84 ポジティブオーラ
〇バルカ大山脈・中腹
「ぎゃおおおおおーーん!」
ケラウノスの甲高い断末魔。
ついに動かなくなってしまう。
「よし一!一気に押し込めーー!!」
兵士たちの怒涛の勢いに圧され、残った魔獣たちは命からがら山の深奥へと逃げ去っていった。
静まり返った戦場に、製紙たちの勝利を祝う雄叫びがこだまする。
ミアは軽く目眩を覚える。
やはり、エレナのバフなしの戦闘はキツかったようだ。が、何とか戦えた。
ミアはそのまま、アンナの専用テントへと招かれる。
「あー、しんど… 悪かったわね、急に巻き込んじゃって。アンタ急に無茶するからビビるわ。
でも、アンタのおかげで本当に助かったわ」
アンナは、シスターなどの女性用装備である軽装の甲冑を外し、ベッドにどかっと腰を下ろした。
「いえ、だけど第三神界魔法だなんて・・・相変わらずですね、アンナちゃんは」
「相変わらず?」
不服そうに眉を寄せるアンナに、ミアはくすりと笑う。
「学生時代の実技テストの時も、いつも大技ばかり使ってたイメージがありますから」
「…そうだっけ?」
アンナの顔にも笑顔がこぼれる。
二人の間に流れる空気は、数年前の教室のそれへと巻き戻っていた。
「でも、『ミィ』って何よその偽名。超ウケるんだけど。
昔、飼っても無い野良猫にエサやってたばあさんが近所にいたけど、
そのばあさんが、勝手に名前つけて呼んでる猫に、ミィってのがいたわ」
「そのエピソード、今必要です・・・?」
ミアがジト目で返すと、アンナは楽しそうに笑い転げた。
「アンタ、変わったわね。
学生時代はさ、『なんで私は第一神界魔法しか使えないの…』とか、いつもぶつぶつ言ってて、近づきがたいネガティブオーラ放ってたでしょ?」
「わ、私そこまででした!? 軽くショックなんですけど・・・」
「あはは! でも、今はなんか良い感じにポジティブオーラが出てるわよ」
アンナの率直な言葉に、ミアは自分の内面の変化を自覚する。
旅の出会いと経験が、かつての劣等感を「今の自分にできることをやる」という誇りに変えていたのだった
そこへ、テントの外から重厚な声が響く。
「シスター・アンナ、よろしいか?」
「どうぞー」
入ってきたのは、全身を重厚な甲冑で固めた、体格の良い男…
この隊の隊長を務めるガストンだった。
「シスター・ミィ。まずはこの度のご助力、心からの感謝を。
貴女の加護のおかげで、我が隊は最小限の犠牲で勝利を収めることができた」
「いえ、私はシスターとして当然のことをしたまでですから・・・」
ガストン隊長は深々と頭を下げる。
さらにテントの外からも兵士たちの声が聞こえてきた。
「実際、ミィちゃんが来てくれてから戦況が変わったもんな!」
「女神様降臨かと思ったぜ!俺、女神教じゃないけど」
「ちょ、ちょっと! 戦況を変えたのはアタシの第三神界魔法でしょ!?
あんなのガシガシ使える女神魔法使いなんて、世界に数人しかいないレベルなんだからね!わかってんの!?」
アンナが頬を膨らませて抗議すると、兵士たちの間からドッと笑いが起きた。
しかし、ガストンだけは、ミアの異質な力を見抜いていた。
(確かに、シスター・アンナのように第三神界女神魔法を使いこなせるシスターなど、世界に数えるほどしかいないだろう…
しかし、そのシスター・アンナをも凌ぐ実戦での活躍と、やけに戦闘慣れしているオーラは…?
シスター・アンナと学友だったようだが… このミィと言うシスター、一体何者なのだ?)
「…ところでシスター・ミィ、なぜこのような危険な山中に?」
「あ、私は巡礼の旅をしているんです。山を越えて、バルカ帝国の城下町へ行く途中でした」
「ええっ!? 巡礼ルート、過酷すぎない…!?」
とアンナが目を丸くするが、ガストン隊長は真剣な面持ちで提案してきた。
「それならば、我々が責任を持って城下町までお送りいたしましょう。
このあたりには、魔獣の残党もまだまだおりますし」
「アテがないなら、一緒に来なさいよ。楽しいわよ?」
と、アンナも気楽に誘ってくれる。
「・・・では、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」
ミアが承諾した瞬間、テントの外から「イヤッホー!!」という兵士たちの歓喜の叫びが響き渡った。
どうやら、この殺伐とした軍隊にとって、可憐で腕のいい『ミィちゃん』の同行は、何よりの勝利報酬だったようだ。
こうしてミアは、バルカ軍とかつての同期アンナと共にバルカ帝都に向かうことになるのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!
先ほど間違って投稿してしまったものと、内容は変わっておりません。
お話が急に飛んで、混乱させてしまい申し訳ございませんでした。
現在は、シナリオの順番を整えておりますので、そのまま読んでいただければと思います。
それでは次のお話も、よろしければよろしくお願いいたします。




