を救ってくれたように、我々にも戦士の誇りがある。
恩を仇で返すわけにはいかん。何か褒美を取らせたい。望みを述べてみよ!」
褒美と言われても、金貨や名誉を望むミアではない。
彼女は少し考え、旅の目的を口にした。
「では…… 勇者伝承に関する古い記録や、ジークハルト様の手記などがあれば、閲覧させていただけませんでしょうか?」
「ほう、剣神ジークハルトの手記か。それならば王宮の禁書庫にいくつか所蔵があるはずだ。
よかろう、そなたには特別に自由な閲覧を許可しよう」
「ありがとうございます!」
ミアは胸を高鳴らせた。
バサラークで読んだジークハルトの手記の第二巻の続き。エレンの記録。
それらの真相に近づけるかもしれないのだ。
「……しかし。それだけでは対価としてはあまりに弱いな」
皇帝が顎髭に触れ、さらなる褒美を考えようとしたその時。
外から入ってきた大臣風の男が、切迫した様子で玉座に近づいて行く。
一枚の紙を皇帝に差し出し、耳元で何かを囁いている。
皇帝の鋭い眼光が、その紙とミアの顔を交互に往復する。
「……」
「???」
ミアは何が起きたのか分からず、ただキョトンとして、首をかしげることしかできなかった……
最後まで読んでいただいてありがとうございます!
今回から、ミアのセリフ表記の三点リーダーを「・・・」から「……」に統一して、リニューアルしていきます。
(以前のお話も少しずつ直していきます(;´・ω・))
よろしければ、次のお話もよろしくお願いいたします!




