75 完璧すぎる先輩シスター
数日間、ミアはバサラークの教会の実務を手伝いながら、責任者であるシスター・クラリスの凄まじい手腕に圧倒されていた。
若いシスターたちの能力の少し上の課題を与えて成長を促す。
成功しても失敗しても、そうなった原因をともに考え、
決して簡単に答えを教えず、本人が自ら気づきやすいように促している…
そして、若いシスターたちの足りていない部分は、全て自らの圧倒的仕事量でカバーする。
若いシスターたちもクラリスの足を引っ張るまいと必死に頑張っている。
(・・・聖女学園の先生方にも、ここまで出来る方はいなかったんじゃないかな?)
流石のミアも、ただただ圧倒されてしまっています。
クラリスは単に統率力があるだけでなく、魔導士としての実力も超一級品だった。
第二神界魔法を呼吸するかのように使いこなし、一日中立ち働いても魔力が枯渇する気配すら見せない。
そして、慈愛の笑顔を絶やさない精神力…
「卒業順位16位」という数字が、決して飾りではないことを、一緒に仕事しているミアは体感していた。
マーサやタリンは尊敬できる、心の師匠のような人たちだったが、少し年が離れていた。
その点、このクラリスはミアと年も近く、(私は、五年後ここまでのレベルになっているんだろうか…)と、
短い期間でも、ミアに憧れや目標に近いものを抱かせるほどの実力者だった。
「ミィさんは流石ですね。回復魔法の丁寧さとスピードは天下一品だわ。
…本当に、順位は高くなかったの?」
アナタ嘘ついてるでしょ?と言わんばかりの笑顔でミアに話しかけてくるクラリス。
「いえいえ! 全然ですよ!」
ミアが慌てて手を振ると、クラリスは感心したように目を細めた。
「第一神界魔法だけで全てを完結させようとする姿勢も素晴らしいわ。
基礎だけで全てを回すのが一番効率的で応用が利くのだから… あなたからは見習うべき点が多いわね。」
「そ、そんな・・・」
「あの子たちにも、色々と教えてあげてくださいね!」
そう言って深々と頭を下げて去っていくクラリス。
「第一神界魔法しか使えないだけなんだけど・・・ 買い被られてるなぁ・・・」
と首を少し斜めに倒して、困り笑で独り言をこぼしながらも、ミアは憧れの先輩に褒められて、なんだか胸の奥が温かくなる。
その夜。
まだ慣れない環境、ミアはふと目を覚ましてしまった。
少し心を落ち着けようと、寝巻きの上に薄い羽織をかけ、夜中のシンと静まり返った聖堂へと向かう。
月明かりがステンドグラスを通り、床にその模様を美しく描いている。
女神像の前で祈りを捧げようとしたその時、聖堂の奥の小さな扉が音もなく開くのが見えた。
(・・・? クラリス様?)
そこには、昼間のこの教会のシスターの法衣ではなく、夜の闇に溶け込むような深い色のマントを羽織って教会を出ていくクラリスの姿。
(こんな時間に、どこへ・・・? お手洗いなら教会の奥のはずだし・・・)
クラリスは周囲をこそこそと昼間からは考えられないような態度で、足音を完全に消して教会の外へと出て行ってしまった。
(ミラ様のような、すべてを守る強さ・・・)
なぜか、ここに来た日のクラリスの言葉が気になって頭から離れないミア
ミアはダメだと思いつつも、こっそりと彼女の後を付けて教会を出るのだった。
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