85 バルカ帝都、到着
〇バルカ山脈・中腹
山を下りながら、アンナは両手を頭の後ろで組み、相変わらずのマイペースさで身の上話を始めた。
「アタシ、元々バルカの貴族の出なのよねー」
「そうだったのですね。どうりで華があるというか・・・」
「そ。大教会からも熱烈なスカウトが来てたんだけどさ。
アタシ一人っ子でしょ? そのうち結婚して旦那と家を継がなきゃいけないし、聖女になれないのならって事で、地元に帰ってきたってわけ」
意外な家庭事情にミアが感心していると、アンナは唇を尖らせて続ける。
「で、地元で何か仕事しよっかなーって探してたら、お城で回復役の募集をしててね。『お城の回復役なら、お姫様みたいにキラキラ仕事できるかな?』って思ったわけよ。シスター・プリンセス的な?」
「は、はぁ・・・」
「そしたら、あんたもさっきの見たでしょ!?
人使い荒いのなんのって!毎日へとへとで帰宅よ。騙された気分だわ!
お給料倍はもらわないと割に合わないわよ全く!」
ぷりぷりと怒るアンナの様子に、ミアは思わずくすくすと笑い声を漏らした。
「今日はなぜ、こんな山の上で、みなさん魔獣と戦っていたんですか?」
「最近、この山から、ちょいちょい魔獣が悪さしに、城下町の近くまで来てたのよね。
街道で商人が襲われて、荷物を奪われたり…とかね」
「・・・なるほど、それでその元凶を絶ちに来ていたと・・・」
「そゆ事。被害が結構でかくなってきてて、上も見て見ぬふりできなくなってきてたのよ。
さっきのでかい鳥みたいなやつは倒したんだし、これで奴らも当面は大人しくなるでしょ。
ま、アンタのおかげで、街の人たちも安心して暮らせるって事よ。」
そう言ってミアを見て笑うアンナ。
「そ、そんな事は・・・」
照れて俯くミアだが、
アンナが急にミアの肩を組み、顔を至近距離まで近づけてきた。
「で? あんたはなんで『ミィ』なんて偽名使って巡礼なんかしてんのよ?
どう考えても一人でバルカ山脈越えとか、訳ありすぎるでしょ」
周囲に聞こえないよう、アンナの耳元でミアもこっそりと打ち明ける。
「・・・私、王国を追放された身ですよね? だから、実名で堂々と歩けなくて」
「…聖女剥奪、王国追放の噂ってマジだったの?」
アンナが驚いた直後に声を潜めて、ミアの顔を見る。
バルカ帝国まで届いていたそのニュースは、彼女にとっては単なるゴシップ程度にしか聞こえていなかったようだ。
「まぁ・・・はい」
「あちゃー… ま、あんたの実力じゃ元々、聖女なんて無理だっただろうし、くよくよしてても仕方ないわよ。
えーっと、卒業順位899位だっけ?」
ポンポンと励ますように肩を叩くアンナ。
「89位ですっ! そもそも900人も生徒いなかったですよね!?」
必死のツッコミを入れるミアに、アンナは「ケラケラ!」と笑っている。
その明るいアンナの笑顔を見ると、ミアはなぜか、温かい気持ちになってしまうのだった。
数日の行軍を経て、ついに隊列は山脈の麓に広がる城下町へと到着した。
視界が開けた瞬間、ミアは足を止めて息をのむ。
「・・・すごい!」
そこには、王国では見たこともない景色が広がっていた。
石造りの中にも鉄骨を組み合わせたモダンな建築物。
夜でも街を明るく照らすであろう、複雑な回路が組み込まれた魔道具の街灯。
商店には、魔法をエネルギー源として動く「魔道具」と呼ばれる利便性の高い道具が所狭しと並んでいる。
王国の、どこか古風で伝統を重んじる空気とは正反対の、技術と活気に満ちた「異国」の光景。
「ようこそ、バルカ帝国へ! 」
アンナが自慢げに胸を張る横で、ミアもまた、活気溢れるこの街の光景に胸を躍らせるのだった。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!!
累計3000PVを突破しました!ヾ(*´∀`*)ノ
これも、いつも読んでくださる皆様のおかげ、めっちゃ励みになります!
よろしければ、次のお話もよろしくお願いいたします。




