76 泥の中に咲く白百合
〇バサラークの街・教会の裏庭
夜の帳が下りた教会の陰で、ミアは信じがたい光景を目撃していた。
憧れの完璧なシスター、クラリス。
彼女が教会の裏手で密会していたのは、あの日、検問所でミアを辱めた下劣な検問官だった。
なぜ、彼女があんな男と?
その疑問の答えは、最悪の形で目撃することとなってしまった。
男が鎧を脱ぎ捨て、汚れた手で、震えるクラリスの肩を乱暴に剥き出しにした瞬間、ミアは血の気が引いて行くのを感じた…
「よーしよし、いい子だ。
女神のシスター様の、その澄ました顔がどう崩れるか、見ものだなぁ、おい!」
「…これで…あの子たちに、手は出さないでもらえるんですよね? ……はぁっ……」
クラリスの苦悶に満ちた声が、湿った夜の空気を震わせる。
なんと、彼女は身を挺して守っていたのだ…
まだ幼く、女神の加護も持たない見習いシスターたちを守っていたのだった。
バサラークのような辺境に派遣される兵は、バルカ帝国の正規兵になれなかった、落ちぶれた、ならず者かぶれだ。
そんな者たちが取り仕切り、腐敗した警備兵という暴力から、教会の少女たちを遠ざける唯一の手段として、彼女は自分と言う存在を差し出していたのだ。
「まあなぁ… でも、そろそろお前にも飽きてきたんだよ。
そうだ!この前この街に来た、巡礼の修道女がいただろ!」
「!!」
「なんだ?この街の修道女の格好をさせれば、あの女が立ち去るまで、
俺たちにバレずにやり過ごせるとでも思っていたのかぁ?
バカな女だ。あんな上玉が混ざって気づかないわけないだろ!
アイツを回せよ。アイツならお前も、守り通す義理はねえだろ? へへへ…」
クラリスの頭を押さえつけながら、下品な言葉を投げかける検問官。
「な……何を馬鹿げたことを!? そんなこと、できるわけがないでしょう!
彼女は穢れを知りません。あなた方のような者が、触れていい子ではないわ!! んあああっ!」
「うるっせぇ!オラ!!」
鈍い衝撃音と共に、クラリスの悲鳴が上がります。男が彼女を乱暴に組み伏せ、あざ笑う声が夜の静寂を切り裂く。
その瞬間、その様子を見ていたミアの頭の中で、何かが弾けた。
これまでの人生で感じたことのない怒り…
心の底から燃え上がるような激しい憤怒!
「そこまでです……!! その方から離れなさいっ!!」
夜の闇を切り裂くような叫び。
ミアは物陰から飛び出していた。
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